11’7’13
春が寒かったので、庭の雑草も成長が遅く、背丈が低かったものの、良く見ると、ちゃんと種ができているのだから恐れ入る。 暑くなると、一挙に庭の雑草どもも元気になった。 今年は草むしりに追われなくて助かるかと思ったが、やはり、そうは問屋がおろさない。
遅くとも六月いっぱいには刈り込んでおきたいツツジ類も気にはなったが、庭一面を緑色に覆う草の伸び方の方がストレスの元になりそうなので、ツツジの刈り込みは今年は中止と決め、草むしりが始まった。
お上品な「草むしり」ではない。 我が家のは、言うなれば、「スポーツ草むしり」だ。 色のあせた長袖のポロシャツに、亡夫のお古のジャージのズボン。 頭には手製のタオルの帽子、首に手ぬぐいをぶら下げ、足元はボロズックというのが「草むしり」の定番スタイルである。 蚊取り線香を連れに、小さな鎌と草かき、百円ショップで購入した熊手を元洗い桶の中に納めて準備完了。 そうそう忘れてはいけない、ホームセンターで仕入れた四輪つきの椅子も必需品だ。
昭和天皇が、「雑草と言う名の草はない」とおっしゃったそうだが、植物をこよなく愛された方なのだろう。
次々と生えてくる草には手を焼くが、それぞれ一生懸命生きていることは確かである。
気が付けがそこらじゅうにはびこっているのが「庭ホコリ」。 ちょっと見ると、庭にホコリがたかっているように見えるから「庭ホコリ」だと言う説もあるらしい。 「言えてるなぁ」と納得する。 小さいながらしっかり根を張り、私の苦手な草の一つである。
一段と暑さが加わる頃には、草もいかにも「夏草」と感じさせるたくましさを備える。 ほうって置けば「猫じゃらし」の出現となる草だ。 これは引っ張れば地上部分だけが千切れ、ほどなくまた葉が伸びてくるのだから、きちんと根を取らなくてはならない。
草むしりのコツと言うか、きれいになったと見せるためには、すうっと伸びる葉を残さないことである。 草花の中に、すうっと葉が見えるのは駄目。 更に、石の際に土を見せることも忘れてはいけない。
プロの掃除人が、水回りをきれいに見せるためには、蛇口をぴかぴかにするのがコツ、と話していたが、何事にも「コツ」はあるものらしい。
一渡りきれいになったと思う間もなく、気が付けば「ザクロソウ」が花をつけている。 葉がザクロに似ているのだろうか。 花は小さくて、ルーペでなくては見えないが、可愛い花である。 花が可愛いので、取るのを加減したものだから、すっかりはびこってしまった。 キュウリグサの「二の舞」である。
はびこると言えば「キランソウ」。 「キランソウは絶滅危惧種なのね」と言う友達の言葉を信じて、我が家では「保護種」に指定した。 その結果、「絶滅」どころかはびこりすぎて、今や抜いても抜いても「絶えることのない種」とはなった。
これから、心を鬼にして?抜かなくてはならないのが、「スベリヒユ」。 そして、げっそりさせられるのが「コニシキソウ」。
スベリヒユはご存知、「ポーチュラカ」の原種か親戚だと思う。 黄色い小さな花が美しい。 食用にもなるらしい。 茹でて、辛子醤油で食べるのがポピュラーな食べ方だそうだが、まだ食べたことはない。 たまに畑の縁などで、大きな株に育ったものを見るが、我が家ではその手前で抜いてしまうと言う事情もある。
コニシキソウは苦手だ。 地表を這って伸び、根が意外に深い。 この草は一名「小僧泣かせ」というのだと教えてくれたのは亡夫である。 我が家では、差し詰め「ばばぁ泣かせ」と言ったところだ。
「オオニシキソウ」は可愛い花や実をつけ、楽しませてくれるが、「コニシキソウ」はどうも私とは相性の良くない草である。
「ハキダメギク」は、ちょっと気の毒な名前だが、きれいな花だし、抜くのも簡単、私にとっては「いい子」の部類である。
「草の名に詳しいね」と言ってくれる人がいる。 毎年、これだけ深い付き合いをしているのだからと、苦笑せざるを得ない。 しかし、同じ草でも名前を知っているのと知らないのとでは「親しさ」が違うのも、事実である。
散歩していても、道端の草の名を知っていれば散歩もぐっと楽しくなる。 知らない草がきれいな花をつけていたりすれば、「調べよう」と言う気にもなるし、名前を知る喜びも生じる。 「楽しい」が「好き」に通じ、なんとなく名前も覚える。
草むしりが、実はあまり嫌いではない理由も、この辺にあるのかもしれない。
早朝五時からの草むしりは、文字通り、「朝飯前の仕事」なのだが、毎朝ほんの少しずつの作業なので、一巡し終わる頃には、次の草が「お待ちかね」である。 時期をずらしながらそれぞれの草が、自己主張しているのだと、思えなくもない。 「雑草」などと一くくりにされないために・・・。
「雑草のようにたくましい」と言うが、それぞれが個性的な草たちであることに敬意を表しながら、これからも付き合いは続くわけだ。 お手柔らかに・・・と願いつつ。