カーナビ

04’8’13
 車で初めてのところへ行こうとうと思うと大変だ。地図を見て行きかたを調べる。曲がる交差点名を頭に叩き込む。小さな角は目印を覚える。しかし、これが年々難しくなった。記憶力は減退するし、、地図に載っていない新しい道路が次々とできてくる。 
 知らないところへ行くことが次第に億劫になった。一方では写真を撮りにあちこち行きたい気持もあり、カーナビをつけようかな、と思い始めていた。 
 元来、立派な車に乗っているわけではないし、もう遠出もしないから小さな車でいいと、車も替えてしまった。「今更」の気持もあって息子の意見を聞くと、「便利だよ」とこともなげに言う。息子の家では、運転はもっぱら嫁御。「カーナビをつけたら、お母さんはきっとどこへでも行きたくなりますよ」と彼女は言う。 
 そもそもカーナビとはいかなるものかを知るために、彼女運転の車に乗せてもらった。孫達を家に置いて息子夫婦と出かけるので目的地は遠くない羽村動物公園。知っている道ゆえに勝手に曲がっても、カーナビはそのコースで案内を再開してくれる。
   息子夫婦に付き合ってもらって「カーナビの品定め」にも行った。一番安いのでいいと思ったが、それは私の車につけるには無理があって、メーター類が見えなくなるという。

 タイミングよく、車販売の営業氏が来た。面倒見がよくて、少々のわがままは聞いてくれる人である。「安くしてくれるならば」カーナビをつけたい旨伝えると、早速所長に電話をしている。横で私は「もう一息!」と発破をかける。 
 ほぼ希望の金額で一件落着。1週間後、車についた。 
 「使い方をうまく説明できなくて・・・」と営業氏。「読めばわかるんでしょ」と私。マニュアルを見ながら先ず自宅を登録。どこからでも帰ってこられるというわけだ。慣れるまではと毎日の買い物にもカーナビの案内つきである。「もたもた打ち込んでる間には、行き着いている」と思うこともしばしばだ。

 福祉作業所に通う娘の夏休みには、ドライブがてらどこかに連れて行きたいと考えていた。近いところを探した末、「山梨県フラワーセンター」を目的地に選んだ。ネットで調べたところ、センター前が、かの有名な「明野のひまわり畑」で、現在の開花率80パーセントとは、願ってもないことだ。私自身が「行きたい場所」である。行きたかった明野に、カーナビの試運転を兼ねていくことにした。 
 最寄の中央道八王子ICまではおなじみの道なのだけれど、カーナビの案内では別のコースである。今日はこの案内に従って行こうと決めたのが間違いの元で、国道16号は混んでいるし、中央道も「低速」だった。いつもの道を通ってもそれなりに案内してくれるのだからやはりそうすれば良かった。 
 韮崎ICから約15分、ひまわり公園についた。見渡す限りのひまわりに「すごいねぇ」「綺麗だねぇ」を連発しながら、娘も写真を撮っている。 
 その後で、道を隔てたフラワーセンターに行く。ひまわりの印象が強烈だったので、こちらはやや影が薄い。あちこちの花を見たり、草花の種やチューリップの球根を貰ったり、食事後は「世界のひまわり展」などを見て帰路に着いた。 
 ナビに従い韮崎ICに出れば問題はなかったのだけれど、「左です」と言わないのに左に曲がってみたりしたので、手前の「甲府昭和IC」まで一般道を走る羽目になった。しかし、この間を、ナビのナビたる所以を発揮して、右に左に、命ぜられるままに走って、「ちゃんと出た」。今までなら戻るより手のないケースだっただろう。 
 「左折レーンがあります」まで教えてくれるので助かる。明野から家まで120キロあまり、大きな渋滞もなく、2時間ちょっとで、「自宅に到着しました。運転お疲れ様でした」となった。 
 思った以上に便利で、賢い機器だった。嫁御の予言どおり、やたらと「行きたくなりそう」である。


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