投稿作なので一章だけ記載

■一章

キャラクタープロフィール

 今日も青梅レトロ看板商店街を通り赤塚不二夫記念館の前を通り過ぎる時に逆立ちしているパパの像にタッチして「これでいいのだ!」と言いながら登校する俺、白川譲治(しらかわじょうじ)がこの都立青梅第一高等学校に入学して、二週間が経った時の事俺は、右目が炎症を起こし眼科に行き薬を塗ってもらい、眼帯をして貰ったのがこの学校生活を大きく変える事になるのだった。

 入学して間もないのに眼帯とは、折角学校に慣れてきたのについてない俺、教室に入ったら絶対に注目される事は間違いない! しかし、眼帯とってノックアウト負けしたボクサーみたいな瞼の腫れをさらすよりは、よっぽどマシだ。

 そして、教室に入るとチラチラと俺に目線を向ける生徒が数人いるが俺も逆の立場ならチラチラと見ると思うから、まあ仕方ない事だが、一人の生徒が俺にニヤつき顔で近寄ってきた。

「よう、どうしたんだよ、その眼帯!」

 ニヤつきながら話しかけてきたこの若干小太りの男子生徒は、俺の腐れ縁で小中学校からの悪友の青木庄之助(あおきしょうのすけ)である。

「なに、ちょっと目が腫れちゃってさ〜」

「なんだよ! だったら、うちのかーちゃんが居る病院に来れば良かったのに!」

「あそこは、胃腸科だろーが、ボケ!」

 いつもの様にボケとツッコミを交わす俺たち、周りは今の漫才で笑っているだろうと周りを見渡したが、だーれも笑っていない! むしろ春から氷河期になった様な空気を出した俺たちに怒っている感じだ。

 青木もこの空気に気づき、自分の席に逃げるように戻っていた。無理も無い、あのスベリ方は一流芸人でも誤魔化しきれないのであろう、しかし、生徒が次々に登校してくるにしたがって、いつの間にか、いつもの穏やかな教室に戻っていった。

 そして、ホームルームが始まった。

「はい、おはようー!」

 といつもの様に語尾をやたら延ばして喋る、国語担当で担任の野島先生が元気よく入って来た。

「はーい、今日も元気に頑張りましょうー!」

 野島先生も元気なもんだ、四十歳超えているのに、自宅から自転車で来ているらしいしかも、一時間以上もかけて八王子から、健康好きでエコ人間だから教師の鏡みたいな人だが、話が長いのが欠点だ。

 かくして、今日も一日平凡な学校生活が始まった。国語は、相変わらず語尾が長い、今日は四文字熟語だ。

「はい、十人十色〜っ! 危機一髪〜っ! 呉越同舟〜っ!」

 とデカイ声で教えてくれる野島先生は、意外とインパクトがあるので覚えやすいのだった。

 しばらく四文字熟語の怒鳴りが終わると先生は、四文字熟語のプリントを配って各自そこに載っている四文字熟語を全て覚えろと言った、野島先生のデカイ声と語尾が伸びる言い方のおかげで俺は無意識のうちに半分ぐらい覚えてしまったらしい、他の生徒も俺と同じ感覚で覚えているのかな? と思っていたら隣のB組から、野島先生に負けないぐらいデカイ声が聞こえていた。

 声の正体は、保健体育の宿輪先生だ! しかも内容が途轍もなくヤバイ!

「え〜っと、勃起が〜!」

 俺は、思わず顔をニヤつかせてしまった。

 いくら保健の人体の構造の授業とはいえ、隣のクラスまで聞こえるほどの大きな声で「勃起」と言う単語を叫ぶな! と思ったのは俺だけではないはずだ!

 女子生徒にもおもいっきり聞こえたはずだ、明日の保健の授業が楽しみだよ。

 そんなわけで、今日も一日グダグダ過ぎていった。

「白川! 帰ろうぜ〜」

 と青木が俺の方に来た。

「俺今日は、サークル館に行って部活を色々と見に行くんだけど青木も行かないか?」

 今日から、全ての部活動は、入部と見学できる期間なのである。

「俺は、部活に入らないって言っただろ〜」

 と青木は、眉毛をへの字にして首を振りながら言う。

「一様、なんかの部活には、入った方がいいぜ!」

「いいや、俺は帰ってゲームをやるんだ!」

 相変わらず変に頑固者で偏見者の青木である。

「わかったよ、じゃあ俺一人で行くわ〜」

「おう、じゃあな〜」

 今日は、青木と帰らずにサークル館に向かった、手にはこの前オリエンテーションで貰った文化系の部活動紹介プリントを持ちながら廊下を歩いていると向かいから一人の女子生徒が歩いてきた、良く見ると右目に黒いドクロマークの眼帯をしていた。

 そして、いきなり何かに気が付いて俺の方に走って向かって来た!

「あなた、新入生でしょ?」

 と俺にハイテンションで話しかけて来た。

「は、はい・・・そうですけど」

 なんのこっちゃ分からず、とっさに返事をする俺。

「だったら来なさい! うちの研究会に入るべきだわ!」

 と俺の腕を掴みドカドカ歩き出した。俺は、なんの勧誘だか分からないがこの生徒は結構可愛い顔立していて、髪型も俺好みのショートヘアーだったから、まあ〜いいか! とりあえず見学だけならと、安易な感じで部室に招かれた。

「みんなー! 新入生が我が研究会に来たわよ!」

 ドアを勢いよく開ける女子生徒、その部室に放り込まれ目の前の光景に俺は、仰天した!

 そこに居る全員が目に眼帯をしている! しかも全員が女子生徒だ!

 俺は、しばらく呆然としていた、先ず目に入ったのは、自分の席でモデルガン? の銃の手入れをしている長身でポニーテールの女子生徒で右目には、ナチスドイツのクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐がしている様な黒い眼帯をしていた。

 その後には、饅頭をパクパクと幸せそうに食べているお団子頭の小柄で可愛い生徒が居た、右目には、香港映画の盗賊とかが着けてそうな薄い茶色革の眼帯をしていた。

 その右隣には、分厚い本が机の上に五冊ほど積み上げている横でひたすら読書をしている女子生徒の右目には、俺と同じ医療用の眼帯をしている、良く見ると左腕にも包帯が巻かれている、この包帯少女は綺麗なストレートヘアーをしていた。

 その後には、派手なフリフリのフリルが付いたロリータ服を着ている巨乳の女子生徒は、左目にこれまた、フリフリ花柄の可愛らしい眼帯をしている、しかも髪型がお嬢様カールヘアーだ。

「あの、ここはコスプレ研究会ですか?」

 と俺は、海賊眼帯の女子生徒に恐る恐る聞いた。

「なに言ってのよ! 私たちは、眼帯研究会よ!」

 と俺に人差し指向けて叫んだこの海賊眼帯娘の顔は自信に満ちたドヤ顔をしていた。

「眼帯研究会?」

「そうよ! この場所に居る皆は全員眼帯が好きでこの研究会に入ったのよ!」

「・・・そうなんですか」

「だから、彼方もこの研究会に入るべきなのよ!」

 俺は、別に眼帯が好きでしている訳ではない、瞼が腫れていてノックアウト負けのボクサー顔を晒したくないからだ!

「いや、僕はただ目が炎症して瞼が腫れているから、眼帯をしているだけなんですよ」

「それも運命なのよ! たまたまでも眼帯を着けている時に私と出会うなんて、これは偶然ではなくて、必然だったのよ! だから彼方は、生まれた時から我が眼帯研究会に入る運命だったのよ!」

 またしても、ドヤ顔で俺に語る海賊眼帯娘。

 しかし、なんともまあ強引な理由で俺を勧誘しようとするんだか分からんが、本当に眼帯を研究している部活動とは、到底思えない感じだ。

「入りなよ〜楽しいよ!」

 と饅頭を食べた、お団子頭の女子生徒が可愛い笑顔で俺に語りかけてきた。

「う〜ん」

 とりあえず俺は、考えているフリをしたが、マジで考え始めた。俺は、兎に角どっかしらの文化系の部に入って、まったり出来る感じの所を探していたので、ここ研究会でも良いかも知れないと思い始めた、結構楽そうだし、自由がありそうだし、女の子ばっかりで、それはそれで面白いかもしれないな〜と安易な気持ちで返事をした。

「わかりました、入りますよ」

「当たり前じゃないの! 断る理由が無いわよ!」

 本来なら、あんな理由では断る方が当たり前だ! 何を勘違いしているのだ!

「とりあいず、自己紹介するわね!」

 海賊眼帯娘が先陣を切って俺の目の前で、右手を自分の胸に当てて紹介し始めた。

「私は、二年F組の赤坂ひろみ! この眼帯研究会の創作者で部長よ! そうね〜私の事は、ひろみ先輩と言って頂戴!」

 と元気よく、ハキハキした口調で自己紹介する赤坂ひろみ。

 この人が、この研究会を作ったのか! だから強引に新入生をどうしても入れたかったのかな? と一瞬先ほどの強引な理由の訳がこの研究会のためなんだ、と思うと、結構責任感が有る人だと確認した。

「同じく、二年F組所属の蒼井レイカ! よろしく」

 と立ち上がり軍人の喋り方みたいに自己紹介したのは、ナチスドイツのクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐の眼帯をしいてた、あの人だ。しかし、長身だ! 170センチの俺と身長ほとんど同じぐらいだ! いやむしろ俺のほうが若干低いかもしれん!

「ボクは、黄龍朋子(こうりゅうともこ)だよ! よろしくね!」

 とまた眩しい位の可愛い笑顔で自己紹介してくれたあのお団子頭のあの子は、黄龍朋子って言うのか〜今の所一番好印象なのは、ダントツで黄龍先輩だ!

 そこに、ゆっくりと立ち上がったのは、あの眼帯包帯少女だ。

「二年D組の緑川香織(みどりかわかおり)よろしく・・・」

 まるで幽霊のような小声で自己紹介をしてくれた、緑川先輩、この人は本当に眼帯が好きで、この研究会に入ったのかな? と思った。

「わたくし、早乙女桃花(さおとめももか)と申します、今後ともよろしくおねがいします」

 と立ち上がって中世ヨーロッパの貴族のような立ち居振る舞いでお辞儀した。

「ああ、こちらこそ」

 とついこちらその丁寧なお辞儀につられて頭を下げてしまった。

「今度は、彼方の番よ!」

 ひろみ先輩が俺を指差す。

「俺?」

「そうよ! あんた以外誰が居るのよ!」

 そういえば、まだ名前すら名乗っていなかった。

「俺は、一年A組の白川譲治です、よろしくお願いします」

「白川ジョージ?」

 ひろみ先輩が俺の名前に何故か食いついた。

「そうですけど、何か?」

「ジョージって面白名前ね!」

「まあ、今まで同じ名前の人には会った事ありませんが」

「よし! 今日から彼方のあだ名は、ジョーよ!」

 またしても、俺をドヤ顔で指差す! しかもジョーってどっかのボクシング漫画の主人公と同じではないか! もしくは、どっかの格闘ゲームのムエタイ使いのキャラと同じだ! これは、ひろみ先輩の趣味なのか?

「ジョー君、よろしくね!」

 黄龍先輩も俺をジョーと呼ぶとは、しかし、可愛い笑顔で言われたら、そんなに悪い気もしないかな? と思っていたらひろみ先輩が、

「ジョー! 彼方の特技は何?」

「特技? そうですね〜雑学とかうんちくは、結構知ってますね」

 そう俺は、昔から社会とか得意だったし、親父の影響でB級映画も沢山見ているし、クイズ番組も情報番組も毎回見ている。

「へぇ〜見かけによらず、理系なのね〜てっきり、脳筋だと思っていたわ!」

 あれ、なんかムカつくな〜。

「じゃあ、ひろみ先輩は、何が得意なんですか!」

「私?」

 不意を付いた質問に目を丸くしたと思ったら、段々ニヤ付いた表情に、

「よくぞ聞いてくれました!」

 と握り拳を掲げて、すっと椅子の上に乗っかって、

「私は、トレジャーハンターになって世界の海を制覇するのよ!」

 俺は、何が得意か? と言ったはずだ! 何故に将来の夢を語った!

 まあ、それを聞いても有りがちな感じの人だから別に驚かなかった。

「そうですか〜」

 と俺は軽く流す。

「もしくは、特撮映画監督になるわ!」

 ひろみ先輩の目の輝きは、マジだった。しかし、特撮って事は戦隊物とかのか?

 まあ、どっちにしろ、スットンキョーな事を言っているので間に受ける事もないな!

「なれると良いですね〜」

 まったくやる気の無い声で返事をする俺。

「何よ! その投げやりな言い方は! 私は大マジよ!」

 ひろみ先輩は両拳を上下に振って怒っている。

「じゃあ〜、僕が出す特撮クイズに余裕に答えられますか?」

「勿論よ!」

 早ッ! 俺の問いに素早く答えるひろみ先輩。

 まあ、俺も雑学やうんちくが得意だし、特撮も結構見てきたので、それなりに、マニアックなネタとかも知っているので、ひろみ先輩がどれだけ知識があるか調べてみる事

にした。

「じゃあ〜、スーパー戦隊シリーズでタイトルの名前にマンとジャーが付かない戦隊を全て言ってみて下さい!」

 まあ、最初はこんな感じの問題で良いだろう。

「良いわよ! 先ずジャッカー電撃隊、バトルフィーバーJ、太陽戦隊サンバルカン、

大戦隊ゴーグルファイブ、救急戦隊ゴーゴーファイブでしょ!」

 またしても、素早く答えやがった! しかもドヤ顔で、それに全部合っている。

「せ、正解!」

 ちょっと冷や汗を流しそうな顔で正解をコールした俺。

「こんなの、常識よ!」

 腕組みをして余裕の表情のひろみ先輩。

 たしかに素早く答えたのは、凄いが、まだまだマイナーなネタは、あるぞ!

「じゃあ〜スーパー戦隊シリーズで二番目放送回数が多いのは、何でしょう!」

 この問題のミソは、一番ではなく二番目と言う所だ、一番長いのは、言わずと知れた最初の秘密戦隊ゴレンジャーだ! しかし二番目となると中々難しいぞ!

「電撃戦隊チェンジマンでしょ〜」

 何! なぜ知ってやがる! しかも即答だし!

「知っていたんですね」

「当たり前でしょ! 特撮ヒーローなら完璧よ!」

 なら、そのドヤ顔を粉砕する、問題を出してやる!

「じゃあ、初代ゴジラの身長は、何メートルでしょう!」

「えっ!」

 どうだ、ヒーロー物じゃない特撮の知識は、流石に無いだろう!

「ゴジラか・・・うーん・・・」

 やはり、余りにも古い特撮映画の知識は持ち合わせていない様だな。

「百メートルかな?」

 と手を顎の所に添えて首を傾げながら答えるひろみ先輩。

「ハズレですよ! 正解は五十メートルでした!」

「えっ! そんなに低いんだ!」

「そうなんですよ、段々大きい設定になって行ったみたいですよ」

「ジョーあなた、中々やるわね!」

 と俺を指差しながら褒めるひろみ先輩。

「どうもです」

「ジョーは、今日からこの研究会のうんちく係りに任命するわ!」

 と言うとひろみ先輩は、俺に近づき鼻頭までわずか五センチという所まで人差し指を向ける。

「わ、分かりました」

 何が分かったのか分からんが、ビビって返事をしてしまった。

「それじゃー、ジョーの席は一番前の私の隣ね!」

「何でですか?」

「何かあったら直ぐに私の応用に答えるようする為には、そこが一番良いのよ!」

 とまたドヤ顔で俺を指差す。

「でも今そこの席は、蒼井先輩じゃないですか!」

 と俺は蒼井先輩を指差す。

「ごめん、レイカ後にずれてくれない? 朋子ちゃんも!」

「分かった」

「うん、良いよ〜」

 すると二人とも、文句も言わずに席をずらしてくれた。

 結局この通常の教室半分位しかない部室での配置は、正面のミニ黒板から窓際の一番前が俺で後ろが蒼井先輩、その後ろが黄龍先輩そして、廊下側の一番前の席がひろみ先輩で後ろが緑川先輩、その後ろが早乙女先輩である、空きの机一式は後ろの隅にまだ、二つほど残っているが、それは、今後使うのかな? まさか俺以外の一年生が入る事はたぶんないであろう。

「さあ、席について良いわよ!」

「はい・・・」

 席についても何をすればいいんだ? うんちく係ってなんだよ!

 すると、ひろみ先輩は、自分の鞄からケータイを出して、なんやら見ている様子だ、メールチェックでもしているのか? と思った矢先に、後ろの蒼井先輩が俺の方をつんつんした。

「ん? なんですか?」

 俺は、後ろを振り向いた。

「ジョーは、銃に詳しいか?」

 と意外と優しい口調で話しかけてきた。

「銃ですか? そうですね、少しは知識はありますけど、そこまで詳しくないと思いますけど」

 そう、答えると蒼井先輩は、手入れしていたモデルガンを俺に見せた。

「これ、知っているか?」

 これは、たしかべレッタ系の銃だとは認識したが詳しくは分からなかったので、とりあえず普通に知っている事だけ答えよう。

「ベレッタ系ですね」

「ん! 知ってんじゃん!」

 といきなりテンションが上がった! いったい何だ?

「じゃあ! これはどうだ!」

 今度は、鞄からシルバー色のモデルガンを取り出して俺に見せた。

「これは・・・」

 見覚えがある銃だ、たしかなんかのゲームで出てきた様な気がする銃だ! たしか、

「デザートイーグルでしたっけ?」

 うろ覚えながら答えた。

「そうだよ! 結構知っているじゃないか!」

 またしても、ハイテンションになる蒼井先輩! この人は銃の話になるとテンションが上がる人みたいだ、だって今も二つの銃を俺の目の前でグルグル指回ししている。

「これ良いだろう!」

 と俺にデザートイーグルを手渡す、持つと思ったよりも重い! よくこんなのを上手く回せるな! 寺門ジモンも真っ青だぞ!

「ありがとうございます」

 そっとモデルガンを机上に置くと、

「楽しそうだね! 私ともお話しようよ!」

 蒼井先輩の後ろからひょこっと顔を出して可愛い笑顔で黄龍先輩が俺に話しかけてきたのであった。

「は、はい!」

 俺は、席を立ち黄龍先輩の席の横に立つと、

「これあげる!」

 と饅頭袋から一つ取り出して俺に差し出した。

「あ、ありがとうございます!」

 受け取った饅頭は、少しだけ生ぬるい暖かさだった。

 俺は、一口パクッと食べたら肉汁が口の中に広がった、どうやら肉まんみたいだ。

「どう、おいしい?」 

「はい、結構美味いですね!」

 俺は、肉まんは、そんなに好きではなかったが、食べるのは、久々だったので意外と

美味かったので、たまに食べると美味い物だと思った。

「でしょ! 商店街の肉屋さんで買ったんだよ」

 とこれまた顔と可愛い口調で俺に話しかける黄龍先輩。

「そうなんですか、肉屋で売っているんですね!」

「あと、コロッケも売っているんだよ」

「肉屋だと、よくコロッケ売ってますよね、そのコロッケで肉屋の肉が良いか悪いか分

かるって言いますよね」

「そうだよね! 鹿島肉屋さんは、どれも美味しいよ!」

 ん? 鹿島肉屋それは聞いた事あるかもしれない! あの肉屋かな? 赤塚記念館の近くに肉屋と魚屋が在ったから、そこかも知れないな、帰りにでも見てみるかな。

 その時ふと、黄龍先輩の鞄に目をやると、ブルース・リーとジャッキー・チェンとジェット・リーの缶バッチを付けているのを発見した!

「あ、これ何処で買ったんですか?」

 つい、香港アクションスター好きの俺としては、缶バッチの事を聞いてしまった。

「あ、これ? これは、香港で買ったんだよ」

 何! 本場お香港で買った物! 俺は海外にすら行った事無いから買えないな。

「香港に行った事あるんですね」

「うん、親戚の叔父さんが香港に住んでいるから」

 なるほど、だから行き来しているのか、今度行った時に頼んじゃおうかな。

「ジョー君は、アクション映画好きなの?」

「勿論ですとも! 特に八十年代の映画が好きです!」

 俺は、昔からB級映画好きなので知られている、勿論香港映画もかなり好きだ。

「そうなんだ! 誰が一番好き?」

 と可愛い好奇心の目で聞いてくる。

「そうですね、やっぱりジェット・リーですね!」

「やっぱり! 私もジェットが一番だよ!」

 満面の笑顔で答える黄龍先輩。

「ジェットは、少林寺で凄いアクションしてましたから好きなんですよ!」

 俺は、良く体育館のマットの上で色々とジェットの真似をして遊んでいた。

「私はね、ウォン・フェイフォン役をやっているシリーズが好きだよ!」

「ああ、確かにあのシリーズも良いですね! 僕は天地大乱編が一番ですね」

「やっぱり、みんな天地大乱が好きなんだね! 私も一番好きだよ」

 俺も聞く人皆天地大乱編が一番人気だ、やっぱりアクションが一番多いし、無影脚も使っているからかな?

 その時、黄龍先輩は席を立った。

「ちょっとごめんね、トイレ行って来るね」と忙しなく部室を出って行った。

 テンション上がり過ぎてオシッコを我慢していたのかな? と思っていると、目を泳がしていたら、緑川先輩の机に目が行って机の上の四冊ほど積んである分厚い本のタイトルを目にして俺は、驚いた!

 先ず一冊目が、「ダイナマイトな四国の人々」!

 どんな内容の本なんだ! 面白いのか? 四国の人の話か? ちょっと読んで見たい気がするぞ!

 二冊目が、「二人のアフロ」!

 なんだ! 二人のアフロって! 小説なのか? それともアフロの人の自伝なのか? 

それとも、ドキュメンタリーなのか? 興味あるぞ!

 三冊目が、「メスゴリラ並の性欲」!

 これは、どんなジャンルの本なんだ! 女性の性欲のアダルトな本なのか? それと心理の本なのか? とにかくタイトルだけで読みたくなる本だ!

 四冊目が、「ハムが飛ぶように売れた!」!

 ハムって、どこかの精肉会社の社長が書いた本なのか? さっきとはえらい違いがある本だな!

 五冊目が今緑川先輩が読んでいる、「ネアンデルタール人の真実」! 

 ネアンデルタール人って原始人だよな? これは、歴史真相本としては、普通の本だと思うが、いったいどんなジャンルが好きなんだろう? 何でも有りな人なのかな?

 俺は本に目を取れていた時に緑川先輩が、こっちを見た。

「何?」

 静かに無表情で口を動かした。

「いや、面白いタイトルの本がいっぱいあって、ちょっと気になったので」

「そう、読む? かしてあげてもいいけど」

 とまたしても、喜怒哀楽がまったくない顔で俺に、話しかけてきた。

「マジですか! そうですね〜『ダイナマイトな四国の人々』を借りて良いですか?」

「うん」と静かに頷く緑川先輩。

「ありがとうございます」 

俺は、緑川先輩の好意に断れずにいかにも興味ありますよ的な感じで、本を借りてしまった。

 しかし、本なんて最近読んでいないからな、読むのに時間が掛かりそうだ。

「ジョー君、紅茶は、いかが?」

 いきなりお上品な声が後ろから聞こえてきた。振り向くと早乙女先輩がいつの間にかティーカップに紅茶を注いでる! しかも魔法瓶から!

「紅茶ですか、そうですね頂きます」

 と言ってみた物の左手には、食べかけの肉まん、右手には本を持っているから頂けないので本を自分の机に置き、右手で貰うことにした。

「頂きます」

 ゴクリと一口飲みほすと、そこらの紅茶とは全然ちがう味の深みがする!

「美味いですね! 何処のメーカーですか?」

 とつい聞いてしまった俺。

「これは、イギリス皇室御用達の紅茶ですわ」

 と微笑みながら俺に答えた。

「皇室・・・凄いですね」

 本場イギリスからかよ! しかも皇室ってかなり高いんではなのか! 思わず俺は、紅茶に目をやる、お前いくらするんだ?

「お父様が、仕事でイギリスに行くのでお土産に良く買ってくるのですよ」

 またしても、身内が海外に縁のある人か、お金持ちなのかな? ならこんな普通の高校に居ないよな? あいさつが「ごきげんよう」って言うお嬢様学校にいてもおかしくない感じの人だ。

 俺は、自分の席に着き肉まんを食べながら紅茶を飲んだ。ダブルで美味い!

 飲み終わると、お礼を言いながらティーカップを早乙女先輩に返し元に席にもどり、緑川先輩の本でも読もうとしたら、黄龍先輩がトイレから戻ってきた。

「ああ〜すっきりした!」

 気分爽快な表情で戻ってきた。

「朋子、遅かったわね、便秘?」

 と品の無い下品な事を平気で言うひろみ先輩。

「そうそう、なかなか出なくて〜」

 頬を赤めながら言う黄龍先輩。

 ってオイ! 普通に答えるのか黄龍先輩! 此処は女子ばっかりでも男子の俺もい居る

事を忘れてないか! 

「やっぱり、肉まんばかり食べてるからよ!」

 と左肘を机に付きながら言うひろみ先輩。

「えへへ」

 と右手を頭の後ろに回し可愛い照れ笑いをする黄龍先輩。

「そうえば、明日はひろみの番だろう! 何をするだ?」

 蒼井先輩が、モデルガンを回しながらひろみ先輩に問う。

 番? 俺は、なんのこっちゃ? 状態だ。

「そうね、明日は、何をしようかしら」

 腕を組みながら考え込むひろみ先輩、いったい何なんだ?

「あの、番ってなんですか?」

 恐る恐るひろみ先輩に聞いてみた。

「ん? ああ、私達眼帯研究会は、放課後の部活動で何をするか一日ごと順番で決めているのよ!」

 なんだと! 要約すると日によってする事はその番になった人が自由に決められるらしい! そして明日が、ひろみ先輩の順番らしい。

「そうね、明日は映画鑑賞にしましょう! 勿論特撮よ!」

 手をポンと叩きドヤ顔で皆に伝えた後に、俺を指差すひろみ先輩。

「そうね、なんか適当に今日の帰りDVDでも借りてくるわね」

 本当に思いつきで、言ったんだな、見る映画のタイトルすら考えていないようだ。

 しかし、順番って事は、俺にもいずれ回ってくるって事だよな? 俺の時はどうしようかな?

「じゃあーそう言う事だから今日は、解散!」

「え!」

 余りにも唐突で俺は、思わず声を出してしまった。

「じゃあね、ジョー明日も来なさいよ! あなたは正式な部員なんだかね!」

 またしても俺を指差すひろみ先輩。

「はい・・・」

「じゃあね〜」

 髪に手をやりながら帰って行くひろみ先輩の後姿は、肩から風を切ったような歩きかであった。

「さて、私も帰る準備しようかな」

 とモデルガンを鞄にしまう蒼井先輩、他の皆もなんやら帰り仕度しているので俺も、緑川先輩から借りた、本を鞄にしまって、部室を出る事にした。

「では、お先に失礼します」

「おう、じゃあな」

「バイバ〜イ」

「さようなら・・・」

「ごきげんよう」

 見事にみんな挨拶が違う! 十人十色とはこの事を言うのか! 野島先生理解しましたよ!

 そんな事を思いながら、下駄箱で履き替えて、校庭で野球部のノックとサッカー部のミニゲームを見ながら学校を出た。

 帰りも青梅駅前のレトロ看板商店街を通りいつもの様に赤塚不二夫記念館の入り口の横にあるパパの像をタッチして家に帰った。