11’6’9
役場に行って聞いたほうが早いかなと思い始めた時に、ゲートボールをしていた奥さんが、「人形屋のところだ」と思い出してくれ、場所を大体教わって行ってみた。 ネットの写真に出ていたお地蔵さんがあり、そこに、「ヒメザゼンソウ」の説明板が立っていた。 やっと到着である。 町指定の「天然記念物」となっている。
ところがそのあたりは草が茂り、どこを見てもそれらしいものはない。 すぐ横からは林の中に通じる道があり、近くに赤い鳥居の祠が祀ってある。 鳥居と反対側は明るく開けて畑になっている。
折りよく近所の奥さんらしい二人連れが林の中に来たので、早速聞いてみた。 「この辺ずっと出るけれど、あの説明板のところが見やすい」と言って、わざわざ一緒に来て、茂った草を掻き分けてくれた。 ここにある、と言われて覗いてみる。 なんという小ささ! おまけに向こう向きだ。 おそらく見頃には周囲の草もきれいに刈られていたのだろう。
普通の座禅草は早春の花だが、ヒメザゼンソウは初夏に咲く。 6月15日では、時期が少し遅いのかもしれない。 来年は、「6月初旬」に忘れずに来ようと考えながら帰ってきた。
そして、一年たった。 今年は花が遅めだがどうかなと考えた。 ぎりぎりの「初旬」、9日に時間が取れたので出かけた。 目印のお店の電話番号をナビに打ち込んだら、「11キロ、22分くらいかかります」と。 去年は迷って遠回りをした挙句、向こう側から曲がった道を、今年は反対側のこちらから入ったのですぐだった。
古いナビが曲がれと言う道も、現在は大きな道ができているので、曲がる必要がなくなり、時間は更に短縮だ。 ナビを横目で眺めると、ピンクの矢印が「道なき道」を進んでいるのがおかしい。 新しい道路ができて、五日市方面に行くのが楽になった。 再度、ヒメザゼンソウを見に行こうという気にもなる、と言うものだ。
去年出ていた場所を記憶しているのだから、すぐ見つけられそうなものなのに、一向に見つからない。 思った通り、草はきれいに刈られている。 でも見つからない。 早すぎるわけでもあるまいに、と思いながら、少し奥へ行ってみる。 去年、この辺にも出る、と言われた場所にもそれらしい姿はない。 林の向こうの畑で仕事中の男性がこちらを見ているようだ。 また、案内板のあたりに戻ってきて姿勢を低くして探してみるが見つからない。 しょうがないなぁと思いながら、立ち止まってきょろきょろしていた。
「分りましたか」と言う声に顔を上げると、畑で仕事をしていた男性だった。 「分らなくて・・・」と言うと、ここが分りやすいですよと、立っていた道から一段下がる斜面に案内してくれた。 そこでは二株の葉を広げて見やすくしてあって、真ん中に可愛い花が鎮座ましましているではないか。 可愛い! 5センチくらいの小ささだが、赤紫色の仏炎苞もしっかりとした座禅草の姿に他ならない。 奥秩父の山奥に二回見に行った緑がかった座禅草よりも、色も形も私のイメージぴったりの「座禅草」だ。
葉が枯れる頃、花が咲く、と書いてあったが、まだ葉も健在だ。 そのあたりには、幾株かまとまっていたので、それぞれ覗き込んでみたが、確かに横を向いていたり、後ろ向きだったりして、「見やすい」点では劣っていた。 まぁ、株を広げられてしまった姿もあまり良い感じではなかったが、しっかり見えたのは確かだった。
今年はぶれないように慎重にカメラにも収めた。 目的を達したのもうれしいことだったが、私は、かなり離れた畑から、わざわざ来てくれた男性の好意がまことにうれしくて、何度もお礼を口にしていた。 たまに訪れる人が、みんな分らずにうろつくのを気にしながら、頃合を見計らって出てきてくれるのだろう。 去年の奥さんたちといい、親切な人たちの住む地域に思えた。
昨年見た場所に今年はなかったことが気にはなるが、昨夏の猛暑で絶えてしまったのでなければ幸いだ。
家まで来ると、ナビが「所要時間は19分でした・・・」と言っていた。 本当に近い場所にあったのだ。