『日本茶の茶葉で紅茶を作ろう』解説編
         『2007年6月 日本茶の茶葉で紅茶を作ろう』同好会
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        紅茶の作り方                       2007.6.19

 (日本茶の葉を用いて紅茶を作る)

【オーソドックス製法】

摘採(てきさい)→茶摘みは一芯二葉(一つの芯に若葉二枚と新芽)の形で行われる。
15〜20
Kgの生葉から紅茶の葉になるのは約5Kg(実際どれだけ取れたかは不明)

   →→→→葉を水洗いして汚れを取る

萎凋(いちょう)→摘んだ生葉を萎凋槽に入れ、温風を当て8〜10時間かけてしおれさせ水分を取り除く。

   →→→→新聞紙上で扇風機を弱に一夜乾燥(15時間位)

揉捻(じゅうねん)→しおれてもみやすくなった葉を揉捻機(ローリングマシン)にかけて葉汁を出す。
茶葉の細胞が破壊されて発酵が始まる。

   →→→→手もみをする (約1時間)

玉解き(たまどき)→もまれた葉が塊になるので、これを解きほぐしてまた揉捻機にかけて発酵を促す。

   →→→→時々再度手もみをする

発酵(はっこう)→揉捻された葉を発酵室へ運び、温度25〜26℃、湿度90%の状態で発酵させる。
紅茶のコクや香りはここで出来上がる。

   →→→→箱の中に水を入れ、アルミホイルを下に引き、手もみした茶をのせ濡らしたキムタオル
をかける。27℃ 
5時間位

乾燥(かんそう)→発酵を止めるために熱風で短時間に乾燥させる。これで「荒茶」が出来上がる。

   →→→→70℃ 4時間位

等級区分→荒茶をその外見から大きいものと小さいものなどに区分けする。

 

緑茶と紅茶の決定的な違い、それは発酵の有無にありました。
緑茶では摘んだ葉を加熱することで、葉に含まれている酵素の働きを停止させます。
紅茶では汁がでるくらいに葉をもんでわざと葉に傷を付け、緑茶とは逆にこの酵素の働きを利用しているのです。
緑茶の作り方はこちら

 紅茶は、もともと中国の緑茶をヨーロッパまで延々とシルクロードをとおって運ぶ間に赤茶けて紅茶になった、という話を聞いた記憶があります。
緑茶のように製造工程のなかで一度加熱して、酵素の働きを止めたものは赤茶けた紅茶にはなりません。
シルクロードをとおる間に葉が発酵して紅茶が生まれた、というわけです。
こんな紅茶のことを考えていると、遙かな時の流れを超えてシルクロードに対して急に親近感が湧いてきました。

基本的な材料

茶の葉 (今回は茶葉として桜の葉を使用)


Let’s start!

http://www.ajiwai.com/otoko/icon/tejun.gif

作り方

 

【摘採(てきさい) plucking 茶摘み】

 茶の新芽を摘みます。今回は桜の葉を使った紅茶を作っていますが、桜の葉に限らず作り方は同じです。  ※桜の葉に深い意味はありません、単に茶の葉を入手できなかっただけです。  (^^ゞ  

【萎凋(いちょう) withering しおらせる】

 摘んだ茶葉を水でさっと洗い、扇風機の風に当てて、しおらせます ※1。痛んだ葉があれば、取り除いておきます。

【揉捻(じゅうねん) rolling もみ込む】

 茶葉をもむことで葉の表面に傷をつけます ※2。かなり重労働です。欲張ってたくさんをわしづかみにしても、しっかりもむことはできません。少量ずつ手にとって、丹念に両手の手のひらを使ってもみ込んでいきます。私は2つの漬け物石を石臼のように使って葉をすりつぶしました。

【発酵 fermentation 発酵させる】

 温度20〜26℃、湿度90%以上で3〜4時間発酵させます ※3。草っぽいだけだった葉の香りが、発酵を終えると紅茶の色と香りになっています。
発酵には保温調理鍋のシャトルシェフを使ってみました.

【乾燥 firing 火いれ】

 茶葉を1〜2分ずつ小刻みに電子レンジにかけて ※4、乾燥度合いを確認しながら乾燥させます。湿り気が無くなるまで繰り返します。

あら熱をとり、湿気をとばせばできあがりです。

【試飲】

 午後のひとときに、桜葉の紅茶を楽しみましょう

ここでの「こつ」

※1 【しおらせます
 急がないようであれば摘んできたままザルに広げておき1日待ちますが、急ぐようであれば扇風機に当てれば
3時間〜6時間くらいで同じ状態になるはずです。
工業的にはこのしおらせる工程の目的として、以下の2点が上げられます。

   1.次に行う、「もみ工程」に備え、茶葉を柔らかくするため
   2.季節や天候による茶葉の乾燥のばらつきをなくし、自動化工程での発酵を均一にするため

※2 【茶葉をもむことで葉の表面に傷をつけます
 本当の(桜の葉ではない本来の「お茶」という意味)茶葉にはポリフェノールオキシターゼという酵素と
ポリフェノールが含まれています。
もむことによって、茶葉に含まれているポリフェノールと酵素を接触させ、発酵(酸化)させているのです。
この発酵により草の香りは甘みに変化します。
つまり、もみ方が強いほど甘く、弱ければ草の香りが残る茶となります。
桜の葉も、もむ前に蒸気を当てているものと比較すると、顕著に赤黒く変色しました
(ポリフェノールオキシターゼ効果??)

 揉捻(じゅうねん) は、結構力がいりました。はじめはテレビでみた茶揉みのように手のひらを使って揉み
込もうとしたのですが、それではなかなか発酵せず草のにおいがそのまま残ってしまいました。 
発酵が正常にすすめば草のにおいは酵素の働きで甘みに変化するということですから、もみこみが不足していると
判断し、石と石を使って葉をこすりあわせたわけです。 石と石ですりつぶすときに手加減はせず、できうる限り
均一につぶすようにしました。

※3 【発酵させます
 この発酵は、揉捻(じゅうねん)によって絞り出された、「茶葉に含まれているポリフェノール」と「酵素」が反応する
発酵です。
ポリフェノールが酵素の働きで酸化され、テアフラビンとテアルビジンに変化し、紅茶独特の赤っぽい色に変化します。
 今回使ったシャトルシェフでは、通常空気層になる空間に25度前後の湯をコップ1杯ほど張っておくことで、
温度と湿度を保てるようにしました。これと同じことはクーラーボックスを使っても可能です。

※4 【電子レンジにかけて
 1〜2分程度に分けて電子レンジで加熱することによって、酵素を破壊して発酵を停止させるとともに、
乾燥させて保存性を高めます。


緑茶(普通煎茶)の作り方

緑茶 用意するもの:生の茶葉(1kg)、蒸し器、うちわ、ホットプレート(フライパン)、和紙

 蒸し>冷却>乾燥させながら揉む>乾燥

 摘み方:簡単に折れる位置で。やわらかいところだけの方が新茶の香りと旨みがあって、揉みやすいですよ。

 蒸す:お湯を十分に沸騰させた蒸し器に、薄く全体に広げて20〜30秒。
途中はしでかき混ぜる。全体がむらにならないように。青臭い香りが甘くなればいいです。

 冷ます:取り出したらざるとかに広げてうちわであおいで十分冷まします。

 炒る:ホットプレートの上をきれいにして、またはフライパンの上に和紙(できればうどんこなんかをよく溶いてかきまぜながら煮たものをハケでぬって乾かした和紙)をおいて、ごく弱火でその上において炒ります。

 揉む:水分がとんだら、茶葉を両手で挟み拝むように揉む。水分が出てきたらまた炒るを繰り返す。だんだん力を加えていって、水分が出なくなったら和紙の上に広げて乾燥させます。

ウーロン茶の作り方
ウーロン茶 用意するもの:生の茶葉(1kg)、葉を広げる場所と布など、中華なべかフライパン(できれば鉄製)、

 日干萎凋>室内萎凋>炒葉>揉捻>乾燥

 摘み方:夏のほうがいいようです。煎茶が若い芽ほど価値があるのと逆に、芽が止まるまで大きくした葉の頃がいいようです。

 日干萎凋(いちょう):1メートル四方か畳一枚分の広さの布の上に生の葉を広げ、日光に当てます。時々撹拌しますと均一になります。茶葉の温度は30−40度が適当で、40度以上になるときは網などをかけて遮光します。普通は10−20分、曇っている日は30−40分かけます。
 上の葉の光沢が消えて、葉の表面に波状の起伏が現れて、手で持つと柔らかく青臭が消えた状態が適当です。重さで図ると10%前後減っています。

 室内萎凋:さらに室内で萎凋させます。同じように広げて1−2時間静かに置いた後、1分間軽く撹拌します。さらに静置しながら、一時間ごとぐらいに撹拌します。

 炒葉:中華なべかフライパンを熱し、160−180度(水摘を入れて玉になるていど)にします。そこに茶葉をドバッと入れるとややパチパチ音を立てます。手袋をして葉が焦げないように動かしながら炒ります。3−5分して手で握ると柔らかく、青臭が消えて芳香がでてくるころがいいそうです。

 揉捻:直ちに10分くらい揉みます。また150度くらいで炒葉し、揉捻をします。だんだん短い時間で4−5回繰り返します。

 乾燥:最期に硬くなるまでフライパンで炒めます。ただし、焦がさないように。



手揉み紅茶の作り方

手揉み紅茶 用意するもの:生の茶葉(1kg)、揉みこむときに力を加えてもいい台、竹篭(なければざるか箱)、竹篭がすっぽり入るビニール、タオル、ホットプレート(フライパン)、和紙(クッキングペーパー)、もしあれば目の粗い篩

 萎凋>揉捻>玉解き・篩分け>発酵>乾燥

 摘み方:手で揉む場合は、緑茶と同じでやわらかいところだけの方が揉みやすいです。緑茶と逆で夏に伸びてくる新芽を、気温の高い時期に揉む方が、いい紅茶になります。次の工程を考えると、その日の正午前後までに採るほうがいいでしょう。

 萎凋(いちょう):屋内の風通しの良い部屋で、竹籠などに広げて1昼夜おきます。生葉をしおれさせて柔らかくして、次の工程で揉みやすくするのと、茶葉の中の酵素を活性化させて香りや味を生成させるのが目的です。温度は22−27度というので、日本では夏がいいと思われます。湿度60%以下なので、湿気が高い日はうまくできないかも。
 柔らかな茎にしわが現れて、果実のようなさわやかな香りがしてくればOKです。

 揉捻:台の上で力を加えて一時間位揉みます。うどんを練るようにでもOKです。傷をつけるために竹篭などのざらざらした上で揉んでもいいです。ただし、指を怪我しないよう気をつけてください。茶葉の組織や細胞を粉砕し、酵素によるカテキンなどの酸化反応を促進させ、発酵が均一に早く進むようにします。だから、色が次第に褐色になります。
 ここで泡が出始めるということは、水分が多いということです。もっと「いちょう」させたほうがいいでしょう。

 玉解き・篩分け:揉むと塊になりますから解きほぐします。場合によっては篩にかけて篩から落ちたものは次の工程へ、残ったものはもう一度揉むようにします。ただし手揉みの場合、細かくなりにくいので篩にかけられないですね。

 発酵:竹篭か箱にいれて、ビニール袋につつみ、濡れタオルを入れて湿度を100%に保って、さらに発酵させます。時間はおよそ1〜2時間。温度は20−25度でOKのようですので、室温が高いときには屋内のままでもいいです。小さいと熱を放散しやすいので、はじめに熱を与えるために、屋外において日に当てて温度をかけておきます。自分でも発酵熱を出しますので、しばらくしたら屋内にいれてください。全体が褐色になり香りがでてきます。

 乾燥:100−105度の熱風を大量に供給する乾燥機に入れて、酵素反応を止めます、がそんな乾燥機はご自宅にはないので、ホットプレート(なければフライパン)を110度くらいにして、和紙(あるいはクッキングペーパー)をひいて15−20分乾燥させます。葉を時々動かすほうが均一に乾燥できてこげません。

 

お手軽な紅茶の作り方
→@茶摘み
→A摘んだ茶葉を一晩ひろげて水分を飛ばす(委周)
→B竹のザルを使って揉む(揉捻)
→C揉んだ茶葉をほぐす(解玉)
→Dオーブンの下の段にお湯を入れたボールを置いて40分ぐらい35前後で蒸しながら発酵させる(発酵)
→Eオーブンで100以下の温度で強制乾燥(乾燥・発酵の停止)
→F出来上がり