吶喊



R23E船団護衛艦隊旗艦、戦艦『マレーヤ』のレーダーは接近する複数の機影を再び捉えた。

先の航空攻撃によってシーハリケーン、マートレットといった第一線機は大半が撃墜、もしくは手ひどく損傷し船団の防空力は著しく低下していた。

それほどの損害を受けたにも関わらず敵に与えた損害は皆無。

数機が銃撃を命中させたがハリケーンとは桁違いの加速力によって振り切られ、当てられたのは数発程度でありその数発の命中弾さえ航空機としては堅牢ともいえる装甲によって食い止められ撃墜できた機はなかった。

敵機が過ぎ去った船団では帰還機の修復と予備機の準備で大慌てで行ったが第一波の残存機が僅か二十機足らずであり予備機もフルマーやロックといった旧式機、もしくは問題作が多く次の空襲を艦載機が防ぎきれない事を誰もが痛感していた。

幸い艦艇には損害は出ておらず艦隊全艦の防空火力を持ってすれば十二機程度の敵機、撃墜は出来ずとも近寄らせないことはできよう、護衛艦隊首脳の大半はそう考えていた。

しかしその考えは最悪の形で裏切られる。



『マクタン』の放った第二波は、自身の高空性能を見せ付けるように高高度から侵入した第一波とは逆に、海面を舐めるような低空飛行で船団に接近している。

編成は第一派より三機減った九機編隊、三機で一つの小編隊を構成しさらに三個編隊で楔形の陣形を取っている。

両翼に位置する機体は主翼下に細長い円筒形の物体を吊り下げ中央の3機よりも更に高度を落としている。

船団まで二十kmを切った時、中央の、そして先頭を進む機は翼を振り上昇していく。

両翼の2機も先頭の機に続き上昇し、残りの六機は小隊ごとに散開し以前低空で飛行している。

上空では船団直衛機が、低空を飛ぶ六機に襲い掛かろうとするが三機の直衛機がそれを許さない。

低空を進む機に対して少しでも優位な射点に就けば銃撃を浴びせられ追い散らされる。

僅か数秒の銃撃だが一撃で翼をへし折る程の火力を秘めおり、第一波の迎撃の時もその火力と機動性、高速によって一方的に落とされたのである。

船団と攻撃隊の直衛機が熾烈なドッグファイトを繰り広げている中、攻撃隊の六機はR23E船団を目視で捉えた。

米粒ほどしかなかった艦影が次第に輪郭を帯びてくる。

同時にその艦影から見る者をある種、魅了する光景が作り出される。

艦の各処から眩い閃光を放ち灼熱の弾丸が吐き出される。

だが放たれた砲弾が炸裂したのは六機が通り過ぎた遥か後方であった。

速すぎるのである。 独空軍のスツーカなどの低速度に合わせて調定されていた信管では起爆までの時間が長すぎたのである。

幾人かの砲術長はそれに気付いたがその時には全てが遅すぎた。

猛砲火を潜り抜けた六機は護衛艦隊が形成する輪形陣外円を突破、散開しつつ各々の目標へ向かっていく。

目標を捉えた機から主翼に吊り下げられた物を順次切り離していく。

主翼を離れた筒は尾部から高温の炎と白煙を盛大に吐き出し一直線に正面にそびえ建つ鉄の塔へと向かっていく。



輪形陣内周の一隻が火を噴き黒煙が立ち上る。

戦艦『バーラム』・・・・・『マレーヤ』と同世代、第一次世界大戦時に英海軍の主力艦として戦火を潜り抜け現在もなおその地位に留まり続けている老兵である。

その老兵が艦橋から黒煙を立ち昇らせている。

六機が発射した筒、ロケット弾は発射した四割が点火不良などで海中に没したが残りの六割は正常に点火され目標に突入した。

『バーラム』を初め戦艦『ネルソン』他三隻が艦橋に被弾、要員が死傷し指揮能力を喪失した。

空母も甲板にロケット弾を打ち込まれ軽空母は火災が生じていた。

六機はロケット弾を打ちつくした後ドッグファイトを繰り広げていた三機と合流、追いすがる迎撃機を振り切り西の空に消えていった。 九機が去った後には幾筋もの黒煙を立ち上らせる船と、虚しく旋回を繰り返す航空機が残された。

だが彼らには艦載機を着艦させる時間も、指揮系統を復旧させる時間も与えられなかった。

水平線に比類なき能力を秘めた三つの艦影が現われた。



「艦影視認!外周艦、今だ動き見られず!」

「目標上空、直衛機少数。旋回しています。」

「支援航空部隊、帰投します。」

「護衛艦艇、動きはありません。」

ウイングからは報告の声が次々に上がる。

既に艦内は戦闘配置を下令、臨戦態勢を整えていた。

「見事な仕事振りですな。」

双眼鏡を覗いていたランドルトが感嘆した口ぶりで呟く。

数倍の数の戦闘機を掻い潜り、指揮系統を優先して狙い攻撃を行うなど不可能に近い。

事実、クラウスも1機でも戻れれば奇跡だと考えていた。

その奇跡にクラウス達が応える術は一つだ。

「正面、駆逐艦来ます!軽巡も続いています!」

輪形陣内周に位置していた戦艦、重巡洋艦は今だに動きを見せないが外周の駆逐艦、軽・重巡洋艦は航空隊の襲撃から立ち直り舳先をこちらへ向けて突撃して来ている。

旗艦からの指揮が無いのであろう、散開しつつ向かって来ているが足並みが乱れている。

「砲術長、目標の選定は任せる。良かれと思うところで始めてくれ。」

了解ヤ・ヴォール。大物も居るようで腕が鳴ります。」

そう言い砲術長、ミハエル・ウィンフレッドは豪胆に笑った。

「忘れるな大尉、撃沈が目標ではないぞ。」

「無論わかっております艦長。弾は節約いたします。」

ミハエルはクラウスの言わんとしている事は判っているのであろう。

クラウスはそれを確認すると増速を命じた。

機関を唸らせ三隻の駆逐艦は程なく戦闘速度に達し、迫り来る敵にこちらから向かって行く。

互いに三十ノットを超える速度であった為にすぐに距離は詰まる。

二万mを切った辺りで英駆逐艦の前部主砲が砲火を開いた。

まだ最大射程に入ったばかりだが数に物を言わせ船団に近づけさせない気であろう。

十本以上の水柱が『フレグランス』の周囲に立ち上り船体を大きく揺らす。

だがその水柱を物ともせず三隻は突き進む。

そして彼我距離が一万五千mを切ったとき、『フレグランス』、『バルクホルン』、『ドレスデン』の十五cm、十四cm砲が火を噴いた。

後部主砲の射界を取ろうと舵を切っていた英駆逐艦に砲火が集中する。

『フレグランス』に搭載された五十五口径十四cm砲は最大射程二万二千mだが、『バルクホルン』、『ドレスデン』が搭載する四十八口径十五cm砲の最大射程は一万九千m、さらに必中距離に詰めるまで耐えての発砲であった。

精密さに定評のある独逸製光学照準機からの測距を受けた主砲は確実に目標となった艦を追い込んでゆく。

目標となった不幸な英海軍所属 B級駆逐艦は『フレグランス』が三斉射目を行う前に波間に消え始めていた。

戦闘能力不能に陥った艦からは乗員がボートや救命具を海に投げ入れ退艦し始めている。

それを見たクラウスは進路を沈み行くB級の側を取るように命じた。

三隻の独逸製駆逐艦はその脇をすり抜け後方に回ろうとする駆逐艦との間にB級駆逐艦を入れる。

後方に回り三隻の退路を断つつもりが、相手は進路を変更せずに友軍艦に肉薄、同士討ちを避けて英軍は発砲することが出来ず三隻の船団への接近をみすみす許してしまう結果となった。

駆逐艦の障害を半ばやり過ごした『フレグランス』らの正面に再び艦影が立ちふさがる。

目標が輸送船であることは理解していたアリシューザ級軽巡洋艦『ガラテア』の艦長は艦自身を盾にし、無防備な左横腹をさらけ出していた。

そして三隻の駆逐艦が突破してきたのを見やると轟然と六門の十五.二cm砲を放った。



先ほどの駆逐艦とは段違いの衝撃が『フレグランス』を揺さぶる。

正面の巡洋艦が放ってきたのを皮切りに前方、右舷側から砲煙が立ち昇る。

依然、最大射程で撃ってきているようだがこれではいつ被弾してもおかしくない。

そう思った瞬間、後方から衝撃と同時に耳障りな爆発音が響いてきた。

クラウスの表情が険しくなる。

「各部状況報告!」

すぐさま報告が上がり副長が取りまとめた上でクラウスに報告が入る。

「・・・・・了解。艦長、本艦に損害はありません。」

乗艦に被害が無いことは喜ばしいが『フレグランス』に無いとすれば他の2隻に有るという事でありそれは戦隊の戦闘力の低下に繋がりかねない。

「僚艦が喰らったか・・・・・。被害確認を急がせろ。」

程なく報告が入り単縦陣二番目に位置していた『バルクホルン』が1発被弾したが火災などは発生せず戦闘に支障無しとの事だった。

こちらも撃ちかえしてはいるが火力の差は歴然、機動力の違いで沈まずにいると言ってもいい。

「・・・・・面舵四十度、速度そのまま。」

クラウスはここで初めて針路を大きく変針させる命令を下した。

『ガラテア』は失策を悟った。

位置的に反航戦の形を取られてしまったことにより、後方に射撃可能な二門の主砲しか攻撃手段がなくなってしまった。

更に速力を微速程しか出していなかったが為に迅速に態勢を整えることが出来ない。

哀れな巡洋艦の背後を通り抜けた『フレグランス』からトドメとばかりに魚雷が一本発射され『ガラテア』のスクリューを吹き飛ばし、機関室は浸水を起こし航行不能となった。

『バルクホルン』、『ドレスデン』も群がる護衛艦艇に十五cm砲弾と魚雷を浴びせ『フレグランス』に続く。



最初の砲火が開いてから二時間が経過していたが依然三隻は輪形陣の内部に突入できず行く手を阻む艦艇と同航戦を強いられていた。

空襲による被弾が及ばなかった艦は早々に反撃を開始し、被弾した艦も輪形陣外縁を突破する頃には既に戦列に復帰していたのである。

中でも重巡洋艦と防空巡洋艦の存在が頭を悩ませる。

重巡が搭載する二十.三cm砲は装填に時間が掛かるが、他の重巡と連携し間断なく砲弾を打ち込む事により装填時間の欠点を補っていた。

そして防空巡洋艦の十三.三cm弾が的確に三隻の船体を捉え被害を与えてくる。

『フレグランス』は既に魚雷を撃ち尽くし攻撃手段は主砲による砲撃しか残っておらず有効打を撃つことが出来ない。

他の二隻も同様に魚雷を撃ち尽くし防空巡に砲撃を加えているが効果は芳しくない。

ここに至るまでに各艦とも被弾しており『ドレスデン』では捨て身で突撃してきた駆逐艦の主砲が第二煙突に命中、火災が生じていた。

クラウスが面舵を命じようとしたその時、盛大な砲声が辺りに轟いた。

「取り舵一杯!衝撃に備えろ!」

次の瞬間、三隻は大波を受けたように激しく揺さぶられた。

水柱が消えた向こうには三基の巨大な主砲塔をこちらに向ける艦の姿がある。

「・・・・・『ネルソン』か。」

かの大提督ロード・ホレイショ・ネルソンの名を冠する戦艦が息を吹き返した。

一瞬、両軍ともに砲声が途絶え静寂が訪れた。

一秒とも一分とも思われたその時間にクラウスは思案し新たな命令を下した。

「全艦、取り舵三十度、針路三−一−〇。安全域まで離脱する。」

既に勝機は失せた。

このまま無理に攻撃を行えば全艦が撃沈されるのは明白だ。

クラウスは既に撤退の為に思考を切り替えていた。

だが艦橋要員の顔は暗い。

まだ輪形陣の外縁を突破しただけであったが、艦隊の指揮能力が復旧してしまえば執拗に包囲してくるだろう。

今の時点でも包囲されかけており、これ以上時間を失えば生還は絶望的となる。

絶望的な状況だがそれを顔に出すわけには行かない。

クラウスはそれまでと同様の態度で矢継ぎ早に命令を下した。

「変針後、全速で現海域を離脱。前方に火力を集中し脱出を第一義とせよ。」

進路を変更した『フレグランス』らは前回と同様に煙幕を張り全速で逃げ出すつもりであった。

それに気付いたのは艦橋横、ウイングで見張りを続けていた人間だった。

「艦長、周囲の艦に動きが・・・・・こちらから離れて行きます!」

圧倒的優勢にあった英軍としては当然、攻撃を加えてくる筈であった。

だが『ネルソン』砲火を最後に砲声は途絶えていた。

それどころか包囲しかけていた艦が機関を唸らせ『フレグランス』から次第に離れていく。

クラウス、副長のランドルトを初め艦橋にいる全員が怪訝な顔で不可解な事態に困惑していた。

だが一人だけ違う表情を浮かべている人間が居た。

「・・・・・来ました。」

声がした方を見るとエリスが確信を秘めた顔で外を睨み据えていた。

クラウスは最初何を言っているのか、と先ほどと同じように困惑した顔でエリスの後ろ姿を見ていたがすぐに思い当たりうめくようにつぶやいた。

「まさか・・・・・」

元よりその為の作戦。

その為の彼女。

故に彼女のその確信は絶対。

だがそれでもクラウスは信じられなかった。

33ノットを超える速度で巡航する巡洋戦艦の存在を。

だが彼女はその存在が現実の物だと告げる。

「・・・・・超兵器『シュトゥルムヴィント』」

ノルウェー海に暴風が吹き乱れる。





総括的あ☆と☆が☆き



えー、ようやく第6話完成の運びとなりました。

プロローグから数えて、数えて、かぞ・・・え・・・・・て・・・・・・

何年越し?

?「今日でちょうど3年です」(怒」

!?

ってキャラクターは出てきちゃいかんよ准尉。ここはそーいうサイトではないのだ。

エリス「存在が薄れてきているのです。読み手はまだしも書き手までもが忘れ掛けてましたから(晴れやかな微笑」

まーまーまー、その仮面のような微笑は俺に向けるな。物騒だからな。それに忘れてたのは存在ではないぞ。

エリス「・・・・・ではなんですか?」

キャラとしての設定

エリス「ほとんど同義ではないのですか?(底抜けな微笑」

まーまーまー(汗。だが忘れたおかげでより細かく設定を作り直したからキャラ性は上がった筈だぞ?

エリス「具体的にはどのような具合に?」

・・・・・

エリス「?」


聞きたい?


エリス「直してください。今直ぐに。」

まーまーまーまーまー(焦、ともかくその頭に突きつけた拳銃はしまってくださいまし(怯泣

エリス「・・・・・ともかく更新頻度を上げてください。それと集中してください。

なっ!?失礼な!書いてるときは集中してるぞ!それこそ4時間以上もキー打ち続けて資料探して・・・・・!

エリス「そして面白い資料を見つけるとその資料の裏づけを探すんですね。

御免なさい。






エリス「今年からは頑張ってもらえますよね?」

来年就職活動控えてるのですが・・・・・

エリス「・・・・・」



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