07’2’24
その契約後三〜四日して電話があった。 「先日は新聞の契約をありがとうございました」と若い女性の声だ。 当然先日契約したY紙の販売店からと思った。 「契約していただいたばかりなのに恐縮ですが、洗剤などをサービスいたしますので、その先三ヶ月の契約をお願いできないでしょうか」と言う。 「年をとっているので、あまり先の約束はできかねるから、三ヶ月したら来て欲しいとお話しているのですが」と言うと、「引越しされた方やいろいろで契約数がちょっと少なくて困っていまして・・・」とのこと。
ここで、私の中にわずかに残っていたらしい「親切心」が頭をもたげた。 「そういうことならいいですよ」と。 「いつもうちに来てくださる人はKさん? Nさん?」と私は続けた。 「どちらかですね」と彼女。 「とにかく、いつもの人に来てもらってください」と私。 「いつもうかがうのは”営業”の人だと思いますが、”会社の人間”がうかがったのでは駄目でしょうか?」と。
ここで、さすがの私も、はっきり「おかしい」と感じた。 ”営業”とか、”会社の人間”とか、販売店で使うかな?と思った。 言うならば”店の者”じゃないのかな、と。 これはY紙販売店ではなくて、A紙販売店だと合点がいった。 「いつもの人をよこしてくださいね」と念を押して電話を切った。
当市におけるA紙とY紙の顧客争奪戦は熾烈らしい。 人をペテンにかけてまで・・・というところから察するに、A紙のほうが劣勢なのだろう。
思いおこしてみれば、先の電話でも相手は確かにY紙の販売店だとは一言も言わなかった。 そう思ったのは「私の勝手」である。 直前の契約に対する礼は「新聞業界」としての礼だとでも言うのだろう。
うるさく電話をかけてきたりするのはいつも男性なのだが、たまたまどこかの女性に頼んだものと見える。 ただ、少々訓練不足だったようだ。
「いつもの人としか契約しない」というのはなかなかの名案であることが、図らずも実証できた。 そのうちに「彼はやめた」などと言ってくるのかもしれない。
我が家では長年A紙を購読していたが、たまたま人の話からY紙にしてみたところ、私には面白かったので、以後、Y紙にしているのだ。 そういういきさつがあるので、A紙販売店の猛攻撃を受けるのだが、不愉快な言葉を勧誘員から聞くことが多いので、最近は接触しないことに決めている。 それでも、往生際が悪く、あの手この手で攻めてくる。 「長年取っていただいたので、お礼の品物をお持ちしました」などと言ってくるが、これも真っ赤な嘘。 新規契約に伴う景品というわけだ。 「書きましょうか? ハンコだけお願いします」なんておためごかしの言葉に乗せられて、うっかりハンコなど渡しては大変。 「だましのテクニック」にもいろいろとあるものである。 自衛策として、鍵を開けずに応対し、どんなものも一切受け取らないことにした。
この節は、新聞を取らなくても私の生活では困ることはない。 テレビもあれば、ネットでも情報は得られる。 「好青年」に私は言っている。 「貴方がやめたら、私は新聞そのものをやめるから」と。 「僕は絶対にやめませんから」とは言っているけれど、一生続けられるとも思えない。
先ごろ、新聞の記事盗用が話題になった。 私はかなり前に両紙の記事がまったく同じであることを発見したことがある。 上層部からの締め付けが厳しいのだろうが、新聞記者は他紙の記事を転用し、販売店では客をだましてまで強引に契約を取ろうとするのでは、購読者が減るのも当然である。 A紙の威信も、地に落ちたと言うことか。
販売店との攻防戦も脳の活性化には役立つのかもしれないが、新聞くらいは好きなものを自由に読みたいものである。