エッセイ / 私がバイトを始める日

爆裂ファミレスアルバイター、ここから全てが…!がっくり。

浪人生、というと聞こえはいいが(よくない)、
つまるところそれはフリーターである。

アンケートにて「ご職業」の欄には
15.無職 にマル印、もしくは
99.その他 (    ) に「無職」と書き込まなければならない(マル印もお忘れなく)、
そんな身分である。
携帯電話の新規申し込みにも保険証が必要であるなど、
自分自身を証明するにも一苦労なご身分である。
学割のきくカラオケに行っても、
一人だけ「エビアン小」を別途頼むような身分である(身内ネタだな)。
オフィスソフトを買うときにもアカデミックパックが買えなくて、
あぁっくそっなんでこんなもんに数万も払わなきゃなら(略)である。

「学生には金がない」とは某携帯会社のCMのフレーズだが、
現時点で、浪人生の私にはもっと金がない。
一年前兄に借りたパソコン購入費の返済や、CATVインターネットの月額料金、
携帯端末の月々の使用料などを払うと、
ほとんどどころか一銭も残らないどころか完璧にマイナスである。
人の財布から出すなんてことにもなりかねない(犯罪です)。


…というわけで、浪人生活が始まるやいなや、バイトを始めることにしました。
お目当ては近所の喫茶店J。折りよくバイト募集の張り紙があったので電話。
「はい、じゃあマスターに通しておきます。後日電話します」
と返事をされ、かっこいいなぁと思いながら電話を待ちます。

 電話は来ませんでした。
 っていうか一週間してこっちからかけるべぇと思ってた頃、
 バイト募集の張り紙がなくなってました。
 …えぇと。それは私採用ってことですか?

次のバイトを探しました。
最寄駅のすぐそばにある喫茶店Dコーヒー。
張り紙確認。朝方を特に募集してるようです。
生活管理もできるし浪人生にはぴったりだね♪と電話。
「わかりましたー朝方ならあいてますんで店長に通しておきます」
かなり手ごたえを感じました。これはいけます。

 数日後。家庭教師中に電話が来ました。
 「すいませんー全部埋まっちゃってるんですよ」
 …えぇと。先日の電話先の方はなんだったんですか?

次のバイトを探しました。
最寄駅から二つ行った駅(自転車で30分弱)のすぐそばにある喫茶店Dコーヒー。
っていうか前回の店のチェーン店です。
張り紙と求人広告を確認して電話。
「それでは○日の○時に面接を行ないます」
三度目にしてようやく初面接。少し泣けてきました。
面接日、店を確認してみたらバイト募集の張り紙がなくなっています。
「これは… いけますかひょっとして(ニヤリ)」
朗らかなムードの中面接終了。これはいけます。働けます。

 数日後。電話をかけると言われていた時間から2時間ほど経っていたので
 こちらからかけました。
 「えーっと…んー…なんていうか… 今埋まっちゃってますのでー」
 …えぇと。その言いよどみ方はなんなんでしょうか。

しばらくへこんでました。
浪人生雇ってくれるところなんていないのねカッコ泣カッコ閉じる、と思ってました。
いや、今までひとことも「浪人」とは言ってないんですが。
そんなある日友人が即日でバイト決めました。
しばらくつぶれてました。


…さて時はしばらく経ちまして。
毎週日曜求人広告をマメにチェックしてたある梅雨入り日のこと。
「あ。ここあるなぁ」
ふと目にとまったバイト募集広告。
立地条件は悪くないのに何の因果かそんなに人気があるわけではない、近場のレストランを発見。
実は私、以前はこの店毛嫌いしてた(別店舗ですが)のですが、
ここ一年程で自分内評価急上昇!な店だったわけで。
ほんとは前述の理由で早朝バイトがよかったのですが、
浪人生の利点「深夜も可」ってのがあるなぁと思いまして。
早速電話、「じゃあ急ですけど明日面接でいいですか?」の問いに脊髄反射でOKを出しました。

面接日。梅雨入りしたこともあって、しとしとと雨が降っていました。
雨の日より晴れの日のほうが好感度高いんだけどなぁ、などと相手の深層心理まで気にしながら訪れます。
っていうか電話かけるときにもこーゆーことばっか気にしてました。過去4回とも。
こちらの武器は二つ。
「全日フリー、土日深夜可能、賃金こだわらず」というとてつもない好条件と、
3年ちょい前の高校推薦受験時に使用した「さわやか好青年オーラ」です。
こういうとき、演劇やっててよかったと思います(待て)。
面接相手の方も朗らかな感じで(…前もそうだったな)、
なぜか話もやけに盛り上がりました(これは今回のみ)。

結構手ごたえを感じていたんですが、これまた前例があるので、
面接を受けたことすら人には言いませんでした(日記には書いてますが)。
電話を待ちながら思いました。これ落ちたらどーしよかと。
正直いっぱいいっぱいでした。これ以上バイト探すのはちと苦痛、って域まで来てました。

そんな思いをはせていると電話が鳴り響きました。
受話器を取る手もおぼつきません。
「お電話代わりました」
「あ、私○○の人事担当の○○ですが」
「はい」(そうですよねこないだと声同じですもんね楽しくお話しましたよねそれで結果はどうですか)
「えーと今回PATさん採用ということで」(さらっと)
「…」
しばらく硬直。
「あっありがとうございます!」
長い戦いにもこれで終止符が。
気付けば視界が曇っていました。服の袖で拭えど拭えど、涙が止まることはありませんでした。


…話はこれで終わりません。
バイト初日、おぼつかない手つきと緊張の面持ちで仕事をする私に、
やさしく声をかけてくれる店長と先の人事担当の方。
いい職場です。
「お姉さんと呼びなさいよ」と笑う調理担当のおばさ お姉さん。
いい職場です。
店長に休憩室に呼ばれたとき、
「実はここ、店員の態度があんまりよくなくて。僕もここ来たばっかりだから色々変えていこうと思うんだよね。PATくん真面目そうだから大丈夫だと思うんだ。まぁ協力してほしいなぁと」
と言われたり。
えーといい職場です。
人事担当の方に休憩室に呼ばれたとき、
「実はここ、店員の態度があんまりよくなくて。僕もここ来たばっかりだから色々変えていこうと思うんだよね。PATくん真面目そうだから大丈夫だと思うんだ。まぁ協力してほしいなぁと」
と言われたり。
えーとそのいい職場です。

…つまり私、変革期に入ってきてしまったわけですか?
時は16世紀初めマーティン=ルターによる宗教改革真っ最中ですか?
っていうかもしかして私がルターの役目を担ってますか?

…実は結構重要なポジションなんじゃ、と思いつつ、
私のバイト生活はスタートするのでした。
このバイト、辞める時期が非常に微妙な気がします。

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