近 く に 紅 葉 を 求 め て

07’11’26
 晩秋。 私の好きな季節である。

 晩秋から初冬にかけての季節は、いくばくかの心細さを伴いながら足早にやってくるものと思ってきた。 しかし、今年は夏の猛暑を引きずるかのように、秋になってもなかなか気温が下がりきれず、いやでも地球温暖化の影響が出てきていることを思わずにはいられない状況になった。
  夏が暑く、秋に一気に気温が下がる年は、紅葉がすばらしいと言うのに、これでは今年の紅葉は望み薄だと半ば諦めていた。
  九月末から十月のはじめにかけて、散歩道の桜並木は早くも葉を落とし始めていた。 美しく色づくこともしないまま落ち葉となって、木の下で茶色に変わっている。

  私の住む羽村は、この辺りでは桜の名所とされ、花の時期には恒例の「桜祭り」も催され、各地からの人でにぎわう場所である。 春の騒ぎとは打って変わって、秋、美しく紅葉した静かな桜並木の下を散策するのは、近くに住む私には大きな楽しみなのに、今年はその楽しみを奪われた形だ。
  桜の花はほぼ毎年同じ美しさで咲くが、紅葉は年によって大きな差が出る。 紅葉に関しては、かなり難しい木のようで、ため息の出るほど美しい年は意外に少ない。 しかし、今年のように紅葉の季節に、葉がないのもまた珍しい。

 毎年、どこかできれいな紅葉を見たいとは思う。 日本全国、紅葉の名所は数あれど、近くて簡単に行けて、すばらしい紅葉の見られる場所となるとなかなかみつかるものではない。
  名所である必要はないし、あまり人がいない場所ならばなお結構と言うわけだ。 つまり、どこかに穴場はないものかと思うのである。

 時として、日常の買い物の途中などでも、はっとするほどきれいな紅葉に出会えることがある。 カメラを持ってまた来ようと思ったりする。
 先日も、時々行く多摩川対岸のあきる野市のスーパーへの道すがら、街路樹の紅葉が美しいのにうれしくなった。 翌日、同じ時間帯を狙って、今度は写真撮影のために出かけた。 車で十分とかからない場所である。
 何度も通っている道なのだが、紅葉の美しさが最も発揮されるのは、太陽の高さとの関係が大きいから、ぴったりのタイミングに行き合わせないとその美しさを見損なうのである。 それはちょうど、夕焼けが刻々と色を変えていくのに似ている。 「今」が大事で、五分後はもうだめなのだから・・・。

  車の中から見て、それまでは、なぜか「はなみずき」の並木と思っていたのだが、とっくりと近くで見たらまるで違う木だった。
  家に戻り、木の名を調べる。 「街路樹・種類」で検索したら、ずらりと名前が並んだ。 大体はおなじみの名前だったが、知らない木が一種類ある。 「もみじばふう」だ。 次は「もみじばふう」で検索する。
  どうやら紅葉の美しい「ふう」と言う木らしいことはわかったが、「もみじば」ではない。 葉が五裂か七裂と言う点が違う。 三裂なのだ。 「かえで科」と「まんさく科」の違いもあるらしい。

  検索を重ねて得た結論は「まんさく科」の「たいわんふう」と言うことで、私も思いがけず新しい知識を得ることができた。 紅葉、黄葉が非常に美しい木である。

  今年の紅葉はひどく遅れていて、全般的に色が悪いと言うが、このところ気温が下がり、羽村の街路樹、銀杏も急速に色づき始めた。 中学校前の何本かの欅も急に美しくなった。  師走間近のこの時期になってである。
 このところ、何かと用が重なり、遠出は難しかったのだけれど、きれいな紅葉の見られる場所が、結構近くにもありそうだ。 しばらくはお使いの足を伸ばして、近くの街路樹を眺めて歩くのも悪くはないなと思い始めている。 これだって、「穴場」と言えば言えなくもない、と思うのは負け惜しみかもしれないが・・・。    

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