日 時:2014年6月27日(金)19:00~21:30
場 所:国分寺市本多公民館
参加者:阿久津・石川・小川・高鷹・児玉・鈴木ま・鷹取・高橋・手塚・
内藤・渡辺・町田・堀(記録)
今回は研究授業をされた内藤淳子さん(東京小学校理科研究会)が1996年9月例会初参加以来何回目かの参加、そして渡辺真衣さん(南多摩理科サークル)が初参加でした。また、東京小学校理科研究会・足立理科サークルの高鷹敦さんが、約10年ぶり、2回目の参加だそうです。
0.当日配布された通信
・「物理基礎授業通信5号~9号」 ……………………………………阿久津 嘉孝
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今回は紹介していただく時間を取ることができませんでしたが、先月に引き続き、授業内容の紹介と、生徒のノートの文章が載っている教科通信が配布されました。
1.授業研究「空気さがし(小2)」…………………………………内藤 淳子
研究授業は、内藤さんの退職に合わせて東京小学校理科研究会で計画され、2014年2月7日に実施されました。
(1)授業者からの説明
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内藤さんからは、❶当日参観者に配布された授業案に授業記録をつけ加えた「空気さがし」、❷研究授業当日の子どものノート内容とその分析「子どもたちのノートから」、❸研究授業での協議会での指摘を受けて行ったその後の授業のようすを述べた「『ホースの中の空気』をやった後、2つのことを授業に入れて行いました。」、❹今回の報告に向けて書かれた「『空気さがし』の実践報告をするにあたって」という4本の資料が配付されました。
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つまり、授業計画、授業当日の発言記録、授業当日の子どものノート、授業後の協議会討議を受けて修正した授業の記録と、授業研究を行うために必要じゅうぶんな資料を用意してくださったわけです。そして、その資料を使い、授業について説明がありました。
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いままで何回か「空気さがし」の授業をやってきた中で、子どもたちの反応を見ていると、「ハンカチぬれるかな?(コップの底にハンカチを押し込み、逆さにして水の中にすべて沈める)」とか「空気の引っ越し(空気を閉じ込めたコップを水の中に入れ、もう一つの水で占められたコップに空気を移す)」などの実験、つまり子どもたちに「空気も場所を占める」を目標にするのは、2年生には難しいと感じていたそうです。
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そこで、「空気はどこにでもある」だけを目標として指導計画を立て、「ホースの中の空気」を考え出して授業を公開したのだそうです。
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U字型の「ホースの下の方に空気がたまっているから、ホースの中に空気はあるだろう」と子どもたちは考えるだろうと予想し、<ホースを短くしても空気はある(たまっていなくても空気はある)>→<開放系のものにも、空気はあるはずだ>と考えてくれるだろうと、授業を組み立てたそうです。しかし、ホースの中にたまっていて空気があるのか、空気が出入りしているから空気があるのかについて、子どもたちには確かめようがなかった、といいます。また、ホースが短くなればなるほど操作が難しく正確性に欠け、低学年には無理な方法をさせてしまったと自評されました。
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ある班では、ホースの実験が一段落した後、一人の男の子が液体のりのキャップを水の中に入れ、空気が泡となって出てくるのをやったそうです。それを見た同じ班の女の子はノートに
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「わたしは、なんであながあいていないのに、空気があるのかなぁと思いました。」
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と、書いています。
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内藤さんはこれを見て、(開放系は出入りができるので、空気がある。底のあるものにまであった)とこの子は考えたと分析、学習の順序が違っていたか、と話されました。
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一方、「ダンボールやストロー、キャップでやりました。ダンボールは、べちょべちょになったけど、空気がいっぱいでました。ストローもキャップもでました。わたしは、どっちもあながあいているのに、空気があるんだなぁと思いました。」と書いている子がいて、この子は(コップやキャップなどには空気があるという認識があったのではないか)と分析されています。
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また、「たしかめたら、長い方が右からしか(泡が)出てきませんでした。左は、空気をホースの中にいれているのかなぁと思いました。そして、ほかのものも、右から出てきました。ぜんぶ二つあながあいているところは、ぜんぶ左から空気をすっているのかなぁと思いました。」と書いている子がいて、(2つの穴が空気の入る口、出る口ととらえてしまった)と話されました。
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そこで研究授業後、2つのことを授業に入れてみたそうです。
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一つは、順序としてはホース実験という開放系の授業の前にやるべきだったという、のりのキャップなど、一方に穴が開いているものの実験を入れてから、石や金ぞく、スポンジの中の空気を扱ったそうです。
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もう一つは、協議会の中で案として出された、透明な曲がるストローを平行につなげて“ストローいかだ”を作り、1本ずつ片方を持ち上げて空気が出るのを確かめる実験を入れたそうです。ストローの向きによって、空気の泡の出方がはっきり捉えられるそうです。
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協議会では、内藤さんの無意識の行動に指摘があったそうです。ホースを水の中に入れて空気が泡となって出てくることを確認しましたが、何回かやっているうちに水がホースから抜けなくて泡が出ないことがあり、内藤さんは何気なくホースを吹いて水を出しました。この無意識の行動が、子どもたちには「空気を入れた」と思わせてしまったようだというものでした。
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この授業の中では「なぜ空気があるか」について考えさせ、子どもたちはよく考えて、よく話してくれたものの、いままでの実践のように“空気見つけ”の楽しさを知り、いろんなところに空気があることを見つけてくることが少なかったそうです。
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いままでは、例えばプールにポチャンと潜ったときに見える空気の泡「プールのブクブク」、お風呂に入ったときに手足につく泡を見つけた「おふろで見つけた手足のあわ」などの発表があり、こうした発見をどんどん出てくるようにしたかったということです。
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つまり、「なぜ?」と理詰めの傾向になり「見つけた!」が少なくなってしまったという自評でした。
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内藤さんは「私の授業は失敗だった!」と❹の文書に書かれているように、総じて否定的な感じの自評でした。しかし、いままでの実践の中から分析し、果敢に新たな低学年教育を生み出そうとする意欲的な試みであり、課題は課題として集団的に検討するとしても、むしろその中から学ぶべきことも多く、貴重な提案だと思いました。
(2)ビデオ視聴
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続いて、公開研究授業を見に行った鷹取健さんが撮影されたビデオをみんなで見ました。
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映像の時間が長いので、時々早送りにして見ることにしましたが、子どもたちがじっくりと考え、黙々と文章をつづっている場面では「ここはじっくり見ましょう」と声がかかりました。中学校や高校の方にとっては、低学年の子どもたちが脇目も振らず文章をつづる姿は新鮮だったようです。
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授業は、つぎのように進められました。
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①「このゴムホースの中に、空気はあるかな?」と発問する。
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②「ある」か「ない」か、子どもたちから考えを聞く。
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③水の中にホースを入れ、泡が出ることで空気があることを確かめる。
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④ホースを短くしたらどうか、子どもたちから考えを聞く。
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⑤短くても泡が出ることを確かめる。
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⑥短いホースや、段ボール紙などを、グループ実験で確かめる。
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⑦(やったこと)をノートに書く。早く書けた子は発表する
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⑧「空気さがし」の活動の動機づけ
(3)話し合い
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まず、「❶の5ページ指導案には、短く切ったホースの実験で、ホースの先にビニル手袋をつけ、ホースを縦に水の中に入れて膨らむかどうか調べる実験が載っている。ところがいまのビデオを見ても、実際にはホースを横にして水の中に入れている。どうしてか?」との質問がありました。これに対して内藤さんは、「縦に入れるということが出てきたらやろうと思っていた」とのことでした。
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質問者は「むしろこの方が、ホースの中にあった空気が出てきたと言えるのではないか」との意見でした。これに対して、「水の中に泡が出てくるからいいのではないか」との意見もありました。これについて質問者は「横に入れてしまうと、うまく泡が見えないかな、とも思う。縦に入れてから横にして手を離すならいいかもしれないが」との考え。
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また別の方からは「“水の中で泡になって出てくる”だから“空気がある”と子どもは思考できても、“袋が膨らむ”だから“空気がある”ということはやっていないので無理ではないか」との意見がありました。
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内藤さんとしては“水の中で空気が泡となって見える”ことにこだわりたかったということですが、「予備実験で短いホースも何回かやっていて、そのときはうまくいった。ところが実際の授業では何回かやって見せると、水が入ってうまくいかなかった。そこで慌てて吹いてしまった」とのことです。
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別の方からは「“ここに空気はあるけれど、ここにはない”と考えるとすると、ホースを短くするというのは重要。あまり短くするとやりにくくなるが。それから、ホースをフッと吹いたという話があったが、泡が出た後に、『空気はまだあるかな?』と聞くといいのではないか。つまり、空気を出し切ったという確認と同時に、(水に入れた瞬間を見なければいけない)という意識を持たせることができるのではないか」との意見がありました。
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関連して、「その確認ができていなかったからかもしれないが、“空気があった”と書いている子のノートに、どのような事実があったのか、泡のようすと関連づけて書かれていない。例えば、❷の6ページT.Tのノートでは、空気という言葉は出ているが、泡という言葉はない。逆に泡のことを書いている子は、それで終わっていて“空気”とつなげて書かれていない」という指摘がありました。「段ボール紙はとてもわかりやすいが、ホースはやりにくい。この段階では半信半疑だったのではないか。研究授業後の実践で、曲がるストローの絵がある記録では書けているように思う」「教師が“黒板見て書いていいよ”と言っている。黒板には“ある”と“ない”が書かれている。それで、“空気がいっぱいあった”とノートに書いたのではないか」との意見も出されました。
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内藤さんは「この授業では“空気があるかないか”を考えさせたが、授業そのものの構造が違っていた。事実をしっかり書かせるべきだった」と答えられています。
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研究授業における内藤さんの問題提起に対し、「自分は、コップがいいのではないかと思っている。コップを逆さにして水の中に入れる。ひっくりかえすと泡が出る。空気が出た。水が入ってきた。コップの中に空気があるかないかの1点に絞って、この事実を実験で確かめる。そして“◯◯にも空気があるかな?”とつなげていくのがいいと思う。内藤さんのクラスは自然のおたよりで鍛えられているので問題によく食いついてくる。そこでつい、説明させることにいってしまったように思う。でも子どもは説明しきれない」との意見もありました。
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これについて、「実験方法は、中学校でもコップでいいだろうと思っていたし、それで成り立っていた。内藤さんは違う方法を考えた。このやり方でもうまくやれば、子どもたちは結論を出せただろう。“ホースの両方とも押さえてから”など、実験のやり方の確認をすればよかったのではないか」との意見があり、「賛成。“『空気はまだあるかな?』と聞くといいのではないか”という押さえも重要で、賛成。開放系にも空気があるということを取り上げるのは大切だと思うが、そのときに曲がったホースが教材としてよいかどうかは検討する必要がある」との意見が続きました。
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別の方からは「ホースの両側を押さえると、“開放系ではない”と思うのではないか。でも押さえないと、実験としては難しい。押さえるんだったら、『もうこの中に空気は入ってこないよね』と確認してから水の中に入れるといいのではないか」との意見があり、「でも低学年の子に理屈は難しい」との反論もありました。
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後から参加された方から、「透明なパイプを使うといいのではないか。空気の動きがわかる。両端を先につけてから水の中に押し込み,それをひっくり返すといいのではないか」と意見が出ました。「透明なものを使うといいというのは、研究授業後の協議会でも出ていた。実験の確認については、ビデオで撮影しておき、スローモーションで見せるといいのではないか」との意見もありました。
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内藤さんからは、「“ハンカチぬれるかな?”や“空気の引っ越し”など、空気が場所を占める実験はおもしろがるが、低学年には難しい。今回初めてそこをやめて、水の中に泡となって見えることに集中させたいと、実践した。いままで空気の場所性をやっても、そのことをもとにした“空気見つけ”はあまり出て来なかった。理屈はわからないけれど、空気を見るということでは、たくさん事実を見つけ、自然のおたよりに出て来ていた」との話がありました。
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「開放系はすごく大事だが、ストローを水につけた場合、水で空気を押さえているので完全に開放系とは言えないような気がする。小2の子どもは、例えばお風呂で、タオルで“海坊主”を作るようなことをして、ふつうに“空気をためられる”という認識はあるのか?」との意見には「水でふたをしていても、指で押さえているわけではないし、子どもには開放系と見えるのではないか」との意見。内藤さんからは「自然のおたよりで、お風呂の話、タオルの海坊主はよく出てくる」とのことでした(❹のP.6のS.Mの発表参照)。
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「U字型で水に沈めて実験している。ホースを逆U字型にしないのは、底の方にたまっていると考える子がいるだろうということだったが、『逆にしたら、どう?』と聞いたら、どう答えるだろう」との考えに内藤さんは、「たぶんどんどん理屈っぽくなって、ついて行けなくなる子が増えるのではないか」とのことでした。
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「“ゴムホースにふたがないから”と、“たまっているから”とは違うが、理詰めでいっても低学年の時期には、友だちの意見に左右されやすい」との話が出たところで、「内藤さんは、早く書いた子のノートを読ませた。他の子は、影響されるのか。故玉田泰太郎さんは、早く書けた子にノートを読ませることをやっていた。低学年の場合、読ませる順序せいはあるのか。内藤さんの場合、代読したりもしていた。」と発言がありました。
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内藤さんは、「ルールは、基本的にはない」とのこと。別の方からは「あまり考えることができずに、“何を書こうかな?”と迷っている子には、早く書けた子に読ませるのは効果的だった。教師の方としては否定的なことは言わないようにして、『音のことも書いている。いいね』などとは言う。子どもが自分でノートを読むと、自分の曖昧なことを自覚することもある」と経験が語られました。
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「自分の考えを出させたときには、ノートに書かせていなかった。最後にまとめとしてノートに書かせていたが、最初にやったことを忘れる子はいないのか?」との質問もありました。
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これについて内藤さんからは「低学年は、途中で書いてしまうと、後は書かない。最初のうちは、“はじめに◯◯しました”のような書き方を教える。“先生なんて言ったっけ?こう言ったよね。”などと問いかけ、順番に書く習慣をつけさせている」との話がありました。
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授業を見た方からは、「授業が終わり、子どもたちが次々と帰って行く中でも、ある女の子はまだどんどん書いている」との話がありました。「書くことで吐き出すことが気持ちいいのではないか」「通信を出していることが大きいのではないか」などの話もありました。
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最後に、「きょうのビデオを、若い先生にも見てもらいたい」との提案がありました。「授業者の許可を受けるなど、ルールをきちんと守ればいいのではないか。できればきょうのように、授業者に来ていただいて話し合うことができればいい」との話もありました。
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授業者にも来ていただき、中・高が中心の中央沿線理科サークルに他サークルの小学校の方も見え、校種を超えてビデオを見ながら検討でき、充実した例会となりました。例会後の居酒屋にもほとんどの参加者がそのまま参加、話も弾みました。