06’11’25紅葉の季節を待っていたのに、今年はいつになっても気温が下がらず、紅葉しない。 近いところできれいな紅葉を見たいものだと思っていた。 東京の奥座敷と言われる奥多摩に程近い羽村の地に住みながら、意外に知らない奥多摩のなかでと考え、久しぶりに鳩ノ巣渓谷へ行ってみようと決めた。 青梅線の鳩ノ巣駅は山歩きでちょくちょく利用するし、駅前を通る奥多摩街道もしばしば使うのに、考えてみると久しく下の川へ降りたことがない。 高校生の頃は、都内からはるばる遊びに来たものだが、近くに住むようになってからはかえってご無沙汰だった。
紅 葉 一度下見がてら行ってみようかと思っていた矢先、十月下旬、山仲間から歩きに行かないかと誘われた。 鳩ノ巣駅をはさんで古里から白丸までは「大多摩ウォーキングトレイル」のコースになっている。
当日は奥多摩駅まで電車で行き、奥多摩駅から白丸を経て鳩ノ巣駅までの二駅分を歩いて、鳩ノ巣でお昼を食べようと言う、結構な計画だった。 コースには、数馬峡、白丸ダム、白丸湖、そして鳩ノ巣渓谷がある。 すぐ上をJR青梅線も、奥多摩街道も通っているのだが、上からはほとんど見えない。
「遊歩道」と言っても、山道あり、岩場ありの多摩川沿いのコースである。 まだ紅葉には程遠い時期ではあったが、さほどの距離ではなし、写真を撮ったりしながら、なかなか楽しい歩きだった。 白丸ダムを見たのは初めてだった。
鳩ノ巣渓谷 鳩ノ巣渓谷の紅葉の見ごろ予想は十一月末頃との情報をネットから得ていた。 月末は予定もあるし、明日からは天気も下り坂らしいからと、やや早目とは思ったが、十一月二十二日にカメラと三脚を愛車に積み込んで出かけた。 昼までに帰るつもりでも、往々にして長居をするので、小さな水筒にお湯を詰め、パン一枚、おせんべ一枚、みかん一個の超軽食も持った。 鳩ノ巣駅前の駐車場に車を置いて、鳩ノ巣から白丸まで歩き、白丸から鳩ノ巣までの一駅を電車で戻る予定だった。 八時過ぎに家を出ても九時前には到着する距離である。
駐車場にはまだ何台も止まっておらず、風が吹くたびに盛んに落ち葉が散っている。 渓谷に下っていく間に、カメラを抱えた人に一度出会ったが、まだ閑散としている。 第一のポイント「鳩ノ巣小橋」にも誰もいない。 ここで我が誤算に気づいた。 九時ではまだ、深い渓谷には日が届かないのである。 早すぎた。
日があたって来るのを待っているのも芸がないから、白丸まで歩いて戻りながら撮って来ることにした。 紅葉は”イマイチ”ではあったが、山仲間と一ヶ月前に歩いたときとはすっかり様子が変わっていた。 いかにも「秋」である。 白丸湖には落ち葉が漂い、足元も落ち葉道だ。
数馬峡橋から上流、下流を眺め、カメラに収め、戻ることにする。 「絵になる」として、数馬峡を少し下流から眺める場所を決めていた。 前回はここで仲間たちと記念撮影をした。 数馬峡橋も山肌の紅葉も、エメラルドグリーンの川面に影を落とし、思ったとおりの景色である。 行きがけには女性グループがいたので通り過ぎたが、今度はカメラの女性が一人だけだった。 少し前にも行き合った人だ。
数馬峡 ファインダーをのぞいて、もう少し右側から、と思い、三脚をたたみ、横の岩に移ろうとした瞬間、足を滑らせてしまった。 体の右側を下にして見事に滑った。 痛かったけれど、まず「カメラは?」と思った。 「大丈夫ですか?」と帽子を拾ってくれて、そばの人もびっくりしただろう。 「ありがとう。 カメラも無事のようで・・・」と私。 「命の次に大事ですものね」と彼女。 我ながら上手に滑ったものだ。 レンズ一本を入れてある背中のミニリュックもどこにもぶつけていなかったのだから。 ぬれた岩場に落ち葉である。 自分の不注意さに落ち込む。
ゆっくりと写真を撮りながら戻り、鳩ノ巣小橋が見え出したころには、人がいっぱいになっていた。 鳩ノ巣小橋は吊り橋なので、人が通るとかなり揺れて写真は撮りにくい。 あいていたベンチで持ってきた食料を片付けてから、少し下流に行ってみたりしたが、人が多いし、昼も過ぎていたので帰宅することにした。 駐車場が車であふれていたのにはびっくりした。
右もも横に大あざを作ったけれど、半日、楽しめた。 記念撮影でもしておきたいほどの大あざは、検査の度に主治医をやきもきさせる、血小板の少なさゆえのことだろう。 しかし、お風呂に入りながら、あれで「太もも骨折」だったらどうしただろうと思ったら冷や汗が出た。
もう少し紅葉が進んだときにもう一度行きたいと思う気持ちを萎えさせたのは、どうやら、この「冷や汗」だったようである。 gallery・「鳩ノ巣渓谷」へもどうぞ。