エッセイ / バリアフリー

なぜこれを書いたんだろう。唐突バリアフリートーク。

「バリアフリーバリアフリーと叫んでいるがな」
「どうしたねタケさん、やぶからぼうに」
「あっしはいつだって社会派だよ」
「はは、タケさんの言う社会派ってのは、
 せいぜい酒が高いとぼやく程度だろ」
「なにを言うかな。あっしは酒は一日一升と決めてるんだ」
「医者に控えろと言われての結果だろ。それでも少なくはないしな」
「うるさいね。それでバリアフリーなんだが」
「おぅ、ばりあふりーね」
「ウメさん、意味わかって言ってるかい?」
「おぅもちろん。今話題のばりあふりーだろう?
 家から出ないでお金をかけずに買い物ができるだの、
 日本中どこにいても手紙が届くだの」
「それはインターネットと電子メールだろ?しかもなんか微妙に間違ってるし」
「なんだい。じゃぁばりあふりーってのはなんなんだい」
「まぁ一概には言えないけどな。
 例えば家のなかの段差をなくすとか、
 階段に手摺りを付けるとか、エレベーターを設置するとか」
「ぜいたくだねぇ」
「こういうのはもう金持ちだけの話じゃないんだ。
 あっしらのように健康なうちはいいが、例えば三丁目のマツさんなんかは」
「あぁ、腰を痛めて車椅子」
「そう。そういった人のためにも、
 さっき言った住宅のバリアフリーは必要なわけだよ」
「なるほど、高齢化社会」
「…やっぱり微妙に間違ってる気がするけど、まぁそういうことだな。
 高齢化社会となった今の日本にとって、
 バリアフリーってのはキーワードのひとつ。それと」
「それと?」
「焦点はそれだけじゃない。今後日本は今以上に外国との接触が多くなる」
「あぁ、国際化社会」
「…ウメさん、言葉だけ覚えてないかい?」
「風雲!たけし城」
「意味わからんし。
 えーととにかくバリアフリーなんだ。
 外国人だって日本人と同じ待遇があって当然のはずだろう」
「いや〜、おいら英語はからきしダメでね。ほったいもいじるなー」
「…という先入観が、日本に来た外国人の生活を悪化させてるわけだな」
「あいあむあぺんしる」
「おいウメさん大丈夫か?」
「なるほどね。つまり世の中バリアフリーが大事というわけだ」
「言ってみればそういうわけだな。ところが」
「うん?」
「今の日本はどうだろう。
 だんだんと状況は改善されてるとは言うが、
 それは元の状況が悪すぎただけ。
 街中は未だに歩きにくいし、横断歩道も危ないったらない。
 電車もそうだ。駅にエレベーターはあっても理解はない。
 荷物も少ないおばさんや、
 ケータイ片手の学生なんかがエレベーターを使用してる始末」
「あれは使っちゃいけないのかい?」
「いけないってことはないだろうが、優先される人というのはいるだろうよ。
 それからさっきの例で言えば外国人もそうだ。
 そもそも日本ってのは島国だから、自国以外は『外』って先入観がある。
 だからして『外国人』となるわけだが」
「おいらは外人なんて言うけどな」
「そこだ。
 外国、というならまぁ仕方ないんだが、外人というのはどーもいけねぇ。
 やっぱりこういうところで、
 他の国の人間を拒否してるというイメージがついちまうんだな」
「うーん?おいらそんなつもりはないんだが」
「たしかにそうなんだが、やっぱり言葉のイメージってもんがあるわな。
 例えて言うなら、本心では思ってなくても『ウメさん馬鹿だねぇ』と言えば」
「馬鹿とはなんだ馬鹿とは。
 そりゃおいら学生時代は勉強もせずにユミコばかり追いかけてたがなぁ」
「…へぇ。ユミコちゃんを」
「あっ」
「その話、あとでゆっくり。
 えーととにかく、まぁ馬鹿と言えば相手には侮辱してるように聞こえてしまう。
 それと同じことだな」
「本人にその気はなくても相手がそうとらえてしまうと」
「そういうこと。なんだかウメさん妙に冴えてるねぇ」
「…つまり、おいらは困らせる気はなかったんだけど、
 ユミコが困っていたならそれは嫌がらせってことかね」
「…なんか話が複雑そうになってきたな。それはあとでゆっくりな」
「だから卒業式の日に平手打ちを…」
「んっ!? …えーととりあえず話進めようかね。
 つまり、今の日本ってのは、バリアフリーバリアフリーと叫んじゃいるが、
 実際のところはバリアがフリーなんじゃなくて、
 バリアばかりでバリアフル。
 つまりバリアフリィなんじゃないかと言いたいわけだよ」
「…あぁ?」
「英語な」
「やだなタケさん、おいらに英語がわかるわけないだろう」
「途中からそんな気はしてた」
「ところで今の英語あってるわけかい?」
「いや全然。受験生は参考にしないように」
「危ないねぇ、結構受験生見てるっていうのに」
「それはいいよ。さぁ話も終わったことだし、ユミコちゃんの話を」
「うーん、仕方ないなぁ。つまりこれこれこういう…」
「ふむふむ」
「…それでそんなわけで…」
「え…?」
「こんなことがあったんで」
「いや…」
「で、そーゆーわけなんだよ」
「…ウメさん」
「なんだいタケさん」
「ストーカーって知ってるかい?」


結論。
バリアフリーにしろなんにしろ、
相手の立場になって物事を考えるのが大事ってことで。
おそまつ。

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