理論

はじめに
 音声除去装置とは、とても大げさな名称です。自分の中ではカラオケマシーンと言っています。
 何故カラオケマシーンなのか。それはこの装置に入力した音源から、音声(ボーカル)だけを消し、あたかもカラオケ
のようになるからです。この装置を作ったのは2年前で、電子回路にまだまだ不慣れだった私にも簡単に作れるもので
した。ここでは、音声除去装置の理論と工作方法についての情報を公開します。

理論
 音声除去装置は少しの素子とたった一つのICで出来ます。この装置を工学的に言うと差動増幅回路といいます。
差動増幅回路は入力した信号を引き算し増幅する回路です。主体になっているICはオペアンプ(演算増幅器)です。
回路図を次に示します。

図1 差動増幅回路

 入力した2つの信号VinとVinの差はRとRの比の倍数によって増幅されます。従ってVoutは次のようになります。

 この差動増幅回路は入力した2つの信号それぞれに含まれる同じ信号を引き算してやることにより、出力にはその同
じ信号がなくなってしまうのです。
 このような効果から、入力配線によく入り込んでしまうノイズ(コモンモードノイズ)を消去する回路としてよく使われま
す。
 この理論を使い音声除去装置を作ることが出来ます。
 入力する音源はCDやMDから取り入れます。取り入れられた信号はVin1・Vin2(right・left)に分けられます。分けられ
たオーディオ信号からなぜ音声(ボーカル)の信号だけなくなるのかというと、CDの曲をレコーディングする時ミキサー
は伴奏をright・reftにそれぞれ収録します。ボーカルはright・reftのちょうど真ん中センターに収録します。このようにし
て収録されたCDの曲を音声除去装置に通すと次の図のようになります。

図2 音声除去装置のしくみ

 しかし、完全に消える曲は最近は少なくなってきました。最近のアーティストはレコーディングの際エコーなどの特殊効
果を使います。特殊効果は物によって音声除去装置を使ってはボーカルの声を消す事を妨げます。例えばエコーを使
った曲を音声除去装置に通すと次の図のようになります。

図3 エコー信号の入った曲の除去
 
 この図を見て解る通り、エコーの入った曲はボーカルがright・leftそれぞれに少し混じってしまいます。このような曲を
音声除去装置に通すとエコー部分の声が残ってしまうのです。