日 時:9月25日(金)18:30~21:30
場 所:国分寺市本多公民館
参加者:阿久津、石川、掃部、鈴木ま、鷹取、町田、堀(記録)
(今月の参加者はやや少ないかな)と思い始めた頃、掃部(かもん)さんが、久しぶりに顔を見せてくださいました。
みなさん、うれしそうでした。
1.報告「夏休みにやったこと・学んだこと」
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① 鈴木 まき子
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9月9日から11日にかけて、茨城県や栃木県、それに宮城県など関東や東北で大きな被害が出た豪雨(関東・東北豪雨)がありました。ちょうどそのとき、豪雨で決壊した渋井川のある、宮城県大崎市の実家にいたそうです。叩きつける雨は“バケツの水をひっくり返した”どころではなく、高圧洗浄機の水を、屋根一面に浴びているような感じで、とても寝ていられなかったそうです。
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サイレンは鳴るものの何のアナウンスもなく、とても不安だったといいます。未明の堤防決壊で、市は「周囲が暗くて川の流れも速く、避難を促すのは危険だと判断して避難勧告は出さなかった」と報道されましたが、情報提供も不足していたことになります。また鈴木さんは、「古川市から大崎市への広域合併の弊害があったか」と話されていました。東日本大震災でも、石巻市などで、“広域すぎて手が回らない”“古くからの地元を知る人が他の地域に転勤となって状況把握などに支障が出た”などの指摘がありましたから、“平成の大合併”の弊害もあったのでしょう。
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この豪雨被害の報道で鈴木さんは、豪雨で本流の水かさが増し、本来なら本流に流れ込む支流の水が行き場を失って堤防を越える、“バックウォーター”という現象を知ったそうです。鷹取さんによれば、東京低地でもよく起きるので、いくつかの水門で調整しているとのことです。
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科教協大阪大会では、玉川上水の実践を自然と社会分科会で報告。「地図を読めるようにしてフィールドワークをすると違う」ことを中心に述べたそうです。《宇治川の氾濫》を授業された方からは、「ハザードマップがあっても、読む力がないと意味がない」など、参加者から「地図を読む力は大事だ」と賛同を得たそうです。「等高線を描いたプラスチック製弁当箱のふたを重ねると立体的に地形が見える」話も出たそうですが、「3・4年生には、触って見られるものがいいのではないか」と話したところ、これも賛同を得られたとのことです。
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ただ分科会は現役を退いたOBがほとんどで、授業プランや実践が少なく、深まらないことに問題を感じたそうです。
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② 町田 智朗
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科教協大阪大会で浦邉悦夫さんのナイターに参加し、浦邉さんの“慣性”の表現を興味深く聞いたとのことです。今までは「止まっているものは止まり続け、(合力0のとき)動いているものは直線運動をする」としてきたのですが、浦邉さんの新しい表現では「どんなときでも慣性はある」とするそうです。
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いろんな人からいろんな意見が出されたそうですが、ここで町田さんは浦邉さんのプランでの実践報告を、同じ物理サークルの鴨下智英さんに秋の研究集会でしていただけるよう依頼したとのことです。
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東京支部冬の研究集会の“単位あたりの量”の話とつなげ、10月10日(土)に伊藤浩史さんが中学校での「速さ」の公開研究授業を行い、それを来年初めの冬の研究集会で検討する計画について話され、「うまくつながってきた」とのことでした。
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阿久津さんからは「浦邉さんの話は、自分たちが教員採用される前の話で、新しくないのではないのか」との指摘がありましたが、「僕らには新しいこと」とのことでした。
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掃部さんからは「“どんなときにも慣性がある”の意味は?ヒッグス粒子と結びつけると、“どんな場合にも質量がある”と同等か」との質問がありました。阿久津さんは「質量とは無関係」とのことでしたが、秋の研究集会などを通して、今後明らかにしていくことにしました。
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③ 掃部 条二
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「ここ2年の間授業を持っていなかったので、授業のことが気になっていた」とのことです。
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夏休みに若い教師と“ゼミみたいなこと”をやったそうです。力と質量を理解するのが物理だと思っていて、若い先生の授業をもどかしく感じ、「自分も勉強し直したい」とのことでした。
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④ 阿久津 嘉孝
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「本をたくさん読んだ」そうです。また、「学芸大学の図書館ではだれでも本を借りることができ、掘り出し物もある」とのことで、3冊借りて読んだそうです。なかでも、小田実の『HIROSHIMA』(講談社)はおもしろかったとのことです。
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愛知の川勝博さんが「科学教育若手研究会」で紹介していたという『子ども達はいかに科学理論を構成するか―理科の学習論』(R. オズボーン, P. フライバーグ/東洋館出版社)を読んだそうです。「子どもの認識過程についてはいろいろ述べているものの、具体的な授業については何も言っていない」と感じたといいます。
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また、同じく川勝さんが紹介していた『子ども達は理科をいかに学習し教師はいかに教えるか―認知論的アプローチによる授業論』(R.T. ホワイト/東洋館出版社)も読んだそうです。ただ訳文が難解で、「著者が唱える“構成主義の考え方が、どこまで日本の教育行政に影響を与えているか”まではよくわからなかった」とのことでした。
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最後に、阿久津さんが東京都教職員互助会に申請していた、中央沿線理科サークルへの教育研究団体支援金の申請が通り、振り込みがあったとの報告がありました。うれしいことです。
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また報告はありませんでしたが、「物理基礎授業通信第6号~第11・12合併号」の配布がありました。
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⑤ 鷹取 健
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・「科教協第62回全国研究大会地学分科会山麓堆積地・扇状地、まちづくりと土砂災害」
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・「改訂版 山麓堆積地・扇状地、まちづくりと土砂災害」
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・「扇状地―鬼怒川の洪水、堤防決壊―」
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の3本の資料を配付、それを読みながらの報告でした。
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最初の2本は、体調の関係で参加できなかった大阪大会地学分科会で報告する予定だったレポートの要旨と、これまでサークルで報告してこられた内容の改訂部分の説明です。数多くの文献などの資料を検討し、どう教材化すれば授業にできるか、細かな検討を重ねられています。
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3本目の資料は、関東・東北豪雨における洪水について、さっそく取りまとめられた授業プランです。時間がなくて詳しい説明までは聞けませんでしたが、自分たちの住んでいる場所がどういう所であるかが理解できる理科教育の授業プランとして貴重な提案だと思いました。
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鷹取さんとしては、「どうも地学分科会ではなかなか受け止めてくれないけれども、災害の被害まで授業として取り組みたい」ということで、継続的な提案をされています。
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鬼怒川の災害については、「後背湿地を水田として利用し、自然堤防の上に集落をつくって暮らしていたのが、だんだん後背湿地まで市街地を広げていった」ことが問題として話し合われました。
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⑥ 堀 雅敏
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進化学会の公開講演会「恐竜、昆虫、サル、コケ…進化に挑戦する学者たち」(8月23日)、NHK学園の古文書夏期集中スクーリング「小田原藩における災害復興と村々~元禄大地震と宝永富士山噴火をめぐって~」(8月25日)、東京動物園協会友の会の「ムササビの棲む森を見よう」(9月6日)、マハレ50周年記念展・公開シンポジウム実行委員会による記念展とシンポジウム「野生チンパンジー学の50年」(9月19日)などについて、いくつか資料を配付して簡単に報告しました。
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そして、写真をプロジェクターで見ていただきながら、8月17日から20日まで行った三陸の旅の報告をしました。気仙沼の唐桑半島ビジターセンター&津波体験館と、その近くの入り江に3.11の大津波で打ち上げられた津波石、綾里漁港や綾里中学校近くの様子、越喜来小学校跡地と大津波資料館、越喜来小学校の児童・教職員が避難した経路、大槌町の自噴水(湧水)の様子などです。
2.実践記録「中1の理科の授業のまとめ」………………………石川 俊一
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石川さんの「夏休みにやったこと・学んだこと」の報告は、この「授業のまとめ」に変えて行われました。
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実験とレポートを通して行った、昨年度1年間の、中1における1分野の授業についての考察と、生徒へのアンケートのまとめです。実験器具がなく、ほかの器具で代用したときには生徒も苦労したそうですが、多くはうまく揃っていて、生徒実験12回、演示実験3回を行ったということです。アンケートで一人の生徒が「毎回、実験する度にレポートを書くこと、大変だけど、やりがいがあった。集中し実験しないと上手くまとまらないからしっかりやろうと思った」と書いていたことには、手応えを感じたそうです。
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まず町田さんから「アンモニアの噴水実験ではろ紙を使ったということだが、どうやったのか」との質問がありました。
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町田さんが知っている実験は、図のように「アンモニアの入ったフラスコに、スポイトの水を入れると、アンモニアが水に溶けてフラスコの中の気圧が下がり、フェノールフタレイン溶液を加えた水が吸い込まれて噴水のようになる。このときアンモニア水溶液はアルカリ性なので、赤い噴水となる」というものでした。
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石川さんが「ろ紙」と話したのは教科書の実験で、ガラス管の丸底フラスコ内に入る部分に水を含ませたろ紙を巻いておき、ゴム栓を閉めると反応が始まるというものでした。石川さんは教師のタイミングで水を入れたいので、右図のスポイトをゴム球に変えた装置で実験されたそうです。
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掃部さんは持ち時間や実験の数などからその大変さを思いながら、「教師の予備実験も大切だが、生徒が予備実験をすると本実験が違ってくる」と話されました。石川さんも、「確かに器具が揃っていなくてうまくいかなかったグループも、回数を重ねると扱いがうまくなってきた」とのことでした。
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町田さんから、「エタノールの沸点の実験はグラフを描かせるのか」との質問がありました。「1分ごとに読んだものをグラフにする」とのことでした。「ちゃんと描けない生徒がいる。そういう指導は、事前にやったのか」という追加質問には、「その通り。教科書にも出ているし、描き方を見せた」とのことでした。
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町田さんとしては、「バネとおもりの関係をグラフにするなどで、目盛りが等間隔になることなどを丁寧に理解させたい」という意見のようでした。掃部さんからも、「変化の最大値から逆算して、目盛りの数値を打つようにさせたい」と意見が出されました。鷹取さんによれば、「中学では学習内容が減らないで授業時数が減らされた。なかなかきめ細かい指導ができない」とのことでした。阿久津さんは高校の立場から、「中学校で、石川さんのようにグラフを描くような作業がされているといい」と話されました。
3.『理科教室』を読んで「『理科教室』2015年9月号」………阿久津 嘉孝
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「今井正巳さんの“主張”に『ワラジムシなどの土壌動物も分解者』とあるが、糞をするので消費者ではないのか」との疑問が出されました。現在の生物学では、どのように定義されているのでしょうか?
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小佐野正樹さんの論文にあった、多くの教科書に載っている「試験管をあたためたとき、石けん水の膜がふくらんだのはなぜでしょう」という課題の考察は「さすが」と評価していました。実験について掃部さんは、「試験管を逆さにすれば『空気が軽くなって…』という意見は出ないのでは」と述べました。町田さんから「パイプの両端に膜を張り、水平に置くといいのではないか」と意見が出されると、「逆さにしただけでは、『膜の重さでふくらむ』という意見が出てくるかもしれない。水平の方がいい」とのことでした。
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鷹取さんは、「高鷹敦さんの論文の後半部分、生物学に関する主張は大切。しかし、生物そのものだけでなく、そのまわりの土にも目を向けさせたい。栽培でも、土づくりとか肥料が必要だとか、水をやりすぎても行けないとか」。さらに、「“今月の授業”で天気の授業が掲載されているが、8月号の特集が気象学習だった。誌面の組み方が違うのではないか。気象学習のはずが、天気のみ。実験室的な実験だけで終わっている。8月号も“天気図が読めるところまで”などの提案がない」と指摘されました。阿久津さんは、「編集部としてもわかってはいるけれども、そうしないと若い人が読んでくれないからではないか」と話されました。