ワカメの炒めもの

03’12’11
 フライパンにごま油とサラダ油を入れて火にかける。 まだ十分熱していないけれどね、と自分に言い訳をしながらワカメを入れる。 固めに戻して食べやすい長さにきったワカメだ。
 ジャージャー派手な音を立てながらワカメを炒め、しょうゆとたっぷりの削り節をドサッと入れてかきまぜると出来上がり。
 これがなかなかおいしいのである。 ついでに言えば、低カロリーのヘルシーメニューでもある。 私が向田邦子さんから教わった”ワカメの炒め物”なのだ。
 そう、向田邦子さんのエッセーに出てきたメニューというわけである。 「長袖に着替え、はねる油を、手にした鍋蓋で、塚原卜伝風に防ぐ」とある。 それをサボり、早めに材料を入れてしまうのが私流。 したがって、習ったとおりにやって、ポチポチやけどをしたと言う石田あゆみさんの轍は踏まずに済んでいる。
  この炒めワカメは上等の器にぽっちり入れて出すのがミソらしい。
 厚みのある上質のワカメのほうがおいしいのは言うまでもない。 これまでも「ワカメのお刺身」と言って、生ワカメに、削り節を載せたり、ツナのフレークを載せたりして食べてきた。 それも意外においしいものだが、この炒め物は、一手間かける分さらにおいしい。
   おいしいワカメの仕入先だった義姉も亡くなり、向田さんもすでにない。 ご自分のエッセーがこんな形で役に立っていることを、向田さんはあの世で苦笑されているだろう。
 私はおかげさまで、相変わらずワカメを簡単においしく食べている。 そして、向田さんのようなエッセーが書きたいものだと思い続けている。 鍋蓋片手にワカメを炒める向田さんの姿を思い浮かべながら・・・。
 ちなみにこの料理?、向田さんの「早いが取柄手抜き風」の中の一品。 まさに私向きである。

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