12’3’12
私の「高齢者講習」受講は今回で二回目だった。 「予備検査」は初めてだったが、これに関しては、検査方法も問題も警視庁のホームページに公開されているのを、あらかじめ見ておいたから特に心配はしていなかった。 検査問題が公開されているのはおかしいように思うが、これを見ておけばできるのであれば、「認知機能」に問題はない、との判断なのだろう。 実際には時間的にもかなり余裕があって、受講者九人のうち半数は「満点」だった。
実技に使う車は、教習車で、前回は、MT車(マニュアル車)か、AT車(オートマ車)かを選択することができたが、その時、九名の受講者中、MT車を希望したのは私だけだった。 三人ずつ一台の車に乗り、交代で運転するのだが、私の番になったときには全員がMT車に乗り換えたのだった。 「次回にはMT車はなくなりそうですね」と私が言うと、「あなたのために残しておきますよ」と笑っていたが、案の定、三年後の今回はAT車オンリーだった。
少し前に、シニアのメーリングリストへの投稿で、「教習所の車が、全部AT車だった」と読んでいたので、私の予約した羽村の教習所も多分同じだろうと思っていた。 自分の車以外は乗ることがないので、私はAT車を運転したことはなかったが、教官が同乗してくれるわけだから、どうにかなるだろうと考えていた。
今回も一応、「AT車では困る人、いますか」と聞いてはくれたが、「教えますから乗ってみてください」とのことだった。 やはり、そんな「時流から遅れた人」は私だけだった。 何しろ、AT車の普及率は98%だそうだから、当然の話である。
一緒の車に乗った男性が先ずトップを切って運転したが、少々滑らかさにかける運転だった。 街中を走るのと違って、狭いから加減速が急になりやすいのだろう。 次は私。 最低限の操作の仕方を教わり、すぐ発進。 MT車は、アクセルを踏まなければ動き出さないが、こちらはのろのろ動き出す。 半クラッチの必要もないし、ギヤを変えることもなく右足のアクセル操作だけ。 停まるにも、ブレーキで速度を落としながら左足でクラッチを切ってブレーキを踏み込むという過程の「クラッチを切る」操作がないので、左の手足が「暇」である。 コースを先ず一周したが、左の手足がなんとなく「手持ち無沙汰(足持ち無沙汰?)」だ。 実技もあっさり終り、「運転には問題がないし、三十分も練習すれば大丈夫だから、今度買うときはAT車にしなさいよ」ですと。
障害のある娘がいるので、我が家では車は必需品だ。 今の車には、もう十年以上乗っている。 この先何年運転できるか知りたいところである。 後、十年も乗れるのであれば、今のうちに買い替えた方が良いのかもしれないが、一〜二年で終わるのであればこのままで良いし、と考える。
しかし、新車もいいなぁと思う。 そのときはAT車かなと夢も膨らむ。 夢だけならいくら膨らんでも費用はかからない。 AT車の運転の仕方も調べてみる。 例によってネットである。 MT車から乗り換えた人の感想も出ている。 AT車限定免許の人が多いのは、運転が楽で、簡単に免許が取れるためらしい。 昔はみんなMT車で免許を取ったわけだし、私自身、運転を面倒と思ったことはないが、これしか乗っていないのだから何とも言えない。
いろいろ読んでいて分ったことは、世の中にはMT車に乗りたい人が結構いる。 ただ、家族に「限定免許の人」がいると、やむを得ずAT車を購入することになるらしい。 どうやら、「運転が楽なのはAT車、乗って楽しいのはMT車」ということになるようだ。
教習所のコースを十数分走っただけだが、操作が少ないのだから楽なのだろう。 でも、確かに、なんとなく物足りなさが残った。 マイカーで、少し遠方まで足を伸ばして運転していると楽しくなるのは事実である。 自分で車を動かしていると実感できるからなのだろうか。 速度によってギヤを切り替えたりすることもほとんど無意識にやっている。 切り替える時に、走りに多少滑らかさはなくなるのだろうが、一人で乗っていることが多いのであまり気にもならない。 AT車に乗っていて、エンジンブレーキを利かすことのできない人もいるのだそうだ。 それでも運転のできる車らしい。 AT車の事故は大事故が多いのも恐ろしい。
若者の車離れが進んでいるという。 教習車の横腹にも、「免許を取ろう」の文字がある。 昔の教習所の混雑が、信じられないほどロビーもも空いていた。 AT車全盛で、「運転の楽しさ」が半減したからというわけでもあるまいが・・・。
日がたつにつれて、教習所の教官殿のお勧めもあったが、私はやはりMT車のままでいいかなと思い始めている。 「今は消防車だってATだよ」と言った人には笑われるかもしれないが、仕事に使うわけではないし、乗っていて楽しい点は捨てがたい。
いまや日本では、「絶滅危惧種」となったMT車である。 「種の保存」のためにも2%の中に身を置くのも良さそうだ。 そのうちには、AT・MTが切り替えられる車が出現しないとも限らない。 もっとも車種によってはMT車がないそうだから、時代の流れは完全にAT車である。 だが、この歳になって、いまさら時流に乗る必要もあるまいし、一人くらい「変なバァチャン」がいても良いのでは、と考えるのである。 次回の高齢者講習には、また、「ちょっと、教えてもらって乗れば済む」ことだから・・・。
次回の「認知症検査」で、満点を取る事が無理になっているとすれば、その方が問題なのかもしれない。