2009年5月例会報告     過去の例会へ ホームへ../zhong_yang_yan_xian_li_kesakuruHP/guo_quno_li_hui.html../zhong_yang_yan_xian_li_kesakuruHP/homu.htmlshapeimage_1_link_0shapeimage_1_link_1
 


ところ:国分寺市立本多公民館(実習室1)

出席者:小川郁、酒巻美和子、鷹取健、堀雅敏、町田智朗、吉村成公。

記録:鷹取健

1. 紹介・配布された資料など

堀 雅敏「シーラカンスの腹をCT検査 30個の卵見えた!(共同通信)」

堀 雅敏「昭和東南海地震の空撮発見 米軍撮影、津波被害が明瞭(共同通信)」 

小川 郁「水俣病研究の現在 『水俣学講義[第4集]』日本評論社、2008年」

事務局(町田智朗):2008年度決算

事務局(堀 雅敏):「東京低地を歩く」フィールドワークのご案内


 (1) 卵胎生のシーラカンス

 堀雅敏さんが紹介した記事はアフリカ・タンザニア沖の深海で捕獲された個体をCT画像で紹介したもの。腹腔一杯に直径約7cmの卵が30~40個あったという。東工大の岡田典弘さんの撮影で、詳細な報告はこれから(2009年3月19日)。シーラカンスの生態を説明するTV放送は、最近いくつかあるから、脊椎動物の進化教材の1つとして今回のが大事な資料となるだろう。


 (2)1944年昭和東南海地震

 高度約1万メートルの上空から撮影された三重県尾鷲市(当時町)の状況を国土地理院が分析。海抜3m以下の地域が大きな被害を被ったことがわかったという(2009年5月19日)。米国立公文書館蔵の記録である。

 1944年12月7日、33.6°N 136.2E M7.9 紀伊半島沖で生じた地震で、静岡・愛知・三重などで計死・不明1223、住家全壊17599、半壊36520、流失3129。遠く長野県諏訪盆地での住家全壊12などを含む(理科年表、2008による)。


 (3)水俣病研究と学習指導

水俣病についての教材を揃える作業として、わたしはNHK-TVの報道を記録

して来たが、映像を授業で利用する機会がなかった。教材研究の一端として故西岡佑治・町井弘明さんとわたしの共編著として『平和教育実践選書9 科学と平和』(桐書房、1990年)を作った時には原田正純さんの著書を参照したのを思い出す。

原田正純『水俣が映す世界』321pp.、日本評論社、1989年

水俣病の根源にあるものは“差別”であるとする仮説の証明に著された本で、

第16回大佛次郎賞を受賞している。岩波新書の著書『水俣病』1972年、共著の『世界の公害地図(上)』(絶版)で知られているが、小川郁さんは同じ日本評論社から出版されている『水俣学講義[第4集]』(376pp)を参考にして授業で展開している。

 小川さんは「水俣学への誘い」花田昌宣、「水俣病50年」原田正純、「事件史から見た最高裁判決の限界」富樫貞夫、「水俣病を原点にした大学授業」木野茂

など13回の熊本学園大学の講座記録の本書を利用したという。2002年に開講しているから、編者の一人原田さんが病魔に倒れなければ、その後の講座も公にされていただろう。第2回の原田さんの内容を見出しで紹介しておこう。

 脳に関心/出会い/水俣病の発見/原因は魚/原因究明の道/半世紀経って/水俣病の発見/水俣の原風景/世界で初の胎児性/人類最初の経験/豊かさが仇/食物連鎖/胎児性水俣病/補償金3万円/仮説、定説、権威/おわりに

を90分で話されている。

 なお、第3集までと関連の著書が発行されている。


 (4) 会計報告

 機関誌「中央沿線理科サークル通信」の編集・発行の他に会計も担当している町田さんから報告があった。


 (5)「東京低地」フィールドワークのお誘い

 地学学習を目標にしたフィールドワークを計画しているので堀さんが印刷紹介した(別紙参照)。案内は鷹取であり、東京民研主催の学習会という位置づけでわがサークルは協賛。全行程は8kmほどあり、海抜3mから2mの東京低地北部をほぼ西から東に向かって歩く。現在の毛長川・綾瀬川・中川のつくった自然堤防上を歩き、江戸時代中期まで湿地帯であったところを歩いて地理学習。具体的には、自然の河川流路とその改修工事の歴史、農業用水の建設や運河の歴史を通して理解することである。テキスト20ページ分と映像資料を作成している。


2. 報告

 (1) 堀 雅敏「“動くしくみ”の学習指導のために」

 配布された「ゴムで動かそう(小3)」は「中央沿線理科サークル通信」No.152(2009年4月)に掲載されたものの改訂版である。9時間計画が、今回は8時間になっていて、「第4時 ストローとばし」「第5時 パッチンガエル」「第7時 カタカタ車」の指導計画を聞いてから出席者が作った。

 「第6時 トコトコ人形」については前回紹介されており、小川郁さんが工夫をして動きが目立ってよくなった。回転部分の乾電池にビニルテープを巻き付けてみるのがよいらしい。

 ストロー飛ばしは紙コップを使うが、上端から2cmほどのところに目打ちでストローが入る穴を開ける作業があった。今回の工作(改訂版)では「90mlの試飲用を材料に、はさみで深さ1cm、幅8mmの切り込みをして、その部分を外側に開く」。これは2カ所施す。これができたら長さ8cmほどの太いストローを載せてからセロテープでとめる。なお、この太いストローの一端は輪ゴムがかかるように切り込みを作る(下図参照)。

 写真はいずれも町田智朗さん撮影 試飲用コップは子どもの手になじむ大きさだ直径4mmのストローには切り込みを入れ、もう一方には綿棒を半分に切ったものを差し込んでからセロテープで固定する。

 パッチンガエルをつくってはねさせるでは、工作用紙の材料としての強さを経験させてからはさみを使わせることにしているという。なるほど、紙をしならせてみると一方は強いことがはっきりわかる。

 はさみで切り込みを入れた5cm×6cmの工作用紙に、隙間1mmをつくってセロテープで貼付けるが、このとき幾重にも巻き付けることで跳ね返りの開始時刻を遅らせることができる。テーブルに置いて、しばらくしてから跳び上がるのは面白いと思った。

 “ねじった輪ゴムで車を動かす”カタカタ車も出席者は頑張ってつくった。堀さんが粘土に点火しているろうそくを差し込んだ。粘土はローソク立てであった。ラジオペンチで挟んだ釘をろうそくの炎で加熱して、これを使ってペットボトルの蓋と底に“輪ゴムのつなぎ目のこぶよりも大きな穴を開けていく作業が始まった(下図参照)。

  作業をしているのは酒巻美和子さんと鷹取

 つなげた2本ずつの輪ゴムをペットボトルの中に通して動力源にする作業は手助けにエナメル線を利用する。この一連の作業は何歳くらいからできるようになるのだろうか、と思った。回転力を生み出せると、いろいろな作品ができるらしい。今回のも、いずれも楽しい工作である。

田代正夫さんの報告を予定していたが生憎の欠席で、2番目は小川郁さんの報告をしてもらった。

 (2)小川 郁「北海道知床半島の自然観察から」

 授業ではどこでも使える映像資料には印刷した写真があるが、これは一斉に観察させ、回覧というスタイルがとれて、効果的な指導法である。この場合、小川さんは最大でA3判に大きく印刷した写真を利用している。今回の報告はPC利用のプロジェクター使用で、スクリーンに拡大映写をしていった。授業では一斉に観察できる訳で、広く採られる指導方法だろう。時折、生徒に印刷して配ってやったらよいだろうと思った。

 知床半島の冬と夏、これが小川さんのテーマであった。同じ場所に季節を変えて訪れる事により、見えてくるものがゆたかになるという報告である。中学校第3学年で取り扱う「生物どうしのつながり」で使用した映像を中心に映し出していったが、視聴していて、さらには「自然と人間」というような内容の授業用の教材にもなるだろうと感じた。映像が誰にも利用できるようにしていくことができるとよいわけで、簡単な説明文の発表を期待したいし、よくいわれるスライドショウとしてナレーション入りの作品をつくってみたらよいと思った。

 2009年2月26日女満別空港に小川さんは一人降り立って、レンタカーで斜里町ウトロまでドライブ。冬の自然観察を続けていき、2006年7月26日~28日では7人で訪れた時の記録と対比していった。観察対象はすでに世界自然遺産として登録されているが、たとえばエゾシカの激増で生態系の大きな変化が指摘されている。網走港から観光砕氷船に乗り込み船上からの観察が始まる。客の与える食料でオオセグロカモメは、まるで餌をもらっているという状況が映し出されていった。餌付けは止めなくてはならないと思う。

 中国・韓国からの観光客が多いそうで、客の2/3がこれら外国人であったようだ。

 オオワシ、ホオジロガモが映り、オオセグロカモメでは幼鳥というか若い個体が見えた。知床自然センタター付近は、夏にサークルの仲間も行って見ているのであるが、そこでは冬3~5歳の雄シカがキハダの樹皮を剥がして食べているシーンが映し出されていった。防御として幹に網を巻いてあるのが見えたが、食害は極めて深刻な問題となっていることがわかる。雪の下から掘り出して食べる雌シカの姿もあった。積雪量は大したことなくて、シカの餓死は問題になっていないようであった。一カ所にどのくらいシカがいるのか興味があるが、小川さんの記録からは8頭は数えられた。

 -5°Cのフレペの滝付近ではまた多くの写真記録を見ることができた。例のカシワがわかり、凍り付いた滝が映し出されていった。草原は、シカが好まない種が生き残っている感じであるから、授業では「青々とした草原」という表現では説明できない。羅臼岳の描写がありウトロのまちの様子があった。オロンコ岩の植生についても克明な描写があり、これら夏の描写では半島の岬に近い文吉湾(避難港)上陸で得難い経験ができた植生観察が報告されていった。

 おそらく多くの人が感嘆してくれると思うが、海浜での観察も多彩で興味あるものであった。夏のフィールドワークの記録掲載の「実践記録集 第25集」を改めて読み直したいと思った。