06’8’11私の朝食は、もう長い間パン食である。
麺類の好きな人は、ご飯でなければ麺、となるが、私はご飯でなければパンだ。 しかし、なかなかおいしいパンが手近に入手できない。たまにレストランでトーストを注文すると、びっくりするほどおいしいことがある。 まわりはカリッと、中はフンワリ、だ。 こういうパンが手に入らないかなと思っていた。
どこそこのパンがおいしいと聞くとそれを買いに行く。 しかし、ちょっと違うのである。
家でパンを焼いている友達は、みんな「おいしい」と言う。 天然酵母パンもできると言うが、私は天然酵母のパンよりもイーストのパンが好みである。 トーストにしたときにカリカリ・フンワリがいいのだから。私も自分で焼いてみようかなと思い始めていた。 いろいろ尋ねてみると、お米を研ぐ手間と大差ない簡単さだと言う。 後始末もお釜を洗うのと同じだと。 焼きあがり時間も予約できるらしい。
ホームベーカリーと言う名で家電メーカーが「家庭用パン製造機」を売り出している。 私をホームベーカリー購入に踏み切らせたのは、友達の「よそにお土産に持っていっても”焼きたての自家製”は喜ばれるわよ」の言葉だったのかもしれない。
友達の使い勝手を聞いたり、ネットでも調べたりして、ほぼ機種を決め、家電店に出かけた。 ほかにも用事があったので、立川まで電車で出た。 離れた場所に駐車するよりも、駅前の店には電車のほうが早そうだと思ったのである。「大して重くはないですよ」、と言うので梱包してもらったが、結構な目方である。 重いものを背負うのは平気なのだけれど、手にぶら下げるのは苦手だ。 おまけに、行きは日傘だった晴雨兼用傘が、帰りは夕立が来て雨傘になっていた。 車にすれば良かったと思いながら家に着いたときには、私も荷物もかなりぬれてしまっていた。
ものを買うとまず丁寧にマニュアルを読むのが私のいつものやり方である。
スーパーで調達しておいた材料で、翌朝、焼き立てが食べられるようにと、時刻の予約もした。
ところが、焼きたてのパンは切りにくい。 それ以来、早めに焼くことにしている。我が家のパンをまだ二回焼いただけという日の夕方近く、孫の修学旅行土産を持って、次男一家がやってきた。 真新しいホームベーカリーを見たヨメゴが、「いいですねぇ」と盛んに言う。 「毎日おいしいパンが食べられていいでしょう」と言われた娘も、「本当においしいよ」と答えている。
「うちでもほしいな」と、付属の「パンの本」を熱心に読んでいるヨメゴに、「そんなにほしければ買えよ」と息子が言っている。
私はおそらくパンしか焼かないだろうけれど、彼女はこれを利用していろいろ作るだろう。 こまめに良くやる人である。
「焼きあがるまで四時間かかるから、今から焼いて持っていけば」と言うと、「今日は四時間はいられない」と言う。一日おきにパンを焼いて二ヶ月、私にもさすがに加減が分かってきた。 塩を規定の半量にした我が家の食パンは、私の望んだ味に焼き上がっている。
息子のところで買ったかどうかはまだ知らない。