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と き:2007年5月18日(金)18時30分から21時まで

ところ:国分寺市立本多公民館会議室B

出席者:小川郁、酒巻美和子、佐藤完二、鈴木まき子、鷹取健、堀雅敏、吉村成公

司会:堀雅敏、記録:鷹取健


例会で紹介・配布された資料・教材など          

 <書籍紹介>

  1.  1.水を高いところへ流す知恵「玉川上水」の高度技術

  2.   (<『東京』の凸凹地図、東京地図研究社著、技術評論社>から4ページ):小川郁

  3.  2.西武拝島線沿線

  4.   (<多摩ら・び、No.43、2007・4>から12ページ):堀雅敏

  5.  3.伊藤好一監修、比留間博『玉川上水 親と子の歴史散歩 』304ページ

  6.   たましん地域文化財団、1992年:鷹取健

  7.  <教材研究>

  8.  1.扇状地の学習(2)

  9.    (「社会科参考資料・土石流災害を防ぐ」から写真とも3ページ):鷹取健

  10.  2.玉川上水掘削工事跡

  11.   (水喰らい土その他、写真6ページ):堀雅敏

  12.  <実践報告>

  13.  1.第4学年「流水の働き」 社会科との関連で

  14.  (到達目標と学習課題、児童の学習=学級通信、学習指導要領の抄文):鈴木まき子

  15.  2.中3の地球と宇宙の学習(到達目標と学習課題、教材など):吉村成公


書籍紹介1:小川 郁<『東京』の凸凹地図>

  1.  この本の特徴は、東京の地形と建造物を青・赤のメガネを使って25か所が立体的に見られること。もう一つは陰影図で東京の地形を示して解説していくところ。

  2.  空中写真2枚を並べて立体視する方が小川さんは見やすいという。わたしも同感であるが、考えてみるとこちらは立体視できる範囲が狭いし、紙面が2倍必要となる。青・赤の2色の印刷紙面は裸眼だけでは重なっているから見にくいが、メガネを通せばやや誇張した立体観ができる。もっとも、空中写真2枚の応用であるから凹凸の誇張度は同程度であろうが。

  3.  小川さんが紹介したのは「首都・東京の地形」で、玉川上水掘削工事の技術の巧みさ(したがって効率)である。さらに、水路にはたたき(三和土)が塗り込められているという事実である。三和土は赤土・砂・石灰・苦汁・水を材料にして突き固めた。わずか2ページに要領よく玉川上水掘削工事が解説されている。

  4.  「水を高いところへ流す知恵」については(言葉のあやで)地形を利用した水路設計であることが図解されているが、これは段丘崖を横切るときのメ水路=凹地を掘削していくときに掘削量を最小になるように工夫してあるモ事実が一緒に解説されていないと納得しにくいと思っているところである。本文では「段丘もノ、下流側へいくほど標高は徐々に低くなって」いるから迂回した水路設計をしているとある。

  5.  ただし、立川断層の撓曲面については「段差は段丘と違って非常に小さい」と記載しているのはよくない。角田清美さんは比高3mとしており、水底の傾斜を小さくしている水路ではかなりの大きさの数値である。しかも残堀川の川床は計画上の玉川上水水路よりも低く、盛土して堤防を400mも築いていることを触れるべきであろう。後に、この断層西側すぐの旧流路では、時折氾濫して玉川上水に流れ込んでいる。

書籍紹介2:堀 雅敏<西武拝島線沿線>   

  1.  堀雅敏さんは「拝島駅界隈」「地図で今昔・西武拝島線」の記事??西武新宿線小平からJR青梅線拝島駅??を紹介した。3月28日に実施した中央沿線理科サークルと生物学教育研究サークル合同のフィールドワークの範囲は紹介記事の約半分もあり、「沿線の気になるおいしい店」が一緒に紹介されている。

  2.  今尾恵介さんの取材記事と一緒に掲載されている地形図は貴重、と思ったのはわたしだけではないだろう。立川断層のところで水路がカーブしていることを、「断層の東側が西側より3~4m高い」と数字をおっくうがらずに紹介して南に迂回している理由を説明しているところがよい。現在は1:10000の地形図「砂川」が容易に入手できるのであるから、この海抜高度の数字を拾ってみるとまた明瞭に見えてくるものがあるのではないか。今尾さんは「武蔵野台地のクボ地名」を書いており、今回のわたしたちのフィールドワークのときの文献一覧に挙げておいた。

書籍紹介3:鷹取 健<比留間博『玉川上水』> 

  1.  1991年10月にたましん地域文化財団から発行された本で、翌年5月に2刷りとなり、鷹取は現在もこれを超える著書はないのではないかと考えている。比留間さんご自身は、あれから15年も経っているのに、玉川上水の教育について学校現場では低いレベルの教育しか行われていないと嘆き、特に羽村市立の博物館などでの教師の指導に改善が認められないのを指摘していて、教材の質を高める仕事をライフワークにしたいというような発言をしている。

  2.  図版と写真が多く、羽村の取水口から歩きながら読むことができるし、分水についての記述は、この本の特徴である。同時に玉川上水を史跡と捉える場合、江戸市中の暗渠・水道網までを含めて考えている姿勢に学ぶところが大きい。


報告1:フィールドワークのために

     :堀 雅敏<福生市指定史跡・玉川上水掘削工事跡>

  1.  堀雅敏さんは中央沿線理科サークルと生物学教育研究サークル合同のフィールドワーク資料を求めて写真撮影してきての、先月につづいての報告である。

  2. 「多摩ら・び」2007・4、No.43、p.13にある拝島駅付近の地図をも参照して「水喰らい土」地区の範囲や地質構造を今月の出席者で確認していった。この報告では

  3.  空中写真:草花丘陵??羽村取水口??立川段丘(立川面・拝島面など)

  4.  地形面図:武蔵野台地南西部の地形と玉川上水および分水の流路

  5.  地質柱状図:羽村堰付近、立川断層付近

  6. などが紹介されたので、段丘構造と段丘上に作られた玉川上水の構造が理解しやすかったと感じた。はカラー写真で西武新聞社発行から、は角田清美「玉川上水と段丘地形」『地理』第28巻第6号(1983年)からの引用紹介である。それから、堀さんは小平市ユネスコ協会の玉川上水関係の講演集付録の地図も紹介したから、出席者の興味は諸分水と江戸市中の水道網まで広がっていった。

 

報告2 鈴木まき子:4年「流水の働き」の学習指導

  1.  鈴木まき子さんは、小学校第4学年の理科・社会科の混合というか総合的な扱い

  2. をしている実践内容であり、今回は理科の学習部分の報告という感じである。別紙報告資料があるので詳細はそちらに譲る。報告の主題は武蔵野台地が「扇状地であり、砂礫の堆積の上に関東ロームが堆積している」ことをモデル実験の観察によって認識をねらっているところであった。

  3. <到達目標と具体的な内容>

  4.  到達目標:流水は、土砂を運び、堆積させる。

  5.  内容:

  6.   ・大水が流れた時、水は土をさらって運び、低い方へと流れ海に到達する。

  7.   ・流された土の礫は中流に堆積し、砂は下流に堆積する。    

  8.   ・谷が開けたところに礫が堆積し、扇状地ができる。

  9.  (鷹取の感想:浸食という概念は出て来ないのではないかという疑念が湧いたが、 「水は土をさらって運び」と記述されているからよいのかな、とも感じた)

  10. <本報告の主題>

  11.   〔課題2〕大水が流れた時、山の土がどのように流されるだろうか。                                    

  12.  具体的な授業の経過は「ごきげんよう」No.113、No.114に記載紹介されている。

  13. 鈴木さんは佐藤完二さんが『理科教室』2004年4月号に掲載したモデル実験(口絵写真)を参考にして、材料は砂場でビニルシートを張るノ

  14.  実験場所:砂場

  15.  材料:ビニルシート、家庭園芸用の篩、礫(砂利)・石(砂)・砂(泥)、シャベル、水など

  16. <実験の様子>

  17.  砂場に小山(滑り台)ができている。小山から平野部(平地、沖積低地)にビニルシートで覆いをして、そこに水を流す。

  18.  水が流れて川ができる。水路ができた。

  19.  上流、つまりここでは「山の斜面」に山の土=礫・砂・泥を置いて、「大水が流れたら、これら土はどのように流されるか」と想像させた。児童はいろいろと想像を巡らせた。山の土を分級すると、それは淳君では砂利・石・砂である。砂利・石はふもとで堆積してしまったと解釈した。これでよいのだが、しかし、書かれたものは「砂利と石」であったり「砂利と砂」としていて、分級については曖昧であることがわかる。諒君の場合は石・砂・泥という分級で、ふもとに石が、砂と泥は運ばれるが、「砂は石より少し流れた所に(=下流に、記録者記載)つもっていた」としている。この実験で多くの児童は扇状地ができたという認識をしているようである。さらに、諒君は「海」とみなした場所に泥が堆積している、と書いている。

  20.  つづいて鈴木さんは広大な扇状地に火山灰が降下して赤土が堆積していく状況を想像させる。玉川上水の掘削対象の関東ロームが厚く堆積していくイメージ形成を意図したわけである。

  21.  授業の記録(2006年3月6日)はビデオ撮影されていたから、出席者はその10分ばかりを再生して実験や発言の様子を視聴した。また、「スロー再生」をして、川の水が流れ下る様子や大水が流れたときに山の土が運ばれ川底に堆積していくところを確認した。授業中にもスロー再生してみると、認識が確実にすすむことが予想された。鷹取は、これらの実験の前の時間にでも、砂の小山の前に児童を立たせて、用意した如露からの「降水で解析谷ができる様子を見せたい」とした。 

  22.  実験に使う礫は、佐藤さんは金魚鉢で使われていたものを流用している。鈴木さんのは巨礫が多かった。

  23. <実践報告を聴いての感想>

  24.  佐藤さんはこの程度の学習でよいのではないか、とした。なお、山体が削られているところ=上流、運搬されているところ=中流、堆積されているところ=下流という図式を教えることでよいのではないか、とも発言した。鷹取は「水は土をさらって運び」にひっかかったのであり、実際の河川の描写はぜひとも視聴させたいとも思った(再編集版の水干から河口までを追う「多摩川の流れ」はどうだろうか)。

  25.  大きな課題が残った。それは社会科の学習指導要領の記述内容である。社・理という教科で扱うか否かの前に、自然地理学の基礎的な内容を確定する作業で、理科側のは佐藤さんが提起してくれることになったが、社会科領域については、検討すべきであろう。

  26.  

報告3 吉村成公:中学3年「地球と宇宙」の学習

  1.  5月例会の出席状況により、<書籍紹介>と<教材研究>の紹介と報告がつづいたから、吉村さんの膨大な報告内容のうち、今月は「I.身近な天体の運行と地球」のところに限られた。討議の時間はとれなく、この報告についての討議と「II. 太陽系」「III. 私たちが住む銀河系、銀河」を6月例会で行ってもらうことになった。

  2.  吉村さんの実践では、授業時間の大部分が「I.身近な天体の運行と地球」にあてられている。学習指導要領では、必要な物理的な内容の未習があり、恒星や銀河系、銀河などがほとんど高校に移行されている中、この部分こそを復活指導したいという主張があり、吉村さんも同じような考えをもっている。それにもかかわらず、授業時間数からみるとIIやIIIの部分よりも重視しているかのように見える。

  3. これはなぜか。Iの内容で、従来の他の実践者の指導内容と著しく異なる吉村さんの実践した内容や教材について、いくつか書き出しておきたい。

  4. ・概念形成で避けて通れない空間概念把握に、「見かけの大きさ」の表し方を学習する(角距離、視直径など)。

  5. ・小学校段階で行われていない地面上の方位(方角)の学習

  6. ・太陽の大きさを算出する

  7. ・地球時計(地球自転時計)の製作とその利用

  8. ・天体の日周運動を、地球上の各地点で考える学習

  9. ・透明半球を学習活動のはじめに扱わない。