庭の秋

04’11’24
 十一月も末近くなった。夜明けも遅い。朝六時過ぎに雨戸を開ける。まだわずかに暗さの残る庭のかえでの赤さが際立つひと時である。その向こうの更紗ドウダンは面白い。上のほうは赤い葉、下のほうは枝先に赤いところがあるものの、全体的には黄色い。枝垂桜は早々と葉を落としてしまっている。山吹は残り少ない葉が鮮やかな黄色、ムクゲはまだ緑の残る黄色だ。少し離れた一本はもう葉を落とし切っていると言うのに。ピラカンサと梅モドキの実が彩りを添え、山茶花の花が華やかさを演出する。 
 今年の夏は大変な猛暑だった。年平均気温を「並」にするには冬が寒くなければ、と考えるところだが、一向に寒さが加わらない。そのせいで、今年は名所と言われるところの紅葉も今一つ冴えないものになっているようだ。 
 近いところを眺めても、例年真っ赤になる楓の色が今年は茶色味を帯びて、思わず足を止めるという色にはなっていない。我が家の門口の楓も、年によっては通りすがりの人に「きれいですね」と声をかけてもらえるのだけれど、今年は色づかないうちの落葉が目立つ。 

 今年、上陸した台風の数が十個。各地にその爪あとを残した。過去最高は六個だと言うから今年はやはり異常と言えるのだろう。一ヶ月前には「新潟県中越地震」で大きな被害が出ている。この気象の異常さを反映している今年の紅葉事情なのだろう。

 朝日があたり始め、葉に降りた露が光り輝き、やがて乾くころになると、庭の紅葉は逆光をすかして最高の美しさを見せる。 
 それぞれの葉にそれぞれの影を落としながら、かすかな風に揺らめく様は秋ならではの雰囲気をかもす。カメラに収めておきたくなるのは、こんなときである。何度写しても同じようにしか写せない腕前を残念に思うときでもある。 
 日が高くなるともう終わりだ。朝のうちあれほど美しかった紅葉も色あせ、近くで見ると、葉先には「痛めつけられた跡」が歴然としている。

 山の木の実が台風で落ちてしまい、熊が人里に下りてきて各地で騒ぎを起こしている。山に木の実がないのは鳥たちにとっても同じだろうと思うのだが、我が家に来る鳥が今年は少ない。 
 例年、庭に赤い実が目立つころにはヒヨドリやキジバトと言った「大食い」の鳥がやってきて、たちまち食べてしまうので、お正月の花に使いたい南天の実に袋をかぶせたりと、「鳥対策」を講じなければならなくなるのに、今年はまだ無事である。鳥の数も確実に減っているのは確かだ。

 山茶花の優しい香りがただよう庭も、そろそろ冬姿に移る時期である。気象の異常さが、当たり前のようになっているこの節、今年の冬がどんな冬になるのだろうかと案じられることである。


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