エッセイ / 未来予想図III

掃除で掘り出された未来、さてどんなこと書いたっけ?

私「ほー…」
俺「ん?」
僕「何見てんの?」
私「これですこれ。中学の卒業文集」
俺「うへぇ。懐かしいもん見てんなぁ」
僕「何書いてあるー?」
私「こんな」
二人「…うわぁ…」
俺「なんで卒業文集とかって、自分の好きなマンガの紹介をするかね?」
私「若かったんじゃないですか」
俺「今となっちゃさっぱり書かない四コマ漫画まで」
私「若かったんじゃないですか」
俺「しかも〆切り四時間前に書いてるし」
私「そこは今と変わりませんね」
俺「ったく… おい、さっきから黙ってるな」
僕「ん、ごめん。ちょっとこれ見てて」
俺「あん?」
私「年表ですか」
僕「自分史っていうのかな」
私「ははぁ。今見ると結構興味深いこと書いてますね」
俺「ていうか未来しか書いてない自分史ってどうよ」
私「…うん、じゃあちょっとここで追っていきましょうか」
俺「はっ?」
私「一部除いて、管理人の一生をお届け!」
俺「いや」
私「題して『未来予想図III』」
俺「それもどうよ」


 15歳:検閲削除

俺「はっ?」
僕「いきなり」
私「ちと公開に不都合のあるものは削除しますんで」
俺「なな、何書いてあったんだよ」

 16歳:ベイスターズ、リーグ優勝。マリーンズと対決、四勝三敗で日本一に。

俺「突然野球か」
僕「あれ?でもこの年って確か…」
私「そう、ベイスターズ数十年ぶりに優勝した年です」
俺「おぉ!?」
私「驚きましたよこれは。マリーンズは相変わらずでしたけど」
俺「ひでぇ」
私「好きなんですけどね」

 18歳:検閲削除・花屋でバイトはじめる(時給650円)

俺「また削除」
私「某大学進学、って書いてあったんです。なぜか商科大学ですが」
僕「文系なのに」
俺「あの頃はまさか浪人するなんて思わなかったな」
私「そういうこと言うと検閲入りますよ」
俺「て時給650円!?」
僕「安ぅ」
私「花屋か喫茶店でバイトできればそれでいいと思ってた頃です」
俺「若いな…」
私「まだ汚れを知らないころです。お金より大切なことがあった…」
僕「は、はあ」

 22歳:「穴のあいたアンドーナツ」大ヒット。大もうけするが(検閲)社製品の修理費でパー。

僕「穴のあいたアンドーナツ…?」
俺「いや餡が入るとこがねーじゃんよ」
私「今までにない、全く新しいアンドーナツ。これ自信ありますよ」
俺「いや、だから餡が」
私「輪のとこにちまちまと」
俺「う、売れねぇ」
私「ブームに乗れば一時期は売れますよ。何でもアイスにしてみたあの頃のように」
僕「…そんな時代もあったねぇ。かぼちゃアイスとか」
俺「ところでこの(検閲)社製品…って?」
僕「わぁ…」
私「ちと放送コードバリバリなのでなんとも…。某社です某社!」

 23歳:「週刊地球旅行」500号創刊。ニューカレドニア旅行当選、初の海外旅行となる。

俺「100号までしかないんじゃ…」
私「禁句です」
僕「23歳まで海外旅行しないつもりなんだ」
俺「ていうか本州すらロクに出たことないしな」
私「失礼ですね。厳島に行きましたよ。数時間」
僕「数時間…」
俺「しかもそれ修学旅行だろ」
私「次行きます」
僕「あっ」
俺「おい」

 30歳:ファーイーストリサーチ社入社試験不合格。ゲーム会社「ナオックス(株)」設立。

俺「不合格かい!」
僕「あちゃー」
俺「番組の最後に催促されないと調査開始しないような会社のくせに…」
僕「あわわ」
私「一応言っておきますと、日テレ系『特命リサーチ200X』ネタです」
僕「で… ナオックス?」
俺「ゲーム会社?」
私「4歳くらいの頃からの夢です。株式会社ナオックス」
僕「そんなよーな電気店があったような」
私「気のせいです」

 32歳:ゲームの難易度が高すぎて「ナオックス(株)」倒産。

俺「早っ」
僕「そんなに難しいわけ?」
私「趣味で作ってたシューティングゲームは管理人しかクリアできませんでした」
僕「駄目じゃん」
俺「ていうか趣味で作るな」
私「あ、32歳はもうひとつあります」

 五万円札ついに登場。絵柄はスマトラトラ。

僕「スマ?」
私「スマトラ島にいるトラです。実在!実在!」
俺「五万円札ねぇ…」

 36歳:検閲削除

僕「あらら」
私「あまりにも欲望まるだしの内容なので」
俺「何書いてあったんだよ?」
私「…直木賞受賞とか、宮部みゆきと対談とか」
俺「…あちゃー」

 38歳:結婚する

俺「遅!」
私「続きがあります」

 が、10日目で妻蒸発。

俺「早!」
私「一体なにやったんでしょうね」
俺「…意味深なこと言うな、おい」

 心中を綴る「ツレヅレ芽」は、社会現象を巻き起こす。

私「エッセイです」
僕「あ、フォローが早い」
俺「当時からネーミングセンス皆無ってのがわかるな」

 40歳:茨城県の砂丘で妻と再会。

僕「びみょー…」
私「失礼な。日本第二位の砂丘ですよ」
俺「ていうか管理人も元妻も、なんでそんなところに」

 ファミコン版「ゴルフ」で対決の末、再婚。

俺「『ゴルフ』…」
私「いまだにファミコンを持つ人ならわかると思います。名作です」
僕「管理人ってゴルフ苦手じゃなかった?」
私「そうですね」
俺「よく勝てたな?」
私「愛の力ですよ」
僕「…」
俺「次いくか」

 49歳:自宅(町田市)の地下から遺跡発掘。超古代文明の存在を裏付ける貴重な資料に。

私「町田市。東京都南部に位置。なお現住所とは一切関係なし」
俺「超古代文明?」
僕「マヤとか?」
俺「でも発掘されたのが町田ってことは、マチダ文明とかになるわけか?」
僕「人名かも」
俺「…うわぁ…」

 55歳:“純青”OVA化。40年ぶりにメンバー全員集合。

僕「OVA…って、オリジナルビデオアニメね」
俺「40年ぶりってお前…」
私「とてもじゃないけど高校生の声なんて出ませんよ」
俺「わかってて言ってるのかよ」
私「やけにシブい声をした高校生たちの青春物語!」
俺「すげぇやだ」

 62歳:検閲削除

私「これはちょっと。放送コードにもほどがあって」
俺「あん?」
私「長男が生まれるけど、(検閲)の生まれかわりだ… とか」
俺「(検閲)て!」
僕「B'zのカラオケCDで歌ってる人だね」

 (検閲)社倒産。ほくそ笑む。

私「えーと」
僕「22歳の時修理費で苦しんだ会社?」
私「コメントは控えさせていただきます」

 70歳:鎌倉で老後を暮らす… らしいが行方不明。

俺「行方不明!?」
私「鎌倉で老後を過ごすのはほんとに憧れてるみたいですよ」
俺「いや、行方不明て!」
私「オチを考えるのがめんどかったんでしょうね」
僕「オチ?」
私「これ以降の記述はありません」
俺「これで終わりかよ!?」


私「そんなわけでお届けしました、管理人の一生。いかがでしたでしょうか」
俺「いかがもなにも」
僕「こうして見ると、実現したのはベイスターズ優勝くらいだね」
私「何を言ってるんですか」
僕「え?」
私「夢は叶うものじゃありません。叶えるものなんですよ」
僕「はあ」
俺「たまにまともなこと言うのな。クサいけど」
私「つまり!これから叶えていけばいいんです!」
僕「ちょ、ちょっと待って」
私「さしあたって次に来るのは22歳!穴のあいたアンドーナツ!」
俺「来てほしくねーなあ」
私「早速今から修行です!ほらほら勉強なんてしてないで!」
僕「え?え!?ちょっと!!」
私「パン屋で修行ですよ!さあパン!英語で言うとレッツブレッド!」
僕「ちょ、ちょっとー!?」
 (二人、どこかに消える)
俺「…確かに、大学卒業なんて記述はどこにもねーもんなあ」

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