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実験用電源の作成

 

回路実験では、出力電圧が可変できて電圧と電流が同時に測れる電源があると便利です。そこで出来るだけ周りにある部品を使って実験用の電源を作成しました。

仕様:

出力電圧:設計対象になる機器の動作電圧として3.0V3.3V5.0Vなどが考えられます。特性把握のためには動作電圧を±20%程度振って測る必要がありますので大体2V7V可変できればOKとしました。

出力電流:個人的な設計で扱うのは数10A1Aと考えて2A(最大)程度としました。

構成:

AC入力部:どこにでも転がっているACアダプタを流用しました。出力電圧が9-35V 程度のACアダプタが使えます。

レギュレータ部:秋月の「安定化電源キット(LM350T使用)」を中心に数点の部品で構成します。キットは出力電圧1.2V20V(3A)まで可能ですがヒートシンクが小さいためと出力電圧を可変する抵抗(VR)の関係で上記の仕様になっています。ヒートシンクを大きくして、VRを何段階かに切り替えれば電圧、電流の範囲を広げられます。VRは多回転のものを使い、細かい電圧設定が出来るようにしました。

直流メータ:電圧計や電流計はかなり高価なので、電圧計には手持ちのテスターを、電流計にはM1015Bというテスター(600円:秋月)を使いました。これはDC250mAレンジが最大なのでこれ以上流すときはこのテスタ端子間をショートします(したがって250mA以上の電流値は測定できません)。これらのテスタは回路から切り離すことで通常のテスターとして使えるようにしてあります。

回路図:

 

完成図(写真)

 

 

特性:

出力電圧―電流の特性を表1に示します。出力電流が2A近くなると出力電圧も低下していますがこれはACアダプタの電流容量(2A)に制限されているためです。スイッチオン時の立ち上がり、立下りは20~30mS5V/8.2Ω、負荷オープンのときは0V 付近まで減少するのに1~3秒かかります。

 

 

 

1.出力電圧/電流特性 

(12V2AのACアダプタ使用時)

 

 

負荷抵抗=>

open

1000Ω

150Ω

8.2Ω

4.1Ω

 

 

設定出力電圧

 

 

 

 

 

 

 

7.8V(MAX)

7.8V(MAX)

7.8/7.8mA

7.8/52mA

7.8/951mA

7.4/1.8A

 

 

5.0V

5.0V

5/5mA

5/33.3mA

5/609mA

5/1.2A

 

 

3.0V

3.0V

3/3mA

3/20mA

3/365mA

3/731mA

 

 

1.8V(Min)

1.8V(Min)

1.8/1.8mA

1.8/12mA

1.8/219mA

1.78/434mA

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノイズについて:

出力電圧5Vのときのノイズ波形を図1に示します。リップルノイズは1mV以下ですが約10uS周期のスイッチングノイズがに36Vppあります。これはACアダプタから回路系に飛んできているようで出力部のシールドをしっかりすれば取れると思います。

2008/11/17ノイズ検討

ノイズ対策を試行し、LCフィルターを入れると1/6に減ることを確認しました。さらに減らすには厳重なシールドとLCフィルターの場所や定数の検討を要するためこれ以上の追求はしないことにしました。また別のACアダプタではこのノイズはなく、リップルを含めて1mV以下になります。

2 出力波形(5V8.2Ω負荷、5mV/div2us/div

 

注意!:

テスターを回路からはずして電圧計以外の用途(電流、抵抗測定など)に使った場合は、必ず電圧計のレンジに戻してから回路に戻すこと!、そのまま戻すと回路の残留電圧でテスターのヒューズが飛ぶ!

あとがき:

まわりにある部品でサッと作ろうと思っていましたがアイデアからいままでに半年以上かかってしまいました。ACアダプタのリサイクルになり、電源としてもテスターとしても結構便利です。

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