2009年11月例会報告    過去の例会へ ホームへ../zhong_yang_yan_xian_li_kesakuruHP/guo_quno_li_hui.html../zhong_yang_yan_xian_li_kesakuruHP/homu.htmlshapeimage_1_link_0shapeimage_1_link_1
 

2010年1月へ

参加者:鷹取・鈴木ま・柳下・阿久津・五十嵐・安達夫妻・小川・町田・堀(記録)

 

1.資料紹介

 1)「自宅の庭で写したチョウ」………………………………………………鈴木ま

 自宅の庭にやってきたチョウが葉の裏で休んでいる姿や、花で吸蜜しているようすを口吻までわかるように接写した写真の紹介です。ツマグロヒョウモン、ベニシジミ、ヤマトシジミ、ウラギンシジミなどが被写体です。庭でこれだけ撮れたら楽しいだろうなと思いました。

 接写のためにレンズを直前まで近づけても、葉の裏で休んでいるチョウはまったく動かなかったそうです。“眠っている”のでしょうね。

 「ガとチョウの違いは何か」と鈴木さんから疑問が出されました。わたしは、『チョウの羽はなぜ美しい』(矢島稔・宮沢輝夫著/全国農村教育協会)の内容を紹介しました。そこには「ガとチョウは活動が夜か昼か、とまったときに羽を開くか閉じるか、触角の形などで見分けるというが、いずれにも例外がある。あえて言えば<チョウは夜飛べないガである>ということだ」、つまり特に区別のないことが書かれています。

 町田さんは「フランス語ではどちらもパピヨン(papillon)という」と指摘され、どなたからか、日本独自の区別ではないかとの話もありました。ただ、英語ではチョウはバタフライ(butterfly)ですし、ガはモス(moth)です。

 2)「東京新聞<大地参照>(2009.11.24)」……………………………………堀

 東京新聞の記事の紹介です。「大地参照」と題して、東京都地質調査業協会が年1回発行する「技術ノート」という冊子を紹介しています。

 「技術ノート」は1987年に創刊されました。「一般になじみが薄い地質調査を知ってもらうのが最大の目的。毎年、一般の人が興味を持てるようなテーマを選んでいます」とのことで、東京湾、温泉、野菜、山手線、神田川、地名と地形、斜面と災害など、そのテーマは多岐にわたります。

 32号は「東京のお酒」がテーマ。実際に都内の酒蔵に足を運んだ力作だそうです。

<都内十四酒造の場所を地形区分図の上に落とし「地形の変わり目に多く、山や丘陵からの水が段丘の地下水となって湧出する所」にあることを明らかにした。さらに、それぞれの酒造が地下水を採取する井戸の深さと地層、水の硬度を調べた。硬度が高いと、酵母の栄養源となり、米の糖分がとことん分解される。そのため、硬水は酸が強めでカチッとしたコクのある辛口(男酒)、軟水はソフトできめ細かな端麗さのある甘口(女酒)になりやすい。小山酒造(北区)、土屋酒造(狛江市)といった荒川多摩川水系は硬水、西岡酒造(八王子市)など丹沢水系は軟水だ。>(東京新聞の記事から)といった具合です。

 各号ともカラー写真やカラーの図をふんだんに使い、見やすい誌面となっているそうです。授業の参考資料としても使えそうで紹介したのですが、佐藤完二さんはこの話を聞いてすぐに最新号を購入(最新号だけは2000円)。その巻頭にあるカラーの東京の地質図をとても気に入っている様子でした。

※<地質調査業協会「技術ノート」>

http://www.tokyo-geo.or.jp/html/frameset3.htm

 3)「アルディピテクス・ラミダス」……………………………………………………堀

  “世紀の大発見”といわれるこの「アルディピテクス・ラミダス(ラミダス猿人「アルディ」)」のことを、マスコミでも取り上げていたにもかかわらず、わたしはしばらく知りませんでした。

 『親指はなぜ太いのか』(中公新書)で“口と手の連合仮説”を唱えた島泰三さんから、「ラミダス発見者の諏訪元さん(東京大学総合博物館)に論文を見せてもらい、説の実証に取り組んでいる」とお聞きしてウェブ検索をして見つけたサイトの情報紹介です。

 といっても、朝日新聞の記事(2009.10.2と2009.11.3)がメインのものですが、「KОMПьюЛеНТа」(ロシアの科学雑誌?)のホームページにもリンクしていて、そこで使われているラミダスの全身骨格の写真や復元図も載っています。

 発見(1992.12)から15年の研究を経て発表(2009.10.2)された、ラミダス猿人。これまで最古の人類はアファール猿人(アウストラロピテクス・アファレンシス/約370万年前/全身骨格を発掘した日のパーティー会場で流れていたラジオの音楽がビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ア・ダイヤモンド」だったことから、この猿人を“ルーシー”と命名した逸話があります)よりも古い約440万年前の人類の発見です。

 しかも単に古いというだけでなく、アファール猿人よりも原始的ながら直立二足歩行をしていたというのです。これまでは、気候変動によって東アフリカに乾燥したサバンナ地帯が生まれ、森林にいた類人猿の一部がここに進出。それが直立二足歩行を促し、アファール猿人(最古の人類)の出現につながったとされる説が有力で、NHKの番組でもそのような説明がなされていました。

 しかし、ラミダス猿人が森林で生活していたことは、歯に含まれる炭素と酸素の同位体分析や、一緒に見つかるサルやコウモリ、カモシカの化石でも裏づけられたそうです。そのときすでに直立二足歩行を獲得していたということは、人類の歴史を書き換える発見であるということなのでしょう。

 人類の進化史に思いをはせるとわくわくしてきます。気づくのが遅く、東京大学総合博物館や国立科学博物館でのラミダス猿人全身骨格の展示を見ることができなかったのが残念です。

※ 紹介したのは、「人類進化年表」の「アルディピテクス・ラミダス」

  http://jinmei.hp.infoseek.co.jp/ramidus.html と、

   「KoMпbЮЛeHтa」

  http://science.compulenta.ru/463708/ の図と写真です。


2.実験&実践「ブラウン運動」…………………………………………………小川

 ブラウン運動は教科書にも載っていて有名ですが、直接見たことはありませんでした。今回は国分寺二中理科室を会場としてお借りすることができましたので、小川さんが実際にやって見せてくれました。

 小川さんによればアクリル絵の具がいいということで、今回もこれで実験しました。ポスターカラーはダメで、昔の教科書には「花粉が動く」とありましたが、これも違っていて動かない。しかし、花粉をつぶして出てきた粒子は動いて見えるそうです。阿久津さんは「クリープがいい」とやってみましたが、どういうわけか今回はうまくいきませんでした。

 ホールグラスだと流れてしまうので、ふつうのスライドグラスに水にといたアクリル絵の具を垂らし、カバーグラスをして顕微鏡で覗いてみました。理科室にはテレビモニターと顕微鏡に差し込むことのできるCCDカメラがあったので、それらをつないでみんなで見ました。見事に動いて見えました。水分子が絵の具の粒子にぶつかって動いていることが実感できました。

 硫酸銅を水の中に置いておくと、かき混ぜもしないのに青い色が広がっていくことや、酸素を上の集気びん、酸素より重い二酸化炭素を下の集気びんに入れ、2つの集気びんの口を合わせておくと、下のびんに火のついたロウソクを入れても火は消えないことなどは分子運動の結果の拡散現象です。その理解のためにブラウン運動は有効であると小川さんは実践を紹介してくださいました。実験を見て、納得できました。


3.「『遠山啓エッセンス?水道方式』を読んで」……………………………阿久津

 阿久津さんは、小学2年の息子さんと小学1年の娘さんの様子を見ていて、算数教育に疑問を持ち、遠山啓の著作を読み出したそうです。この話は、お孫さんの教科書を見て大いに疑問を持ち、数教協を設立した遠山啓さん、同じ動機で科教協を設立した田中実さんを彷彿とさせます。

 水道方式を研究されていた時期もあったということで、阿久津さんの疑問にはおもに安達さんの奥さんが答えてくださいました。

 阿久津さんは、数教協の提唱した水道方式の「一般から   104

特殊へ」という流れは賛成だということです。息子さんが  - 46

つっかえているのは、右のような計算の場合、14-6=8     8

まではできる。ところが、そのつぎの計算ができない。つ

まり、100の概念ができておらず、100をばらして借りてくることができないというのです。

 これは、ビスケットやリンゴなどの具体物を数へと抽象化するために有効な半具体物であるタイルを通しての、数の構造(位)を理解させることができていないということでしょう。

 実際息子さんのクラスでは教科書(啓林館)に載っている図のようなものを使っているそうです。安達さんは一目見るなり「これはタイルじゃない。シールだね」とバッサリ。つまり、この図では□よりも●に意味を置いています。●は並べても連結できません。連続量への理解を考えてもタイルとは異質のものです。阿久津さんは、アのように1が10個1列になったタイルを使った方がいいのではないか」という考えでした。これは10の「びんづめタイル」です。

 数教協には5までは一目で数がわかるが、 アそれ以上はパッと見て数がわからないので、1が5集まったら「かんづめタイル」(中身は見えないが、大きさは1のタイル5個を集めたびんづめタイルと同じ)にするという考え方があります。

そこで、10はイのように「5にくっつき  イが5」という形で、これはくり下がりのある引き算のときなどに有効です。

1のタイルが5個で5のかんづめタイルに  ウなるのであれば、当然ウのような10のタイ

ルもあります。5が2つで10になります。阿久津さんが「5のかたまりが2つ(教科書の「シール図」)よりも1が10個並んでいた方がいい」と言ったときに、安達さんの奥さんが「5-2進法というのもあるんですよ」と応じたのは、このことです。

 たとえば、6+7を考えるとき、6は5と1です。7は5と2です。それぞれの5と5で10。くっつきの1と2で3。だからこたえは13です。これが5-2進法です。数の構造を、タイルを使いながらていねいに指導していくと1年生の子どももこの方法を見つけます。もちろん10の補数を考えて、7から4をもらってきて6と4で10。7のあまりは3だから、10と3で答えは13、とタイルを使って考える子もいます。私は、両方の考えをみんなのものにしながら、「やりやすい方でやっていいよ」と指導してきました。神奈川数教協の平井さんたちは「5-2進法で通すべき」という考えのようでしたが、私はそこまでの自信はありませんでした。

 ところで、10になったら「タイルのおうち」の「1のへや」ではなく、「10のへや」に入ることを教えます。1のタイルが10個集まったものと10のかんづめタイルが同じ大きさであることを押さえて「1が10個で、変身1本くり上がり」と言いながら10のへや(位)に移すのです。そうすると、10の位には10のタイルが1本、1の位には1のタイルが0個、だから、1本と0個で「10」となり、10の数の意味が理解できます。こうしたことを100の位、1000の位に続けていくわけです。

 遠山啓は因数分解のところで「解(根)の公式が一般的なので、それを先にやっておくべき」と述べているそうです。阿久津さんはこれには反対で、「遠山さんの時代といまは違う。いまの生徒には難しすぎる」と考えを述べました。これについては、小川さんは「解の公式を導く練習をしていればいいのではないか。導くことが2次方程式を解くことになる」と述べ、鷹取さんは「平方根の開き方を教わってこなかったのではないか。電卓を使ってもいいのではないか」と述べられました。

 阿久津さんはまた、「“量の体系”が難解で難しかった」ということです。「実在→量→数」とはどういうことか。安達さんの奥さんはこれを1年生の数の導入期における実践と対応して説明してくださいました。ゾウ1頭でもアリ1匹でも1は1。その動物の絵に1のタイルを置いていき、1という数を認識させていく。さらに1対1対応(1つのお皿に1つのリンゴなど)、順序づけへと続く数の指導を話してくださいました。つまり、ゾウなどの「実在」を、1という「数」に抽象化する仲立ちとして使う半具体物のタイル、これが「量」にあたるのではないかという解釈です。

 外延量と内包量の部分については理解するのが困難でした。阿久津さんは、遠山啓があげている数式_(A∪B)=_(A)+_(B)の_は「量から数への捨象なのか」との問題意識を述べました。しかし文章は、外延量、内包量、分離量、連続量などの言葉で複雑に構成されていて、「分離量で内包量のものって何?」と、深みにはまっていってしまいました。後日小佐野さんに会ったときにこのことを話し、「数教協の松井さんに会ったら、どういうことか聞いて欲しい」とお願いしたところ、「遠山さんは哲学用語を使って説明しているので、松井さんに聞いてもおそらくわからないだろう」とのことでした。

 最後に阿久津さんが問題にしたのは「1あたり量」です。「4秒で10m進む人と、5秒で8m進む人とではどちらが速い?」という問題のとき、1あたり量で求める子もいるだろうが、80mだったら、前者は32秒かかり、後者は50秒かかるから前者の方が速いと考える子もいるだろう。どちらで考えてもいいのではないか」というものです。これは遠山啓の「割合分数」に対する批判部分に関して出された意見ですが、鈴木さんからは「そのことと“割合分数”とは違う。全員の基本線を何にするか考えるべきで、何でもいいはないのではないか」と意見が出されました。

 ここで私は「1あたり量」に関して、かけ算やわり算でよく使われるシェーマ図(右図。概念図とでもいうものでしょう)を紹介しました。

 たし算の場合は「1あたりの数」が同じではないですが、かけ算の場合は「1あたりの数」は常に同じです。そこで、1つのお皿の上の乗っている「1あたりの数」を見本として取り出して縦線の左側に書きます。左下には「いくつ分の数」にあたるお皿を書きます。そのお皿一つ一つの上に、「1あたりの数」と同じ数が乗っている大きさが「全体の数」です。

右図の場合だと、たとえば「24個のおまんじゅうが、一つのお皿に6個ず乗っている」場合を表しています。この図で、かけ算や割り算を考えることができます。

  1あたりの数×いくつ分の数=全体の数

  全体の数÷1あたりの数=いくつ分の数(等分除・いくつ分わり算)

  全体の数÷いくつ分の数=1あたりの数(包含除・1あたりわり算)