カ ー ド 

    

12’2’25
 最近ちょくちょく利用するスーパーで、「新しいカード」の会員になることを勧められた。 このスーパーのカードはすでに持っており、月二回の特定日には品物を5%引きで買えるなどの特典を利用することもあったし、国際ブランドのカード会社のものだったから、海外でもそのまま使えた。 車のETCの申し込みなどにも使っていた。 カード社会と言われる時代だが、私はこのカード一枚で全ての用を足せていた。

 新カードを盛んに勧められて、私は、これからはこちらのカードに切り替えられるのかとも思い、今持っているカードとまったく同じに使えるのかどうかを尋ねた。 この質問に対する答えはかなりあいまいなものだった。 あちらで強調したのは、買い物が特定日以外にも毎日1%引きになること、手続きは無料であること、前のカードのポイントはそのまま移行することなど。
 おりしも、この日のレジの金額表示機は新しくなっており、新しいカードに対応するようになったと思えた。 手持ちのカードにもしっかり対応はしていたのだが・・・・。

 いずれカードが切り替えられるのなら切り替えておいた方が世話がないと思った私は、会員登録をした。 後日カードとともに郵送される書類は、記入後なるべく早く返送してほしいという話だった。

 半月余りして、書留でカードは送られてきた。 前のカードとはまったく違う番号が打ち込まれている。 すぐ返送するようにと言われた書類は、「預金口座振替依頼書・・・」だった。
 同封されてきた書類に一応目を通すと、明記されていたのは「以前のカードとは番号が違うこと」・「前のカードの解約希望の場合は申し出が必要」・「公共料金等の支払いは自動変更されない」・「カードブランドは一社のみである」等々。 つまり、今までのものとは関係のない新しいカードを申し込んだに過ぎなかったのだ。 そして、それは今の私には特に必要なものではなかった。

 前のカードで何の不都合もないらしいから、今まで通り前のカードで差し支えはないが、スーパーの提携するカード会社が替わったと言うことは、これから会員登録をする若い人たちは新しいカードを持つわけだから、いずれは新しいカードに切り替えられるのだろう。 一応、新カードからの支払いも可能な形にはしておいた方が良さそうだ。 古いカードをキャンセルしてしまっても、不都合が生じることはまずあるまいが、しばらく様子を見てからのことにしようか、などと考えた。 と言うよりも「新しいもの」にすぐにはなじめない生来の癖が出ただけのことだったのかも知れない。 

 それにしても、「あの男」はこちらの質問に口を濁してまで、何であんなに勧めたのだろう。 彼にも「ノルマ」でもあって、いい鴨にされたのだろうかとの疑念もあった。

 僅かな買い物にカードを使うだけで、スーパーにメリットがあるとも思えない。 以前、公共料金の支払い等に使ってもらう金融機関は、馬鹿にならない「手数料収入」が目的だと聞いたことがある。 スーパーにも何か同様のメリットがあるのかもしれない。  

 金銭の被害に遭ったわけではないが、なにやら、すっきりしない思いの抜け切れない私は、すぐに新カードを使う気にはなれなかった。 人の話はもっときちんと聞くべきだったとの反省はある。 疑問をトコトン追及することもせず、いい加減に聞いていたから「無駄なこと」をしてしまったというような気がしていた。
 大人数の家族で、毎日の買い物も馬鹿にならない家庭では「1%引き」は大きな魅力だろうから、そこばかりをやたら強調したのかもしれない。
 実は、過去にも二回ほど、「不要なカード」を持つ羽目になり、送られてきたカードに「はさみを入れて送り返す」と言う経験をしている。
 買い物は原則として現金と言う主義だった私も、ネット利用の買い物ではカード支払いを使うことが増えている。

 「支払い口座」に直結するカードは、極力持たない方が安全と思うのだが、このままでは、また一枚増やしてしまうことになる。 
 年金が更に減るとなれば、僅かな買い物の1%引きもありがたみが増すだろうし、年を重ねてネットスーパーを利用せざるを得なくなるころには、このカードが必要にならないとも限らない。

 つべこべ言っている間に、さっさと古いカードを処分してしまえば、全て解決するのは分っている。 それなのに、腰が重いのは、要するに、このカード社会に生きる一員でありながら、いまだになじめないものを感じていると言うことだろうか。 カードの便利さも十分感じてはいるのだが・・・。

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