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日 時 2005年2月25日(金)18:30〜21:15

場 所 国分寺市本多公民館2階、会議室2

出席者 小川郁、鈴木まき子、酒巻美和子、佐藤完二、町田智朗、吉村成公、鷹取健。堀雅敏さんから欠席の連絡があった。司会・記録:鷹取健

<例会で紹介・配布された資料など>

・05年度都立高校入試に異議あり!:町田智朗

・3年生の地形の学習(授業計画と授業記録、地図、ビデオなど):鈴木まき子

・「ごきげんよう」(早実初等部3年2組学級通信):鈴木まき子

・中学校「大地の変化」の授業計画と前回の授業の感想:酒巻美和子

・立川断層の調査(ビデオと調査資料):鷹取健

 ガスコンロからやかんを持ち上げ、ポットに熱湯を注ぎ、茶器などを会議室に持ち込む。倉庫の鍵を借りてテレビモニタを会議室に運んだりして例会の準備が整う。一人二人と姿を見せた出席者から、あらかじめ用意された資料が配布される。


報告1 入試問題に問題あり:町田智朗

 さる2月23日(火)に実施された都立高校の入試の様子が中学・高校に勤務する人からいくつかの話題が口早に話されていった。この段階で例会が始まった訳ではないが、町田智朗さんから問題とその疑義について書かれた2ページの印刷物が紹介された。とにかく、科学的に誤りのある内容の出題であるという。

 小川郁さんは、出題者は(中学校の授業の実態をきちんとは知らない)高校の教師が担当しているのではないか、と発言。出題形式が“クイズ”といったところで、自然科学的な事実をもとに考えて解くというものになっていないというのである。

 社会科ではマニアックな出題さえみられ、現場では顰蹙をかっているらしい。<今年度の出題の問題点> 1998年改訂で「(3) 電流とその利用」で静電気が復活した。しかしこれに相当する1989年学習指導要領の「(4)電流」の中の「イ電流の働きと電子の流れ」の内容は基礎・基本の「厳選」による改訂で3項目が削減されていて、「真空放電」は高校で扱うようになっている。電流の実体を教えない、という考え方を強制している。

<物質の電気的性質>

 町田さんは、選択肢「イ 金属などの電気を通しやすい物体どうしをこすり合わせると、これらの物体は静電気をおびる」というのは正しい内容であるという。にもかかわらず、これを適切な記述としないなど、間違った判定で合格・不合格を決めるのはどうか、というのである。しかし、東京都教育委員会は「イ」を正解としないと回答したという。これは、まさに暴挙である。


報告2 『理科教室』2月号を読んで:吉村成公

1 中越地震の災害写真

 2月号は「地学教育・これを教えたい」が特集。震度7が襲った川口町を中心に河合靖久さんの写真が掲載されているが、これらを理科の授業で利用することがあるか、というと難しいという感想が出された。すでに一般的な報道として、新聞にみられるような写真がいろいろと掲載されている、と吉村さんはつづけた。

 出席者も教育雑誌に何が掲載されるべきか考えさせられた一幕であった。

 口絵写真の撮影者はかつて被災地で勤務したことがあるのだから、地元の人の声の紹介をしてもよかったというのは鷹取の感想。

<今までの例>

 星の環会版では教師とその教え子の小学生と中学生の体験が綴られている。こういう作業は続けられるべきではないか。植村秀吉他編『天も地も見たくない新潟地震児童生徒作文集』新潟日報事業社、1964年。(古いが、貴重な作業である)朝日新聞社編『中学生大震災作文集』朝日新聞社、1995年。(新聞社の機動力が感じられるスピーディな仕事として)江川多喜雄編『日本の地震と大地を学ぶ--地震学校より--』星の環会、1999年。(小学生、中学生、そして教師の体験が、学校日誌の紹介がある)

2 江川多喜雄「時間数より内容を」

 コラムの主張の趣旨はわかるが、しかしやはり現場では授業時間がほしい。

3 伏見さんの考え方をめぐって

 インタビューの伏見陽児さんは「道具としての『知識』」という表現で語る。教育にはどのような知識が大事なのかを「知識→興味・関心・意欲」という図式の中で例を挙げているが、「これを中心に」というような体系的なものがあるのであろうか、と吉村さんは疑問に思った。

 伏見さんには、自然科学の教育とは系統的に内容を用意することであり、ふさわしい教材を選ぶべきであるという観点がないのではないか、ということなのではないか。目新しい(?)というより、奇をてらった表現は、一時期人を引きつけることがあるのかもしれないが、内容が伴わなければ空疎に聞こえる(鷹取)。

4 特集記事から

(1)『理科教室』に見る、地学教育のこれまで

 佐藤完二さんの記事は「『理科教室』に見る、地学教育のこれまで」という<特集に寄せて>というながら、ひときは目立つ。雑誌『理科教室』のデータベースの整理を献身的にしてきており、その状況を報告した上で小・中学校の「実践記録」と分類された記事の中から論文名一覧をつくり、多様な実践がすすんできたと紹介している。 p.10の気象、4つの気団群の分類(吉野正敏『気候学』)は分かりやすい。 (2) 私の気象観とこれを教えたい 斉藤充さんの論文「私の気象観とこれを教えたい」で、「天気図を描かせる」学習では、それが大事と解説されているけれども、自分はそうはさせていない。

 他の人はどうしているのだろうか、と吉村さんが言う。これは、指導に時間をとる学習だけに、効果はあるものの斉藤さんの期待のようにはいかない現実がある。 (3) 私の地球観とこれを教えたい

 北林雅洋さんの「私の地球観とこれを教えたい」は地質学・地形学などいわゆる地球科学を、“物質循環”の観点からの手法で書いている。個々にみていくと、今まで具体的なデータが得られていないなど、この分野の科学の実態が見えたわけではある。 (4) 私の宇宙観とこれを教えたい縣さんの「私の宇宙観とこれを教えたい」ではいくつかの作業を伴う学習を帰納法的とか、仮説(実験)授業的な学習を演繹的というようであるが、この表現がよくわからない。なお、“これを教えたい”というところでは方針は分かるから、具体的な内容が読み取れるようになっているとよかった。

 今回初めて、執筆者との(e-メールでの)やり取りをミニ座談会と銘打って、2ページで展開している。執筆は佐藤完二・小川郁・吉村成公さんで、編集の佐藤さんや他の2人の執筆者はさぞ大変であったろうが、「空気のふるまいは鉛直方向には移動しにくい」などこの交流でおもしろい内容が引き出せたりしていて、出席のみなさんはよかった、と発言。気象の学習は大気の物理学を、でよいが、気候学の成果も大事にして教えたいというあたりも見えてきたようで鷹取としてはよかった。

 

授業報告 3年生の地形の学習:鈴木まき子

 小学校第3学年での地図学習の様子が詳しく報告された。

1 指導計画<到達目標>土地には高い低いがある。

 この目標を達成させるためには地面の高低を「感じ取り、それを言葉にして」いくなかで認識させる、という。

1 坂の下から坂の上を見ると、歩いてくる人が大きく見える。

2 坂の上から坂の下を見ると、歩いてくる人が小さく見える。

3 平らなところから、坂道を見ると、土地の高低差が見えてくる。

4 湧き水は高いところから低いところへと流れていく。

5 湧き水が集まって一つの川という水の流れを作る。

6 川は低いところを流れている。

<授業計画>

1 学校から姿見の池までの坂図を書く。

〔課題1〕予想図を描く

〔課題2〕歩いた後で見たとおり、感じたとおりに坂図を書く。

(〔課題3〕フィールドワークで日立中央研究所の大池を見て、わかったことを書く。)

2 中央線を基準にして歩いた道を見る。

ビデオを見て、中央線の高さと道の高さを比較する。

〔課題(4)〕見えたとおりに文をつづる。

3 大池の水はどこからきているか現場を見に行く。

 予想した通りに文を綴る。

 湧き水が大池を作ることを現地に見に行く。

 見たとおり、考えたとおりに文に綴る。

-1ビデオと写真、地図で大池の水源と、川筋をたどる。

-2大池の水と姿見の池の水が一つになって、野川を作っていることを確認する。

4 野川をたどる。

 〜(具体的な内容は割愛。なお、〔課題3〕は挿入、つぎの〔課題〕4を

追加した=鷹取)2 授業の様子と討議17ページの授業記録と「ごきげんよう」(No.99〜100)など児童の作図や文章をもとに報告されていった。なお、児童が後に利用できるように録画されたミニDVテープを再生して活動の様子を出席者で確認していった。

(1)授業の所要時間

<授業計画>1〜3までで10時間くらいであった。

(2)<到達目標>

 具体的内容1、2の表現は改訂した方がよいのではないか。「日立中央研究所の上り坂を上っている時に後ろを見てみたら、みんなが小さく見えました…」(N)という児童の表現があるけれども、教師向けの文であるならこの表現は修正した方がよいのではないか、という意見が出され、うなずく出席者もいた。

(3)坂図(地形断面図)の書かせ方

 B4判の紙に納まるように描かせた。しかし、作業がすすむと予想通り狭くて、継ぎ足し継ぎ足していく例が多く出た。これは実際に歩いた場合でも同様であった。しかも、予想図に合わせるような描き方をしていて、予想と実際の違いが分かるような描き方はなかった。もっとも、付け足しとして、違ったアングルからの描図もあって、これはこれでよかったのではないか。

 児童は予想図は書けた。「あまり気に止めていなかった」が、彼らはO君のように5カ所に坂があったし、「日立中央研究所は、すごい坂だった」など、その違いを認識できた。

 以上の報告があって、体験と図と文章で描く作業の大変さと同時に、これを通して認識が深まっていく状況が、出席者に見えていった。

(4)感じたことを、児童は文章で表せたか

地学的というか地理学的な現象を言葉で表すこと、それと記号その他で表すことなど、綴る中で認識がすすむ訳だから、語彙というか、用語の使われ方を点検していった。

 〔課題2〕ではどうだろうか。坂の傾斜の大きさの無い場合がある けれども、下記の三番目のKのような記載例は多いとはいえない。

「坂図」「下り坂」「坂」「中央線の道は平ら」(A)

「坂がどの位急か」「坂が急になって」「中央線は上下かわらず」(S)

「上り坂」「少し急な下り坂」「下り坂を下りました」(O)

「坂を下ると」「中央線が走っているせんろとかは。平らに」「一番ひくかっ たところは国分寺のえきの階だんを下りたところ」(U)

 〔課題3〕での用語は、池の形・大きさ、流水の速度、水門、湧き水が出てくるところ、 石と石の間から出てくる、大池の水は湧き水、湧き水は9つある、大池の水は野川に行く、(大池の)深さは1.2m、湧き水は完全にすきとおって、わいている水 はすきとおって温かい、大池は低いところにあるなどと書いていてよいし、植物の様子も記入している場合があった。

 〔課題4〕は「「電車に乗ったほうがわかりやすかったです」(T)と書 かれたほど、ビデオという効果的な教材が準備されたことが分かった。

<残された課題>

  等高線を教えるという指導ではないが、海抜高度、比高を考えさせているところがあり、的確な指導ではなかったか。 地図学習の単元は理科と社会科のどちらの教科か、という質問が出てきた。鈴木さんは社会科の授業として行ったと答えているが、興味ある問題であろう。(地図学習での必要な用語が見えてきて、そのなかで教える中身がみえてくるように思う)

報告3  立川断層調査から:鷹取健

 立川断層の調査(ビデオと調査資料)で報告したのが1月例会であったが、それは今回、断層の変位量が分かったという意味がある。2月例会では、1998年3月18日の青梅市藤橋・今井地区での調査の録画をもとに3分48秒のビデオを視聴してもらった。

 この映像で、トレンチの様子、作業の様子、実際の堆積状況の観察を映像を通して確認してほしかったからである。

 ここでは「活動間隔が約5000年、最新の活動が1000年〜1500年前」を報告したかった。

*なお、後に8分8秒の長さのビデオに再改訂編集をした。霞川流域の土地の起伏を始めに挿入し、第1作の半分を削除して新たな映像を追加してみた。堆積状況のクローズアップや埋没谷の描写時間を長くしてみた。機会をみて発表したい。

提案 「大地の変化」の授業計画:酒巻美和子

  中学校第1学年「ゆれる大地」6〜8時間配当の指導計画の概要が提案された。出席者の経験や意見発言を期待しての提案で、以前の授業後の感想、教科書の記述の例、またすでに作成した教材プリントが紹介された。

<教える観点>

 中学1年生に教えるのだから、従来のように3年生に教えていた内容を準備すると、教えることが難しくなる。といって、おおまかにでも物質の振動(震動)のイメージは与えたいし、プレートテクトニクス論の紹介は大々的にやらない方がよいのではないか、地形や地質とかかわった地震--地盤の性質、特質を学習していくなかで--を、という発言があった。

 以下に鷹取の私見を述べたい。


1 理科学習プリントを読んで(1)

(1)「3 地層の広がり(1)」

酒巻さんは東中での資料を使って地層が<平らに(水平に)広く堆積している>ことを学習して、その<広がり>の範囲(一定の範囲があるということ)を考えさせようとしている。これはよい試料が使われていて、生徒の活動が楽しみになる。

(2)「3 地層の広がり(2)」

以上の学習のあと、さらに3校のボーリング試料で確認の学習に入る。この場合、緑中の柱状図は三小、四小の地表面と等しい面に揃えたら読み取りやすくなるのではないか。海抜高度が明確なら、左か右にスケールを入れて、これに合わせて3校の柱状図を記載して生徒に配布したい。表土-関東ローム-礫層(砂礫層)と教える。

*もし、この下部はと質問されたらどうするか、あるいは教師側から教えるか。上総層群と答えたらよいわけだ。地質年代をたずねられたら、答えてみよう。

(3)小金井市の地下の様子

 地層の広がりは、ここでは小金井市周辺まで範囲を広げたい。(1)(2)で学習はすすんでいるものの「小平市・小金井市付近ボーリング」のデータを追加してみたらどうだろうか。生徒には、やや拡大して印刷配布したい。

 教師の住居近くのデータと小金井市のデータとで認識は定着するのではないか。


2 理科学習プリントを読んで(2)

 東木龍七の地図が小さいから読み取りにくいように感じる。貝塚は採集地から遠くない場所にできている。海産貝類の貝殻と汽水産の貝類、あるいは淡水産の貝類などという話題が出てきたら、海進や海退のイメージを描かせられる機会であるが、時間も少ないから先にすすもう。

(1)東京都付近の地形面区分図をみる

 そこで、一つには「(関東)山地-多摩丘陵-武蔵野台地…」のABCD4区分された地形面を示した図、または、やや狭い範囲の「丘陵地-(洪積)台地-(沖積)低地」の地形面を示した図を印刷配布して色塗り(宿題)させるのはどうか。

 「まず河川を濃い青色でたどらせる。河川名を記入させる。」と両方行う場合は、別途河川を図示したものに記入させるとやりやすい。もう一つの1:200,000の地図に河川名を記入させる作業をさせる。これは宿題にするもので、これは多摩川河口に□が3つ印刷されている。まずこれに河川名・多摩川を入れて、地形を学習する手助けにする。もっとも、これは、わたしはいつもさせていたわけではない。2つの図を比較するなどする中で生徒の読図力は増す。

(2)山地のように海抜高度が大きいところが周辺にあるということ

 ABCD4区分の地形面では中央部は沈み込んでいる様子を理解させることができる。 ここで、そこまで教えないにしても。

彩色は自由ではない方がよく、山地を濃い緑、というようにしていくと、見えてくるものがある。→五百澤智也さんの図(立体的な描写)を改訂したものは他で使える。

(3)地形の概観の例として

 武蔵野台地など図(平面図)と地形断面図での学習のあと、だめ押しにこの立体描画を配布してみる。テストの時、A-Bと直線を引いてその断面図を描かせる。これは選択肢をいくつか与えてもよいと思う。わたしは京都盆地その他で出題したことを思い出す(概観はランドサットマップまで延長していきたい)。


3 地震は地下構造の学習の機会でもある

 徳川家康入府のルート(----)をたどり、17世紀の初頭は東京23区などは湿地帯か海中であったという学習は大事と思う。わたしの場合、武蔵野市立第三中学校生徒に上野公園○丁目その他を歩かせ、台地と低地の境目を歩かせるという作業を伴う学習で用いた教材である。

(1)東京都の地質構造図の学習のあと地震学習は「地盤」「岩盤」の破壊と震動ということになると、地震を通して東京都の地質を学習することがよいのではないか。土蔵と木造家屋の倒壊率の違いもよいが、生徒が分かってくれるだろか。図は最近の『理科教室』にも掲載されているから、利用できる。(2003年9月号口絵、その他) 関東地震の震度分布図はほしいし、断層と水平方向の変位量も提示してやりたい気がしてくる。(1923年関東地震は東京都だけに注目しない教材を準備したいと思う)

(2)立川断層 立川断層の活動のようすがようやく明らかになりつつある。そこで、活動の周期や断層の変位量など紹介してみて、他地域の活断層、地震災害への関心を促してみたいと思う。2つのビデオは、学習に合わせて利用してみたい。1995年兵庫県南部地震の後特別措置法が施行され、予算が出るようになったので活断層でボーリング調査とトレンチ発掘が進むようになった。1998年3月のビデオはトレンチ発掘の様子を具体的に紹介して、配布した図・表を読ませながら調査結果を理解させたい。