11’5’10
今年3月の東日本大震災で、福島原発が大きな被害を受け、東京電力供給地域に住む我々は、否も応もなく節電せざるを得ない状態に追い込まれた。 実際に停電したのは何度でもなかったが、「計画停電」なるものも経験し、電力需要のピークである夏を迎えるにあたっての不安は大きい。
電力不足が生産に影響することを懸念して、生産の主力を関西に移す企業の話も耳にしていた。 「計画停電」が、直前にならないと実施か否かが分らないのは、家庭生活においても不都合ではあったが、企業にとっては更に大きな問題になったようだ。 いわゆる生産ラインを止めたり動かしたりできないケースも多いらしいし、スーパーに勤める友人の話では、停電前に店を閉め、通電と同時に店を再開するのは大変だったと言う。 電気を使わなくては仕事にならない歯医者さんでは「予約が取れない」ことが問題だったと聞く。
一方、夏の節電対策として、今年はゴーヤの苗が良く売れているという。 緑のカーテンを作ることで、室温の上がるのをかなり防げるのだそうだ。 実は食べられるし一挙両得ということだ。 昼間の暑さは緑のカーテンを通して吹く風でしのげたとしても、夜になってもなかなか気温の下がらない日も多いから、夜はどうしてもエアコンがほしい。 高層住宅に住む人ならば、開けっ放しで寝る事もできるかもしれないが、用心も悪いし、今時「蚊帳」の用意のある家もないことだろう。
昨年は「熱中症」で何人もの方が亡くなった。 エアコンも扇風機も使えないとなると、それもまた心配である。
この電力不足を「生活の見直しの機会」と捉えようと言う意見も多い。 私たちの日常は、確かに昔とは比較にならないほど電気を使う生活になっている。
最近、新聞の投稿欄で、「電気の契約を30アンペアに下げた」と言う人の文を読んだ。 今、一般家庭の契約は最低でも50アンペアくらいだろうか。 エアコンを全室につけている家も多い。
我が家は昭和30年代の初めに建てた家だが、当時は15アンペアだった。 それしかなかったと記憶する。 その後「20アンペアができました」と聞いて20アンペアにした。 今は30アンペアである。
30アンペアでは、冬はよくブレーカーが落ちるので、もう少し増やしたいと思って東電に連絡したところ、古い我が家は電気の配線からやり直さないといけないのだそうで、それも面倒とそのままにしていると言うわけである。
真冬の朝、コタツをつけ、エアコンもつけ、テレビもつけ、パンを焼きながら牛乳をチンしようとすると危ない。 冷蔵庫に通電中の音が入ることもあるし、早く洗濯機も回しておきたい。 明かりのほしいときもある。
しかし、慣れてしまえば、小人数の我が家では、当然のように、レンジを使うときは「コタツを切って・・・」で済む。 パンもガスの魚焼きグリルで焼く。 生臭くなると言う人もいるが、そんな心配のないことは科学的にも証明されることだ。
やむを得ずではあったが、図らずも、我が家は長年「節電生活」をしていることになる。 受験生でもいて、幾部屋にも冷暖房が必要だったりすれば、30アンペアはきついかもしれないが、やり方次第では「どうにかなる」ものである。
例年、夏の日中は廊下も窓も開け放ち、団扇を傍らにおいて「自然」のままに暮らしているのだが、昨年のような猛暑では心配だ。 齢をとり、あまり無理もしたくない。 消したエアコンの下で、熱中症で倒れているのでは困る。 「計画停電中」ならば、東電の責任問題にまで発展しそうな話になってしまう。
おりしも、中部電力浜岡原発も停止の方向へ向かい、エネルギー政策も見直しを迫られた。
とりあえず、この夏を無事に乗り切れれば、とは思うものの、不安はぬぐいようがない。
ひょっとすると、「節電も命がけ」になろうとは、思いがけないことになったものである。