11’10’11
それが原因なのか、私は足に合う靴を探すのに苦労するようになった。 昔から、革靴に関しては、デザインを重視するものだから、少々痛い靴でも我慢して履いたりしていたが、運動靴とかズックとかいった靴は、足になじみ、履きやすいものだった。 それがスニーカーなどと呼ばれるようになったころから、どうもうまくない。 デザインが派手になり、カラフルな「運動靴」が靴屋の店頭を飾るようになってからは、ますますいけない。
最近のスニーカーは、先端が扇形をしているものが多い。 一方わが足を見ると、足の指は一番長い第二指を頂点にしたほぼ三角形である。 幅も5Eなんてサイズがあるのだから、がっちりした足の人が多いと言うことなのだろうが、わが足は甲も低く、少し長さに余裕を見れば幅がありすぎるし、幅を合わせれば第二指が悲鳴を上げるという寸法だ。 前に調子がよかったメーカーの靴を選んでも、やはり同じ結果だ。
短時間履くには問題がなくても、「歩いて行こう」などと思って出かけると、帰りは痛さをこらえることになる。
そこへ行くと登山靴は、中に履く靴下の厚みが違うとは言え、先も丸いのに、幾日履き続けても何ともないのだから、スニーカーでそれができないはずはないのにと思ってきた。
たまたまそんな話をしていた時に、「“2千円や3千円の靴では無理”と聞いた」、と言う人がいた。 若いころからランナーとして成らした人で、定年後の今もランニングをされている人の話だと言う。
確かに、登山用品専門店で、里山歩き用に買った靴は、これも先は丸いが問題はない。 ただ、街中を履いて歩くには少々ごっつい感じである。 それと、「街中で履くわけじゃないから」と買ってしまったのだが、たまたまそれしかなかった赤い色も、気になった。 もう少しおとなしい色の靴ならいいかもしれないと考えた。
着る物は多少気になるところがあっても我慢できるが、靴だけは足に負担のかからないものでなくては困る。 靴に当たる指の痛さをこらえて長い道のりを歩けるものではない。
自己診断の「筋痛症?」も一年たって、だいぶ落ち着いてきたので、そろそろまた山歩きを再開したいと考えていた。 そのためにも、近くの草花丘陵のアップダウンで足慣らしをしたかったし、平地でのウォーキングの距離も延ばしたかった。 ウォーキングの時間が取れないときには、いつもは車を使ってしまう用足しを歩くことにしているので、街中を歩いても気にならない靴も早く欲しかった。 久しぶりに昭和記念公園を歩きに行ってみたいとも思っていた。
おなじみの登山用品専門店に、ベージュ色でもないかな・・・と考えながら出向いたら、運の良いことに一種類だけあった。 赤い靴よりも多少ゆったりできていると言う。
「店内を少し歩いてみては・・・」と店員に勧められて、広い店の中を歩く。 足にしっくり来る感じが快かった。 やはりちょっとごつい感じはあるが、「シティから里山まで・・・」と、その靴の棚には書いてあった。 さしあたり、ベージュは「シティ用に」、赤は「里山歩きと近所のウォーキング用に」と履き分けられそうだ。
帰ってから、ナップザックを持ち、おニューの靴を履いてスーパーへ歩いて行った。 ザックの紐が肩に食い込んで、そちらは痛かったが、靴の調子はよかった。 重くなるのは分っていたのだから、山用のザックで来れば楽だったのに、と思いはしたが、靴の履き心地には満足した。
「2千円や3千円の靴では無理か!」と改めて思った。
そのレベルの靴ならば、何足か買えてしまう値段ではあったが、秋晴れの下を歩き回る気持ちよさを思えば、「生きたお金の使い方」ができたのだろうと思った。 今まで、譲ってしまったり、処分したり、「安物買いの銭失い」を実践してきたと言うことになろうか。 年を重ねるとは、お金もかかるようになると言うことらしい。
「たかがウォーキングシューズ、されどウォーキングシューズ」である。