貴 婦 人


02’10’23
 奥日光の湿原、小田代が原に「貴婦人」と呼ばれる一本の白樺があります。昨年の九月に私も見て来ました。
 「ああ、これがうわさの白樺」と眺めたその木は、、男体山や太郎山をバックにすっくと立っていました。去年は大雨で水量が多かったようですが、木道からは池となった湿原を隔ててかなり遠くにありました。
 秋は真っ黄色の黄葉、更に寒さが加わると、霧氷に包まれた貴婦人が朝日に輝く美しさや、原に朝もやが流れる幻想的な風景の中の主役としてカメラマンの間で人気があるのです。

 美しい貴婦人をホームページに載せている人はかなりあります。最近のおじ様方のカメラブームでいやがうえにも人気は高まるのでしょう。
 二十日付の朝日新聞は貴婦人を撮りに集まった人たちのカメラの放列を、写真で載せています。写せる場所が限られることもあって、カメラマンがひしめいています。
 私が気になるのは、カメラの三脚を皆さん湿原の中に立てていることでした。尾瀬でも言われることですが、湿原の植物を傷めてしまうのです。新聞の写真ではカメラと一緒に何人かの人も踏み込んでいます。

 人よりもいい場所をとりたいのは分かりますが、最低のマナーは守りたいものです。正面から皆同じアングルで狙わなくても、もう少し木道をいけば別の角度で狙うことも可能なのにと思いました。そちらも込み合っているのかもしれませんが・・・。
 今まで貴婦人の写真を素敵だなあと思いながら見てきた私ですが、この新聞の写真を見てからはちょっと複雑な気持ちで見るようになりました。
 自然大好き人間の私と致しましては、「貴婦人」に相対する「紳士」としての節度ある行動を切にお願いしたいと思ったことでした。
 昨年九月中旬に私が訪れたとき、紅葉に染まり始めた静かな小田代が原は、秋の花々に美しく彩られていました。   (写真は「貴婦人」と「穂咲きシモツケ」です)

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