07’10’10
椅子に座ってすることを考え、見つけたのが小さな木箱だった。 大きさといい高さといい、申し分ないものだったが、木ではやがて朽ちてしまうと思い、ビニール袋に入れて使うことにした。
ごそごそと少々うるさいが、仕事の能率は上がった。 草むしりだけでなく、剪定した枝を束ねる作業も小さな「椅子」に腰掛けてやることで、ぐっと楽になった。 なかなか重宝で、よく使っていたが、ビニール袋が擦り切れるころ、箱にもとうとうヒビが入ってしまった。
何か適当な椅子はないものかと、ネットで検索してみた。 あった! 発泡スチロール製で、お尻にくくりつけて使う仕組みのようだ。 しかし、軽そうではあるものの、とても動きやすいとは思えないし、それをつけた自分の姿を想像するとおかしくて、使おうという気にはならなかった。
そんな時期に何かの話から、箱に車が付いているような草むしり用の椅子なんてないものかしら、と話したところ、「あるわよ」という返事が友達から返ってきた。 すでに買って使っているという。
座るところが箱になっていて、草かきなどの道具一式がしまえるそうだ。 「あるんだ」、とびっくりした。 話はしてみるものである。 「結構いい値だったと思う」と彼女が言う。 高いといっても、まさか何万もするわけはないだろうと、翌日、さっそくホームセンターに出向いた。
草かきなどのあるコーナーを見てもそれらしいものはない。 折りよく通りかかった店員に、「草むしりのときに使える椅子があると聞いて来ましたが・・・」と言うと「こちらです」と案内してくれた。
私が思い描いていた車よりもはるかに大きい直径20センチほどの大きな車が四つ付いている。 聞いていた、上が箱になっているものと、ただ座るだけのものとがあった。 座ってみると、上が箱のものは、私にはやや位置が高すぎるような気がした。 体をかなり曲げることになる。 ただ座るだけのほうが少し低かった。 木箱の方が小さくて手ごろな感じではあったが、仕方がない。
高い、と聞いていた値段は、なんと、980円。 箱付きのほうが300円ほど高かったが、思ったよりもはるかに安かった。
むしった草を入れる袋を取り付けたり、お尻の下に敷くシートなど、小物も別売で用意されていたが、小さな袋で用が足りる我が家の草の量ではなし、薄いシートを敷いても外れたりして、かえって邪魔になりそうなので、本体だけを購入した。
厚手の鉄板なのか、結構しっかりした素材だが、「はんだ」での接着部分が少々心もとない。 ご他聞にもれず、これも中国製である。
出番はすぐにやって来た。 さすが道具である。大変具合がよろしい。またぐ形で座ると移動も簡単で安定している。 腰が痛くなるのが苦痛だった、鉢物の植え替えのときなども、本当に楽になった。
写真を撮るときにも大活躍である。 中腰にもならず、しゃがみもせず、庭の小さな花などを撮るには大変楽である。 廊下の下にちょうど収まるのも便利だ。
草むしり用のつもりだったが、趣味のためにも重宝することになった。 ちょっと休憩などと、なんとなく引っ張り出して座って空を眺めたりもしている。
私のことである。 少々どこかが壊れても、多分、一生使うのだろうと思うとおかしい。
今の世の中、「あればいいな」と思うものは、ほとんどがあるのかもしれないと、つくづく思わせた除草用の椅子だった。