2014年10月例会報告     過去の例会へ ホームへ../zhong_yang_yan_xian_li_kesakuruHP/guo_quno_li_hui.html../zhong_yang_yan_xian_li_kesakuruHP/homu.htmlshapeimage_1_link_0shapeimage_1_link_1
 

日 時:2014年10月24日(金)19:00~21:45

場 所:国分寺市本多公民館

参加者:阿久津・石川・小川・鷹取・高橋・手塚・町田・堀(記録)

 

0.当日の配布物

・「物理基礎授業通信13号」 …………………………………………阿久津 嘉孝

  1.  今回はv-tグラフについての授業をまとめた通信でした。例会での力学学習に関連した提案の資料でもありました。提案報告の中でも取り上げられていたことですが、生徒が考えたv-tグラフの中に(どうしてこんな考えが出てくるのか、よくわからない)ものがありました。それに関する考察が興味深いです。生徒の話を聞いてみたら、課題提示前の実験を実はとてもよく見ていて(すごい!)と感じたそうです。

・「宮古市田老の津波石」「レントゲンで見たヘラクレスオオカブト」 ………堀 雅敏

  1.  宮古市田老の観光スポットだった三王岩と、3.11の津波で移動した大岩=津波石を撮影した写真、東京動物園協会のホームページ「東京ズーネット」に載っていたヘラクレスオオカブトのレントゲン写真を紹介しました。後者については阿久津さんが「この写真を10年前に見たかった。“カブトムシの後あしが腹部から出ている”と言われて説明に困ったことがあったから」と話していました。

 

1.『理科教室』を読んで「『理科教室』10月号」…………………手塚 博紀

  1.  大学時代、手塚さんの知り合いだったという渡辺真衣さん(南多摩理科サークル)の《授業奮闘記:理科 はじめました!》では、子どもたちどうしで話し合い、自分の言葉でノートをまとめていけるようになり、そのノートから“ワクワクとした気持ちや興味がふくらんでいく様子が手に取るように”分かったということで、“渡辺さんを見習って頑張っていこう”と思ったそうです。同僚の町田さんによれば、もうすでに手塚さんはいろいろ意欲的に取り組んでいるようです。

  2. 鷹取さんからは、「わかりやすい文章で、よく書けている。ただ、頭骨写真を載せるなら、文章にもするべき」との指摘がありました。

  3.  さて本論は、今月号に2本掲載されていた「音」の授業についてでした。

  4. まずは、鈴木久さん(愛知理科の会)の《今月の授業:音(中1)》。

  5. 授業2時間目で、鈴木さんが「“物体が振動するのが音源”と書かれているが、これは間違いではないか」として扇風機の羽根の代わりに等間隔で穴を開けた段ボール板を取りつけストローで吹き付ける実験をしている部分について、空気も物体なので“空気の振動”と考えることもできるのではないか、との疑問を出されました。

  6.  これについて夏の東京大会で鈴木さんのこの提案を聞いていた町田さんは、「鈴木さんには“物体が振動して音が出る”というのはいいが、“音が出ていれば物体が振動している”とは言っていいのかという問題意識があり、“空気も物質だからいいんだけれど”と言いつつ、例えばリコーダーを吹いたとき、空気が渦を巻くのを“振動”と言っていいのかと考えているようだ」とのことでした。

  7. 鷹取さんからは「鈴木さんは音も光も“伝わる”としている。電気なら“流れる”だろうし、物理概念としてわからなくなる。そもそも音が単元として成立するのか?振動としてならわかるが」との疑問。これも、小学校から音の学習が消えてしまったことが影響しているのでしょうか?

  8.  続いて小野洋さん(筑波大附属中)の《実践記録:聴こえるという視点での「音」の授業》。

  9. 小野さんが耳で音が聞こえることの説明で、「(共鳴で)震えだした音叉が耳での鼓膜に相当する」と書いてあることに、「鼓膜は共鳴していないと考えられる」と手塚さん。小川さんも「共鳴とは言わない。共鳴しているなら、その音しか聞こえない」と応じました。さらに、“外耳道の長さが28mm”と調べたことや、音叉が共鳴するときの疎密波の図示についての手塚さんの疑問、特に共鳴箱内では1/4波長であることについて、「考えたこともなかった」とつけ加えがありました。

  10.  太鼓をたたいたときに疎密波がつくられる説明について、「太鼓の皮の正面にろうそくを置けば、皮の揺れに合わせて炎が揺れるということだが、ろうそくを横に置いても、疎密波は回折するので同じことが起きるはず。どうだろうか。空気のかたまりの動き、風ではないのか。シャボン玉なら行きっぱなしになるのではないか」との見解でした。高橋さんは“段ボール箱でつくった空気法のような現象”と理解しましたが、「やってみなければわからない」ということで、今後の課題としました。

 

2.実践記録「高校での実践から、小学校からの力学教育を考える」………………阿久津 嘉孝

  1.  夏の科教協東京大会では授業の中身をくわしく書いて提案したのだそうですが、そうすると「何をいつやればいいか」という話になかなかいかなかったそうで、今回は力学の指導骨子を示しての実践報告でした。

  2.  まず町田さんから「5ページの下、(2)の“ちゃんと説明せよ”の“ちゃんと”というのは何をさすのか?」という質問がありました。これは、“~が、~に~する力”と具体的に書くこと、と決めてあるそうです。

  3.  続いて町田さんから、同じ5ページの学習課題13について、「AとBのバネではおもりと反対側の端の高さが違うから、黒板につける滑車にフックをつけ、Bの方に長いひもをつけて高さを同じにしたらいいのではないか」との意見がありましたが、阿久津さんからは「それはそれでズルしてる気がする」との答え。鷹取さんは「AとBの方向はそのまま、バネでなく糸にして滑車を介してバネばかりにつなげばいいのではないか」と意見を述べましたが、阿久津さんは「3力はやらないつもりだった。ここで3力は無理。子どもから質問があったので、あまり準備をしないでやった」とのことでした。

  4.  これに対して小川さんからは「力の合成からていねいにやった方がいいのではないか」との意見がだされました。高橋さんからも、「自分の記憶からは受験対策でやっただけ。実験した記憶がない。ちゃんとやった方がいい」と発言がありました。石川さんからは「平行四辺形の合力については中3でやる」と、補足がありました。

  5.  ここで町田さんから、「最近こんなことをやっている」と、力の平行四辺形をやった後の実験(右図)が紹介されました。

  6. ペットボトルの水を出し入れすることで、重さの調節ができるそうです。

  7.  「なるほど」と納得の声があった後、「力の平行四辺形を見つけたのは誰だろう?」と疑問が出されました。阿久津さんは「永久機関について考察したステヴィンが発見したといわれている」と答えていたので調べてみました。

  8.  阿久津さんからは「故・玉田泰太郎さんのようなやり方がスタンダードであれば、高校では定量的なことからやれるのだが」と出されると、町田さんから「加速度は中学生では難しく、高校でも速度と加速度が分化していない」と発言がありました。阿久津さんは「速度は知っているが、加速度は抽象的。数学的なイメージが持てるかということだろう」と述べると、鷹取さんからは「1960年代に数教協では“瞬間をどう教えるか”ということが問題になった。数学の系列を洗ってみると見えてくるものがある」、小川さんからは「中学校では定量的にはやらないが、加速度の概念は教えたい」と意見がありました。

 

3.授業プラン「光(中1)」……………………………………………石川 俊一

  1.  凸レンズを使った実像と虚像を、作図をしながら考えさせる授業で、その動機づけはどうしたらいいかという問題提起でした。

  2.  鷹取さんからは「この実験3をやる前に、焦点距離をやるのか」と確認があり、石川さんは「その通り」との答えでした。そこで鷹取さんの意見は「簡単な単焦点レンズのカメラで人を写すと、遠くにいる人は小さく、近くにいる人は大きく写る。最初から“この距離でやってみよう”ではおもしろくないのではないか。経験とつなげる法則性を調べてみよう、のようにやりたい」ということでした。

  3.  町田さん「蛍光灯に凸レンズをかざすと、蛍光灯が映る。そこを焦点距離と考えていいのか。物体からレンズまで十分距離があればいいが、像ができるのは焦点距離とは別の場所。蛍光灯はやめた方がいいのではないか」。

  4.  鷹取さん「だから、平行光線でやりたい。凸レンズに太陽光を通し、焦点で集まる。平行光線が箱に入れた凸レンズを通るところを見せたり、光束で作図したりさせたい。焦点に太陽の像ができていることを教えたい」。

  5.  町田さんは実験のやり方として、実験3のア(物体がレンズから遠い)~オ(物体がレンズに近い)の位置について、班ごとに担当を決めて予想・実験させれば、クラス全体ではすべてを確認できるのではないか」と話されました。

  6.  阿久津さんは「高校ではここにつながる学習をするのは一部の子しかいない。扱いは大きくしないで、ほかの単元に時間を使うのがいいのではないか。1時間しか取れないのであれば、172ページの(b)=物体が焦点距離の2倍の位置にあるとき、凸レンズを通すと物体と同じ大きさの実像ができる=だけ前の時間にやっておいて、“物体がさらに遠いところにあったらどうなる?”と聞いて作図・実験させて確認し、ほかの条件のものは教師がやってみせるということでいいのではないか」とのことでした。

  7.  鷹取さんは「(a)(b)(c)などの条件のものは、集合写真を使えば一度で見せることができる。幾何光学は少しやってもあまり意味がない」とのことでした。「ただ、受験問題に出るからなあ」という声もありました。

  8.  ここにも受験の弊害があるようだな、と思いました。