2015年5月例会報告     過去の例会へ ホームへ../zhong_yang_yan_xian_li_kesakuruHP/guo_quno_li_hui.html../zhong_yang_yan_xian_li_kesakuruHP/homu.htmlshapeimage_1_link_0shapeimage_1_link_1
 
  1. 日 時:2015年5月15日(金)19:00~21:45

  2. 場 所:国分寺市本多公民館

  3. 参加者:阿久津・石川・鈴木(ま)・鷹取・高橋・津田・手塚・町田・堀(記録)


  4. 0.当日の配布物

  5. 「物理基礎授業通信」№1~№3 ……………………………………阿久津 嘉孝

  6.  来月くわしく報告される予定の「物質の不滅性と質量概念獲得について」の授業通信です科教協の小学校教員なら授業で取り組んでいる課題を高校でやっているので、生徒の反応が興味深い記録です。

  7. 「低学年教育の指導内容と材を探る-栽培とその観察目的をめぐる授業-」

  8. ………………………………鷹取  健

  9. 「(小学校の教科書は)生物学の基礎が学べるような配慮があるのだろうか。それは、中学校教育にうまくつながっていくようになっているのだろうか」という問題意識から、「栽培と生物学教育(植物学教育)の内容の系統性を探る」貴重な問題提起です。

  10. 《放射能は微生物では消せません》」………………………………町田 智朗

  11. 「原子核と放射線」の授業と、現実に進行している原発事故の影響をつなげるために生徒に配ったプリントです。「日経トレンディー・ウェブ版」の記事だそうで、生徒に読ませて感想を書いてもらったそうです。


  12. 1.教材研究「仙台市の津波防潮堤工事と植樹」…………………鷹取  健

  13.  仙台市など行政機関の資料、テレビや新聞の報道、地形図や地質図、そして実際に仙台市内を歩いて確かめたり映像記録したものをもとにしたりして“仙台市の津波防潮堤工事と植樹”について考察した報告です。

  14.  鈴木さんから、「“地下水位が高い”とはどういうことか」と質問がありました。鷹取さんからは、「“深くないところに地下水面がある”ということ。小平では10m以上掘らないと水は出て来ないが、植林地では1~1.5mほどなので、2~3mほど盛り土をしている」との答えがありました。鈴木さんは『地下水は語る 見えない資源の危機』(守田優/岩波新書)を読んでいるとのことで、「地下水に圧力がかかっていて井戸水が出ること」「地下水位はずっと一定ではなく変動していること」などを学んだそうです。鷹取さんによれば、地下水位は自治体の土木課で分かるそうです。

  15.  鈴木さんからはまた、「T.P.とは何か」との質問がありました。これは“東京湾平均海面”のことで、“東京湾中等潮位”とも呼ばれ、全国の標高の基準となる海水面の高さです。

  16. ※ 高さの表現には,「標高」と「海抜」があります.

  17.  日本の土地の測量(地図)での高さは「標高」で表し,東京湾平均海面(1873~1879年の平均潮位)を基準(標高0m)として測っています.

  18.  「海抜」は,本来は近傍の海からの高さで表しますが,一般には標高と同じように使われています.

  19.  平均海面は,地形や海流などの関係で場所によって異なります.

  20.  日本周辺では,東京湾の平均海面を基準にすると,東北・北陸・山陰・九州地方の日本海側が高く,北海道・東北・関東地方の太平洋側が低くなっていますが,日本の高さの基準としては,離島(りとう)などの特別な場合のほかは,東京湾における平均海面を基準として高さを表すことが定められています.【国土地理院ホームページより】

  21.  高橋さんからは、「植樹しているあたりは汽水のはずなのに、江戸時代からマツが根付いてきたのはなぜか」との質問がありました。「米を納めるために増産したいから、干拓をし、塩水を出して淡水にするなどしてきた。」とのことでした。

  22.  鈴木さんから、「マツは下ではなく、横に根を張る。常緑広葉樹は根を深く張るので、がれきで盛り土をして植樹すれば津波にも耐えられると、宮脇昭さん(横浜国立大学名誉教授)は言っている」とつけ足しがありました。

  23.  鷹取さんからは、「仙台市若林区荒浜ではがれきを使って盛り土をし、植樹事業を行っているが、海岸の生態系をどうするか、ということに関しては難しい」との感想がありました。

  24. サークルで行った東北のフィールドワークで1泊した釜石市鵜住居地区の宝来館のある根浜地区では、巨大防潮堤は拒否し、今まで通りの高さとして集落を高台に移すことを決定、工事が進められています。その根浜地区と大槌湾を挟んで向かい側にある大槌町赤浜地区は漁師町。鵜住居地区同様、14.5mの巨大防潮堤では「海が見えねぇじゃねぇか」と拒否、今まで通りの6.4mの防潮堤にし、集落を高台に移すことにしました。

  25.  この赤浜地区を描いたドキュメンタリー映画「赤浜ロックンロール」(監督:小西晴子)では、上からの押しつけではなく、自分たちの町をどうするか、真剣に考えて行動する住民の姿が描かれています。映画では、谷口真人さん(総合地球環境学研究所教授)が手作りの機器で海底湧水の噴出量を測定している様子も描かれていました。

  26.  フィールドワークで行ったときにも湧水に生息するイトヨを見ましたが、大槌は170カ所以上の自然の井戸が湧いていた“湧水の町”です。地下水が森の養分を海に運んで湧き出す海底湧水は、海の生物を育んでいます。巨大防潮堤は、こうした森と海のつながりを分断してしまう可能性もあるのです。

  27.  鷹取さんは、NHK総合・東北Z「“里浦”に生きる~石巻 長面浦の4年~」(2015.5.11)から、長面浦(ながつらうら:北上川河口)は穏やかな内海で湧水があり、三陸でカキの成長が最も早い地域であることを紹介されました。


  28. 2.実践記録「原子核と放射線」……………………………………町田  智朗

  29.  おととしの実践ではガイガーカウンターや放射線源、霧箱などが準備できなかったために話だけで終わってしまった単元を、今回は実際に見せて実践できたということです。ただし3時間しか取れず、予定していた核分裂や原子核・放射線の利用と問題点については扱えなかったそうです。

  30.  阿久津さんからまず、「原子の構造はやっていない?」との質問がありました。「化学で1学期にやった。でも分かっていない生徒もいて、“陽子”“中性子”という言葉がなかなか出て来なかった」とのことでした。

  31.  鷹取さんからは「物理量を測定していく歴史はどうしたらいいか。生徒は放射線の測定をどう理解しているのか。計測器の発達については触れた方がいいと思うが」とのことでしたが、町田さんは、「時間がなくて、難しいかな。“荷電粒子の曲がり方”といってもポカンとしてしまう」との答えでした。阿久津さんも、「時間がたぶんない。やるんだったら化学でやってくれたらいいが…。もしかしたら、“科学と人間生活”でやれるかもしれない」とのことでした。これを受けて町田さんは、「3年の終わりに時間が余れば、最後にその単元の学習として取り組めるかもしれない」とつけ加えました。

  32.  高橋さんは町田さんのこの授業を参観されたそうで、「とてもおもしろかったし、いま必要なことではないか。子どもたちは幸せだなあ」と思ったそうです。ただ、「原子核の崩壊というのはみんな夢中になる。でも時間がない。どのように納得するのか。子どもたちにとっては、物質が変わるというのは不思議なことだと思うが」と話されました。阿久津さんは、「むしろ子どもたちはその前の“原子は変わらない”の方が不思議ではないか」との考えでした。

  33.  阿久津さんは、福島原発事故で放射性物質による汚染がひどい地区で、「たとえば100年経ってどのくらいのレベルになるかが分かるための授業が必要。3.11後は理科総合で10時間取り組んだ」と話されました。

  34.  鷹取さんからは、「時間がないということだが、この授業を受けて、政治的な判断まではいかない。環境、生存権がないがしろにされているとき、もう少しつけ加えてほしい」と要望がありました。町田さんは、試験の最後に新聞記事を読ませ、読んでいれば答えられる質問を出題しているそうです。また、福島では怪しい薬が売られているそうで、「放射能は微生物では消せません」(日経トレンディー・ウェブ版)を読ませて感想をもらったそうです。「放射線をなくすには、ただひたすら待つしかないのか」という感想があったということです。


  35. 3.『理科教室』を読んで「『理科教室』2015年4月号」………高橋 和代

  36.  広い範囲の記事に渡っての感想でしたが、時間が迫っていて話し合いの時間が多くは取れず、申し訳ありませんでした。

  37.  高橋さんにとって課題解決方式での授業は新しく、(この時間に何を学ばせたいのかを、自分の中ではっきりさせるのが大事なんだな)と感じたそうです。

  38.  鷹取さんは山口誠さんの「ムシを育てよう」について、「なぜカマキリなど肉食のものを扱わないのか」「エサと書いているが、野生のものなので“食物”とか“食べ物”としたい」と話されました。鈴木さんからは「4月だからカマキリは無理。全体案を出して、4月はこれ、という書き方がよかった。モンシロチョウについてはキャベツにこだわっているが、アブラナやコマツナ、ブロッコリーでもいい」、高橋さんからは、「“エサ”としているのは飼育しているからではないか」と話がありました。

  39.  鈴木さんから鈴木康晴さんの特集論文に関して、「“自然のたより”の取り組みで、“自然の中で何を見つけさせるのか”がない。具体的な事実を見せていって、具体的な言葉を獲得させていきたい」との指摘、鷹取さんからは長谷川修一さんのエッセイを取り上げ、「植物学習に根の学習がない。タンポポの学習でも“長い”だけ。多年草としての扱いもない。種はまず根を伸ばす。水分を吸収し、呼吸もしている。根の学習は大事」との指摘がありました。