エッセイ / 1/365の考え方

タナバタストーリー。しょっぱなから「設定」とか言っちゃうあたりでもう。

今日は七夕である。
一年に一度、織姫と彦星が会うことを許された日。
設定としては非常にロマンチックである。


「…一年ぶりだね。髪、伸ばしたんだ?」
「うん… 去年会ったとき、長い方がいいって言ってたじゃん?」
「覚えててくれたんだ! …ありがとう」
「…あなたのこと考えない日なんてないんだから」
「あはは…(照れ笑いを浮かべながら。しかし一瞬真面目な顔で)…俺もだよ」
「…ねぇ。今年はどこ行くの?」
「去年は… そっか、カシオペア座で星みがき」
「一緒にみがいたあの星、ここからでもよく見えるよ」
「そうだな… じゃあ、今年はどうしようか?」
「まぁ、どっかでゆっくりしながら考えようよ」
「…そうするか」

彼は彼女の肩をやさしく抱きながら、ゆっくりと銀河の中に消えていった。
もしかしたら、どうするのかを考えているうちに一晩が過ぎ、
また一年間会えなくなってしまうかもしれない。
しかし彼らはそれでも構わなかった。
一年に一度しか会えない。一年に一晩しか会えない。
その代わり、彼らは長い年月を生きることができるのだ。

何も急ぐことはない。何も焦ることはない。
時間はたくさんあるのだ。今日のこの一瞬だけが全てではない。
だからこそ彼らは笑っていられるのだ。
手ごろな星に腰掛けながら。
来年の予定を楽しげに語らいながら。





それなのにマスコミは言います。
「今夜の空は雲も少ないので、織姫と彦星も見えるかもしれません!」
そんな野暮なことするなよ。そっとしとけよ。

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