08’8’11
立秋を過ぎても暑さの続く毎日だが、風の気配、雲のたたずまいに、なんとなく秋を感じるようになった。 地球の温暖化が言われて久しいが、最近はその影響が顕著になっている。 冬の暖かいのはすごしやすくて助かるが、夏のこの異常とも言える暑さには閉口だ。
夏休みも半ば。 近所に子供があまりいないせいか、静かである。 昔は子供たちの歓声や、監視員の吹く笛の音が聞こえて、「夏だなぁ」と思わせた、我が家から程近い水上公園プールも近年は静かなものだ。 プールの事故も相次ぎ、親も心配で行かせたがらず、子供たちも家の中でゲームでもしているのが、今の夏休みの標準的なすごし方」なのだろうか。
人間も草花もげんなりする厳しい残暑の午後、威勢のいいのは蝉である。 木のある場所が減ってきているためか、庭はうるさいほどの蝉時雨である。
農薬の心配もない、落ち葉の積もった土は、居心地が良いと見えて、蝉の抜け殻がそこここにあり、よく見ると地面には蝉の這い出た穴がたくさんあいている。
例年通りの「早朝草むしり」に励みながら、羽化したばかりで、まだ飛べない油蝉に、「悪いねぇ」と言いながら、踏まないように気をつけて草を引く。 池も作りかけのまま残り、きれいな庭造りは私には到底できないが、せめて草くらいは抜こうと思っている。 日が昇ってくると、やがて、蝉も飛び回る。
油蝉に混じって、ミンミン蝉が鳴き、立秋のころからはツクツク法師も鳴きだした。 今年は鳴きだすのが早いようだ。
若いころ、「自分に、教師という仕事は向いていない」と言いながらも、結局は生涯教師だった夫は、夏休みにツクツク法師が鳴きだすと、夏休みの終わりが近いことを残念がっていたものだ。
今年のように早くから鳴きだしたのでは気の毒だったなと、おかしかった。 やりたいと言っていた陶芸でもしていたら、どんな気持ちでこの蝉の声を聞いたのだろうか。
蝉の声は絶えることもなく続いている。 百日紅のピンクが青空に映えて美しい。
近頃、夫が生きていたらどうしただろうと考えることが多くなったのは、私が年を取ったせいなのかもしれない。 なぜかしっかり者と見られがちな私の弱さを、しっかり知っていてくれる人だった。 たまには会って話をしたいとも思う。
「おばあさんになったなぁ」なんて言いっこなし。 「そっちだって来年は80のおじいさん」なのだから。
平成20年の8月11日も、もう、夕方近い。