図1.2の内部ブロック図を見てわかる通り,H8/3664Fにはさまざまな周辺機能がある。これらの機能を表1.1に示す。
汎用入出力ポートは数ビットのデータを並列に入出力するためのものである。そのため,パラレルポートとも呼ばれ
る。H8/3664Fの入出力ポートには,表1.2のような5つの入出力ポートと1つの入力ポートがあるが,すべて他の周辺機 能と入出力端子を兼ねている。これらの端子はリセット時に入力ポートとして設定されるが,レジスタの設定により他の 機能へと変化する事がある。
入出力ポートにはその他の周辺機能の制御データの入出力は,メモリ上の内蔵I/Oレジスタで行う。ポート1を例にと
ると,表1.3のようなレジスタがあり,他のポートにも同じ働きをするレジスタである。
以下ポート1を例に説明する。
(1) PMR(ポートモードレジスタ)
端子を入出力ポートとして使うか,他の機能として使うかを選択するためのレジスタである。図1.8にPMRの各ビットの
機能を示す。 ![]()
(2) PCR(ポートコントロールレジスタ)
PCRは,端子を入力として使うか,出力として使うかをビットごとに設定するレジスタである。ビットを0にするとその端
子は入力端子となり,1にすると出力端子となる。なお,PCRは書き込み専用である。図1.9にPCRの各ビットの機能を 示す。 ![]()
(3) PDR(ポートデータレジスタ)
このレジスタにデータを書き込むと,そのデータが保持され端子に出力される。図1.10にPDRの各ビットの機能を示
す。 ![]()
(4) PUCR(ポートプルアップコントロールレジスタ)
各端子に内蔵したプルアップMOSFETをビットごとにON/OFFするレジスタ。PUCR1を1にセットすると,プルアップ
MOSFETをONにする。
タイマには,時間の計測,外部で起こったイベントのカウント,パルス信号の出力などの機能がある。H8/3664Fには
特別な機能をもったタイマA,タイマV,タイマWがある。以下に各タイマの説明を述べる。
(1) タイマA
タイマA はインターバルタイマ/時計用タイムベース機能を内蔵した8 ビットのタイマれある。32.768kHz の水晶発振
器を接続すると時計用タイムベースとして使用できる。以下にタイマAの特長を示す。
・タイマAはインターバルタイマまたは時計用タイムベースとして設定可能である。
・タイマのオーバフローで割り込みを発生する。
・TMOW端子から分周クロックを出力可能32.768kHzを32,16,8,4分周したクロック(1kHz,2kHz,4kHz,8kHz),または
システムクロックを32,16,8,4分周したクロックを出力可能である。
・インターバルタイマでは,8種類の内部クロック(φ/8192,φ/4096,φ/2048,φ/512,φ/256,φ/128,φ/32,φ/
8)を選択可能である。
・時計用タイムベースでは,4種類のオーバフロー周期(1s,0.5s,0.25s,31.25ms)を選択可能(32.768kHz水晶発振器
使用時)である。
(2) タイマV
タイマVは8 ビットのカウンタをベースにした8 ビットタイマである。外部のイベントのカウントが可能なほか,2 本のレジ
スタとのコンペアマッチ信号によりカウンタのリセット,割り込み要求,任意のデューティ比のパルス出力などが可能で ある。また、TRGV 端子からのトリガ入力によるカウント開始機能を備えているので,トリガ入力から任意時間経過後に トリガと同期したパルスの出力制御が可能である。タイマV の特長を以下に示す。
・7種類のクロックを選択可能。
・6種類の内部クロック(φ/128,φ/64,φ/32,φ/16,φ/8,φ/4)と外部クロックのうちから選択可能。
・カウンタのクリア指定が可能コンペアマッチA,コンペアマッチB,または外部リセット信号のうちから選択可能。カウン
ト停止機能を選択しているときは,カウンタクリアと同時にカウントが停止。
・2つのコンペアマッチ信号の組合せでタイマ出力を制御独立に動作可能な2つのコンペアマッチ信号の組合せによっ
て、任意のデューティのパルス出力やPWM出力など種々の応用が可能。
・割り込み要因コンペアマッチA,コンペアマッチB,タイマオーバフローの3種類がある。
・トリガ入力によるカウント開始機能TRGV端子からのトリガ入力によるカウント開始機能を備えている。TRGV端子から
のトリガ入力は立ち上がりエッジ,立ち下がりエッジ,両エッジからの選択が可能。
(3) タイマW
タイマW は,アウトプットコンペア機能,インプットキャプチャ機能を内蔵した16 ビットのタイマである。外部イベントの
カウントが可能なほか,タイマカウンタと4 本のジェネラルレジスタのコンペアマッチ信号による任意のデューティ比のパ ルス出力など,多機能タイマとして種々の応用が可能である。以下にタイマWの特長を示す。
・カウンタ入力クロック:5種類
4種類の内部クロック(φ,φ/2,φ/4,φ/8)または外部クロック(外部イベントカウント)。
・最大4本のパルス入出力処理が可能。
・ジェネラルレジスタ:4本
独立にアウトプットコンペアレジスタまたはインプットキャプチャレジスタとして設定可能。さらに,アウトプットコンペア/
インプットキャプチャレジスタのバッファレジスタとしても使用可能。
・タイマ入出力機能
アウトプットコンペア :0出力/1出力/トグル出力が可能。
インプットキャプチャ :立ち上がりエッジ/立ち下がりエッジ/両エッジを検出。
カウンタクリア機能 :カウンタの周期設定が可能。
PWMモード :最大3相のPWM出力が可能。
・タイマ出力初期値を任意に設定可能。
・5種類の割り込み要因
コンペアマッチ/インプットキャプチャ兼用割り込み×4要因,オーバフロー割り込み
SCI3(シリアルコミュニケーションインタフェース3)は、調歩同期式とクロック同期式の2 方式のシリアルデータ通信が
可能である。調歩同期方式ではUniversal Asynchronous Receiver/Transmitter(UART)や、クロック同期式では Asynchronous Communication Interface Adapter(ACIA)などの標準の調歩同期式通信用LSI とのシリアルデータ通信 ができる。また、調歩同期方式では複数のプロセッサ間のシリアルデータ通信機能(マルチプロセッサ通信機能)を備 えている。
A/D変換器は,アナログ電圧を測定し2進数に変換する。A/D変換器の入力端子に各種センサを接続することで,外
界のアナログ量をマイコンで計測する事ができる。
H8/3664F内蔵のA/D変換器は逐次比較方式によるものであり,A/D変換器の制御回路は,外部から入力されるア
ナログ電圧と,内部のD/A変換器によって作られる電圧が等しくなるように,逐次比較レジスタの値を操作するもので ある。1つの変換速度は最小4.4μs(システムクロックが16MHz時)の高速動作が可能である。
変換データを扱う時などは,16ビットのデータレジスタを読み取る。しかしH8/3664F内蔵のD/A変換器の分解能は10
ビットであり,ビット15からビット6までが変換データなので,残りは0が入る。
H8/3664FにはA/D変換器の入力端子として,AN0からAN7までの8本がある(これらの端子はポートBと兼用)。しかし,
A/D変換器は1機しか搭載されていないため,8本の入力端子をアナログマルチプレクサ回路で順次切り換え,1つず つ計測することになる。
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