05’7’11私は非常に物持ちのよい人間である。 と言うと、さぞかし物の扱いが丁寧で、もの静かな人を連想されるだろう。
世の中には、買い物が好きな人がいる。 「ウインドウショッピング」なる言葉もあるくらいで、買う予定はないのに商品を見て歩くのが好きだと言う。 私はいよいよ買わなくては困る事態に立ち至って、やっとお神輿が上がるものの、必要なものの売り場に直行して、買えばまっすぐ帰ってくる。 要するに、買い物に出るのがおっくうなのである。 そのくらいだから、どんな品物も使える間は使っているし、買い物もきわめて下手だ。まだ若い頃、庭で履くのに、木のサンダルを使っていた。 庭だけで履くのだからさして減ることもないはずなのに、かかと部分が地面と平らになるほど減り、ついにはぎざぎざになってしまった。
家の者も何も言わないし、特に問題もないので、そのまま履いていたところ、隣に住む義姉があきれて、「下駄屋が泣くよ」と言った。 以来、それほどにならないうちに処分することにしていたのだけれど、義姉が亡くなった今はまた、破けたサンダルだ。 娘に「買えば」と言われながら・・・。
汚れの落ちにくいものにはやはり、固形石鹸の威力が必要と、使っている洗濯石鹸の入れ物が洗ってもきれいにならなくなった。 初期のプラスティックで、しっかりできているが、ついた傷に汚れが入り汚くなった。
以前買った朱肉が結構使える品物だったので、また100円ショップででも買って来ようと思いながら、道路をはさんだ場所にあるスーパーには年中行くのに、なかなか向かい側の100円ショップには行かなかった。 利用する人が大変多い店で、土日には車の出入りを整理する係りが立つほどの盛況である。いろいろ買う必要のあるものがたまったので、梅雨の晴れ間にまとめて用足しに出た。 石鹸箱も、その一つ。 店に入ってもめったに行かない店は、どこに何があるのか分からない。
めでたくみつけた石鹸箱は、迷うほどの種類はなかったが、100円にしてはしっかりできていた。 今日は売り場を探しながら、結構いろいろなものを眺めた。 本当に何でもある。ベテランの話によると、こういう店は使うのにコツがあって、意外な掘り出し物もある代わりに、損な買い物をすることもあるのだそうだ。 100円だからと、ついついいらないものまで買ってしまいがちだとも聞いた。
ごみは確実に増えるのだろうが、安いものを買い換えながら、きれいに暮らすのが当世風ということなのだろう。 店から出てきたときには、わずかな間に駐車場が満車になっていた。あっさりきれいな石鹸箱に変って気分もすっきりした。 古い石鹸箱をごしごし洗う労力は100円以上につきそうだなと思った。
でも、この新しい100円の石鹸箱も、多分私には「一生モン」になることだろう。