2012年2月例会報告      過去の例会へ ホームへ../zhong_yang_yan_xian_li_kesakuruHP/guo_quno_li_hui.html../zhong_yang_yan_xian_li_kesakuruHP/homu.htmlshapeimage_1_link_0shapeimage_1_link_1
 


場 所:国分寺市本多公民館

参加者:鷹取・小川・堀(記録)

 町田さんが修学旅行、鈴木さんが宮城に行かれるなどで参加者は少なかったですが、大切な内容が話されました。

0.配布資料

 (1)<「足尾銅山と環境」指導用教材について(TV)>…………鷹取 健

  NHK ETV 日本人は何を考えてきたのか「第3回 森と水と共に生きる~田中正造と南方熊楠~」(2012.1.22)の映像が、足尾銅山の経営と地域の人々、そして田中正造の行動が描かれており、教材となるのではないか、という提案です。足尾緑化の歩み、現在の環境問題についても使える、別の教材も紹介されました。

 (2)<碑に学ぶ>(「東京新聞」2012.1.15~1.25)……………… 堀 雅敏

  岩手県内沿岸部に250基以上ある、津波被害を伝える石碑。そのうち150基を調査した岩手県立博物館学芸調査員・目時(めどき)和哉さんによる11回の連載コラムを小冊子にしました。岩泉町小本小学校の校庭には明治三陸津波の到達点を示す標識が残っていて、津波教育に生かされているなどが紹介されており、子孫に被害を伝えようとした先人から学ぶことは多いと思いました。

1.スライドムービー「津波被災地を歩く」(宮古市)…………… 堀 雅敏

 通信1月号に掲載の宮古市中心部、宮古市姉吉、宮古市田老の部分を見ていただきました。内容は3人とも知っているので、今度編集するならという観点で「ここのテロップの文字はもう少し小さく」とか、「この地図は半島全体が分かるものを使うといい」などの意見を交わしながら見ました。

2.実践報告「大地の変化(中1)」…………………………………… 小川 郁

 地質の学習を入れて全15時間のうち、地震に関する部分の報告でした。

 ランドサットが撮影した画像に活断層が線で表されている写真を見せ、中央構造線などを教えたそうです。鷹取さんからは「陸地上の断層しか表されていないが、海底の断層については見せたのか」との質問が出されましたが、小川さんは「教科書にその図があったので、それで教えた」とのことでした。このあと地震を内陸型と海溝型に分けるので、ここで海底の断層に触れておく必要があるわけわけです。

 長いバネによる模擬実験で2つの地震波を教え、地震計の構造を扱った後、兵庫県南部地震(1995年)を内陸型地震の代表として、東北地方太平洋沖地震(2011年)を海溝型地震の代表として取り上げ、震源域の面積、揺れている時間、震動の周期を比較させたそうです。




震動の周期は地震波のグラフを元に計算させたそうですが、結果は内陸型では短く、海溝型では長いという定説の通りでした。

倒立振り子3種による共振実験もし、固有振動を確認しています。倒立振り子の作り方にもどんな材料を使ったらいいかのコツがあるそうです。

兵庫県南部地震後に生まれた生徒たちですが、前ページの揺れを立体的に表した図は、からだをその線の方に揺らしながら「なるほど」と納得していたそうです。この図は兵庫の科教協会員・嘴本格さんが、教え子の下野知性さん(1995年当時大阪大学)に依頼して作図してもらったものだそうです。小川さんからは「東北地方太平洋沖地震でも、こんな図があるといいけど」と感想がありました。どこかにあるでしょうか。

 地震災害については「地殻変動」「津波」「液状化」の3つを取り上げたそうです。「津波」では国土地理院の津波浸水区域図を岩手・宮城・福島の太平洋沿岸部をつないだものを用意したり、「液状化」では模擬実験用の“エキジョッカー”でボトルを揺らすとサイコロなど砂から現れるものばかりでなく、乾電池などを入れ、磁石で砂(地面)の上に立たせ、磁石を離して揺すると倒れたりもぐったりしていくようにするなど、教材に工夫をされていました。

 また、スライドムービー「津波被災地を歩く」の「鵜住居町を歩く」と「宮古市姉吉を歩く」を見せたそうですが、みんな真剣に見ていて、釜石東中の生徒

が状況判断をして「さらに高いところをめざして避難したこと」や「小さな子を助けて避難したこと」、昔の人の知恵に感心していたそうです。

 鷹取さんからは「一つの地震でいろんな周期のものがやってくることがある。最後の方でも扱った方がいいのではないか」と意見がありましたが、小川さんとしては「データが見つからない」とのことでした。

3.教材研究「日本における自然災害と行政」………………………鷹取 健

 「日本全国の地震、津波など」「国の動きなど」「東京都の行政」と3つの項目に分けた一つの年表を平安時代の貞観大津波から昨年の東北地方太平洋沖地震までを概観する資料と、南海トラフを震源域とする巨大地震の周期性から再来時期を推定する試み、貞観地震などの歴史地震の地質調査・研究を紹介する資料の2部構成で提案されました。

 日本に地震学会ができても、大地震の後に国が震災予防調査会などをつくって研究と金のつながりができると学会が解散してしまったことは初めて知り、驚きました。そんな中でも武者金吉がガリ版刷りの『増訂大日本地震資料』(1944~1951)をつくり、このデータで地震が繰り返し起こることがわかったというのは一筋の光のように思いました。

 地道な研究が重要なことは歴史地震による津波でも同じで、古文書でしかわからなかった貞観津波の証拠を、25年も前から大地の津波堆積物から見つけ出すことに成功するなど成果を上げています。フィールドを大切にする本来の科学者のあり方のように思いました。最後にその地質調査のようすを描いたETV特集「大震災発掘 埋もれた警告」(2011.12.11)の東北大学・箕浦孝治さんの調査・研究部分を見ました。こうした研究成果をきちんと受け止めて対策していれば、“3・11”でも多くの命が救われたかもしれません。