決意






「超・・・兵器・・・?」

ローランドが呟く。

「そうだ。我々がこの世界に来てしまった原因はこの超兵器にある。先に言った高速巡航能力など副産物に過ぎん。その真価は別次元の世界に対する干渉能力だ。君らがこちら側へ来たようにな。今はまだ実験の域を超えてはおらず、短時間、狭い範囲のみに限られている。だが原理が確立されてしまえばすぐさま他世界へ侵攻を始めるだろう。そうなる前に止めねばならん。」

「その為にこの基地を?」

「そうだ。この基地が国家を除いては唯一超兵器に対抗している組織の拠点だ。まだ大国の連中はここの所在は知らん。知っているのは我々を擁護しているアイスランド政府のみだ。」

「アイスランドがですか?よく協力してくれましたね。」

アイスランドはその国土全てを雪が覆っているので地場産業と言えるものはない。

あるのは漁業程度だろう。

その漁業もUボートが暴れまわるようになった今では細々と行われている。

「超兵器が近海で暴れた時の事を考えたら誰でもそうするだろう。そう思わないのは当事国の連中だけだ。」

苦々しげに提督は言う。

その苦しさは、かつて忠誠を誓った国家に似通った国家が犯す暴挙に対してなのか、それとも純粋に超兵器の持つ危険性に対してなのかそれは分からない。

話が一段落したのだろう。

提督はカップに手を付け一息つく。

そしておもむろに口を開いた。

「大佐、この世界の状況については今話したとおりだ。我々は超兵器の存在を消し去るために戦っている。そこでだ・・・」

提督はクラウスの目を見据える。

「・・・我々に協力もらいたい。」

「・・・・・」

その問いにクラウスは即答することができなかった。

提督の言葉は真実味がある。

だがその要請に応じるということは独逸軍人であるということを捨てる事に他ならない。

それは自分一人で決めるわけにはできない。

「提督・・・・・、私の一存では決めかねます。御返事は艦に戻り協議の上お伝えします。」

「ああ。それはもちろんかまわん。だが、我々も余り時間はない。できる限り急いでくれ。」

「はい。」

クラウスはそう言い席を立つ。

そして提督に対して左手で仕官短剣を掲げ敬礼する。

ローランドもクラウスに習い短剣で敬礼をする。

それに対し提督は二人に対して通常の敬礼で答えた。

・・・

・・・・・

・・・・・・・

クラウスは艦に戻った後、僚艦『バルクホルン』、『ドレスデン』の艦長を『フレグランス』に呼び先ほどの話を聞かせた。

「にわかには信じられません。」

「しかしその裏づけはとれる。我々は友軍に撃たれたのだ。」

「その通りだ。だがそれだけで判断していいかどうかだ。」

そう広くはない『フレグランス』の士官室ではクラウスの話を聞いた二人の艦長が熱の篭った会話を交わしていた。

「写真や資料だけでは信用できません。やはり我々が確認して判断すべきです。」

「しかしどうやって?北海にいるならまだしも外海に出られたら我々では補足はできん。」

「いつかは寄港します。それを狙うしかないでしょう。」

「確かに寄港したならば相手は早々動けん。だが寄航中を襲うとなると駐留している艦も出てくる。我々の戦力だけでは無理だ。」

2人に仕官が互いの意見をぶつけ合う。

『バルクホルン』艦長、グスタフ中佐と『ドレスデン』艦長、レンガルド少佐の二人である。

通常、駆逐艦の艦長は大佐格に人間が就くがこの二人はそれまでの功績とクラウスの推薦により『バルクホルン』級の艦長に就任した。

普段から意見の食い違いがたびたびあったが今日は一段と衝突していた。

「少佐、君の案で行くとなると航空支援が必要となる。それぐらいのことは分かるだろう?」

「制空権の確保が必要になるというのですね?それは真っ昼間に襲撃すればそうでしょう。しかし夜襲ならばその危険はありません。」

「なるほど・・・。それでその光源の乏しい状況で目標を確認できるのかね?」

「・・・・・しかし我々だけではそうするしかないでしょう。」

レンガルドはそう言い腰を降ろした。

並みの将官なら自分の立案した作戦に指摘を受ければ快く思わない傾向が多い。

レンガルドはそのような態度は見せず非を受け入れることができる若いながらできた人間だった。

「レンガルド、こちらから出向くとなるとそれが限界だろう。だが我々の目的は超兵器の確認だ。その一点を最優先に考えろ。」

「やはり作戦中の目標を補足するのですか?」

「そうだ。だが曲がりなりにも相手は巡洋戦艦、しかも速力はこちらより速い。補足されたら逃げ切れんだろう。それでだ・・・」

クラウスが含みのある笑みを浮かべる。

「我々は傍観者の立場を取る。」

「傍観者?」

「・・・なるほど、確かにそれならこちらのリスクは少ないですな。」

グスタフはクラウスの考えを理解したようである。

要は超兵器の確認であって交戦ではない。

加えてこちらの被害は少ないほどいい。

この二点を考えるなら真っ向から相手に突っかかる必要は無い。

要は遠巻きに相手を眺めようというのがクラウスの考えだった。

だがそれには一つ問題点があった。

「しかし大佐、それには役者が必要ですがそれはどうするので?まさか此処の連中にやらせるのですか?」

「まさか。主役は例の超兵器と連合軍輸送船団だ。餌としては十分だろう。」

「しかし他の艦が出てきたらどうしますか?」

「そこは提督に頼んでみよう。欺瞞情報くらいなら流してくれるだろう。それにこの時期、あの船団が英国に向かうはずだ。」

「あの船団・・・・・。R23E船団ですか?」

クラウスは頷く。

「そうだ。あれほどの船団ならば取り逃すような真似はせんだろう。必ず超兵器も繰り出してくる筈だ。」

こうしてクラウス・ハルウィッグ大佐率いる独逸第一特務艦隊は独海軍超兵器の捕捉に向けて動き始めた。

その日は当座の指針を決めるに留まり会議は散会した。

クラウスは艦隊全乗員に事のあらましを伝え上陸許可を出した。

あらかじめカナリス提督から言われていたことでありクラウスはその配慮を有り難く受けた。

そして『フレグランス』の上陸第一陣とともにクラウスは艦を後にした。





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