筋 肉 痛   

 

11’1’27
  それはまったく思いもかけない筋肉痛だった。 昨年十一月中旬のある朝、目がさめてベットから降りようとした時に太ももに激痛が走った。 今までに経験したことのない筋肉痛だ。 登山経験のない人がいきなり北アルプスにでも行けばこんなになるのかなぁと思うほどだった。
 お風呂でマッサージをしたりしながら様子を見たが、思うように治らないので医者に行き、痛み止めの薬と、からだのこわばりを取る薬を処方してもらった。 何しろ腰からひざ裏にかけての痛みで、朝は靴下を履くのも大変、床のものを拾い上げるのにも一苦労の有様だった。 一週間後、やはり腰から下の左半身は触るだけでも痛い状態が続いているので、紹介されて病院の整形外科に行った。             

 考えてみると、少し前から、なんとなく股関節に違和感を感じていた。 それでも十月には心配しながらハイキングにも行き、特に変わりがなかったので、深くは考えなかった。 しかし、ひざの裏が腫れているような感触があったので、それ以来ハイキングはやめていた。

 とは言え、時は秋。 紅葉真っ盛りの時季である。 写真を撮りたくて、奥多摩湖へ行った。 今年は西側の展望台まで登ってみようと思っていた。 駐車場はそれなりの込みようだったが、山を登っている人はほとんどいなくて静かだった。
 「熊に注意」の張り紙を目にしているうちに、ちょっと怖気づいた。 「熊鈴」も持っていなかったので、引き返すことにする。
 家を出るときには先ず最初に行く予定だった海沢谷への曲がり角を、うっかり通り過ぎてしまったため、奥多摩湖が先になってしまった。
 昼にかかってはいたが、海沢谷へ向かった。 海沢三滝のすぐ近くまで車で入れるらしいので、そこまで行って場所を確認し、可能ならば滝まで行ってみようかと思っていた。

 少し道幅の広くなったヘアピンカーブに車が二台停まっていた。 カーブを少し曲がったところに私も停めて、山道に入る。 すぐきれいな流れがあり、周囲の岩には枯葉が張り付いていた。 滝とはいえないような小さな滝もある。 トレッキングシューズは履いていたが、なんとなく今日はここまでにしようと言う気になった。

 帰りながら眺めた御岳渓谷の紅葉が、これまたすばらしくきれいだった。 紅葉である。 日を置いていたのでは見頃が過ぎてしまう。 と言うわけで翌日は御岳渓谷へ行った。
 寒山寺の駐車場に車を停め、すぐ下の楓橋から御岳小橋までを往復して、良い気分で帰ってきた。
 更に翌日は、水溜りのできる入り口に撒こうと、川原から砂を運んできたりしていた。 そして、数日後に激しい筋肉痛に襲われたのだった。 しかし、どれをとっても、今までの私には「ひどい筋肉痛」になるほどのことではなかった。

 整形外科でのレントゲン検査では、腰椎も股関節も膝も、痛みの出るほどの状態ではないとの診断だった。 膝がなんでもないわけはないのに・・・と思いながら、「それでは、この痛みは何でしょう」と聞くと、「筋肉です」とのことだ。
 「筋肉の衰え」があってのことだと言う。 もちろん年を取ってそれなりに筋力の落ちるのは分るが、あの程度のことで、突然微熱まで伴ってこんな筋肉痛が出るものだろうか、と内心納得のいかないものがあった。

 納得の行かないままに、「筋肉の痛み」で、ネット検索をしてみた。 状況が似てはいるが・・・と思う病気がある。 原因も不明、治療法も確立されてはいない病気もある。 本当に「老化現象」だけのことだろうかと、いささかの「若さへの未練?」もあって考える。

 ここ半月ほど、膝が腫れて明け方は特に痛む。 何度か「水抜き」の経験のある左ひざが、またまた「水抜き」をすることになった。 痛みの出る状態ではないと診断されたのは、ほんの一月前である。 やはり・・・と、医者への不信感が顔を出す。 水もそれほどたくさんたまっているとは思えなかった。
 医者には、患者が年寄りの場合「年だから止むを得ない」と言う気持ちが在るのではないだろうか。 年だからこそ残り少ない人生を少しでも快適に暮らしたいと患者は思っているのだが・・・。

 膝に問題は出てきたが、腰や股関節の違和感は、二ヵ月半を経過して、かなり良くなっている感じだ。 靴下も苦労せずに履けるようになり、「痛み止め」を飲んではいるが、量も減っているし、ほとんど普通の生活ができている。
 朝は膝以外に両肩、首から頭へかけての筋なども痛むので、布団の中でもぞもぞ動いて「関節に油をよくまわして」から起き出す。 「一晩じっとしているから、どうしても硬くなる」と言われるのも納得せざるを得ない。

 目下のところ、先ずは膝を良くしなくてはならないので、「足あげ運動」に励んでいる。 膝の力はだいぶついてきたと思うが、どうやら腰や股関節周りも鍛えないと駄目らしい。 偶然テレビで見た「膝の痛み」と言う番組では、腰から来る痛みもあるとの話だった。

 全ては「筋肉の衰えがあってのこと」と言われたことを、多少の疑念は持ちながらも受け入れつつある私だが、そろそろ「運動療法」の効果を感じたいものである。
 先日、私よりも七歳年長で、坐骨神経痛を病む、実家の兄嫁からの葉書にあった、「齢をとるということは大変なことです」との一節を、実感として私も捉え始めている。  

[目次に戻る]