流行と私

05’6’10
   ツィッギーというやせぎすのモデルさんがミニスカートで日本に来たのは、1967年の秋のことである。 この人の来日を契機として、日本ではミニスカートが大流行した。 老いも若きもミニスカートをはいたものだ。 当時まだ三十代初めの私ももちろんその一人だった。 日本女性のなんと九割以上がミニスカートをはいたと言う。 

 当時は正座するのが当たり前の時代だったから、行儀の良い人ほど、膝が目立ち、ミニスカートは似合わないと言われ、痩せ型の人がはいてこそ似合うのだから、とも言われたが、そんなことにはお構いなくミニははやった。 あれほどの流行は二度とあるまいと言われている。
 しかし、着るものについて言うならば、業界の作り出す流行のきらいはあるものの、入れ替わり立ち代り流行はやってくる。 そのサイクルは早く、そしてめまぐるしい。 

 小型のリュックが流行したのは何年前のことだったろうか。 若い女性の間で大流行したものだ。 みんな背中のやや下に可愛いリュックを背負っていた。 今はほとんど見かけない。 それと、ロングスカート。 引きずりそうなスカートが結構人々に好かれていたようだ。
 日本人の体型も変わり、足の長くなったことは驚くばかりである。 ロングスカートでも、ミニスカートでも形よくはきこなす。 「スカートの丈と幅が同じ」なんてことは今や笑い話である。

 現代は、かつてのミニスカート大流行のように、「誰でもが着る」のではなく、それぞれのおしゃれを楽しんでいる。 とはいえ、大きく分けて、若い人と中高年とはそれぞれ着るものの傾向が違うようだ。
 ロングスカートも、若い人にはほとんど見られなくなったが、年配者の中にしっかりと根を下ろしている。
 ちょっとおしゃれな中高年にロングスカートは好まれ、行動派には、パンツスタイルが好かれると言うところだろうか。 高齢者には、ミニリュック愛用者が多い。 何といっても楽である。 

 おしゃれのためなら、少々の不都合も我慢するのが女である。 その結果、足が痛くなっても流行型の靴をはくとか、流行の服を身にまといたいと思うことになる。
 おしゃれに夢中の人には「それしかない」とも聞くが、「それもない」のが今の私である。 

 年を重ねるにつれて、機能性第一と言えば聞こえはいいが、おしゃれよりも「楽が一番」になってくるのは、いかんともしがたい。 
 同年輩でも流行に常に気を配っている人は多く、今頃スリットのスカートをはく人はいないとか、最近は革のバッグを持つ人がいないなどの話になる。 
 私は流行への関心も薄れ、常にマイペースである。 考えてみれば、若い頃からその傾向はあったが、人生の残り時間の少なくなった今は、ほかに関心を引くものがあまりにも多すぎるため、とでもしておくとしようか。 服装が流行には無関係であっても、せいぜい、腰をしゃんと伸ばして、「颯爽と?」歩きたいものだとは思っている。    


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