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2012年1月へ

参加者:鷹取・小川・鈴木ま・久保田・町田・堀(記録)

0.資料提供

 (1)<アゲハ、ミカン見分けて産卵 幼虫のための本能を解明>

  (「朝日新聞」2011年11月16日)…………………………… 堀 雅敏

 9月例会で鈴木まき子さんがタテハチョウの仲間であるコミスジの前肢について写真報告をされていたので、「アゲハチョウは前肢で味を感じ取るが、ミカンの葉が出す物質に反応する遺伝子を明らかにした」という記事を紹介しました。タテハチョウは前肢を脚としての機能をなくし、感覚器として進化させたわけですが、アゲハチョウの前肢の機能はタテハチョウへの進化を示唆する??かどうかは別として、なにか関係がありそう。

 (2)<放射線「正しい知識を」放射能との違いも学ぶ 羽村市立二中>

  (「毎日新聞」2011年11月11日)……………………………町田 智朗

 中央沿線理科サークル5月・6月例会に参加された安藤潤さんによる中学生への放射線の授業に関する記事です。原子、電子の復習から放射線量の単位まで学ぶもので、これを見た町田さんが連絡したところ、町田さんの勤務校まで資料を届けてくださったそうです。ぜひ例会に参加し、報告していただきたいと、みなさんの思いは同じでした。

 (3)<宝島MOOKハッブル望遠鏡でのぞく宇宙の神秘DVDBOOK>

  (渡部潤一・国立天文台理学博士監修/宝島社)………………小川 郁

 久保田さんの天体学習実践報告に合わせての紹介です。一部見ましたが、ハッブルならではの鮮明な月の映像に感激した町田さんは、さっそく帰りに書店で購入していました。2枚のDVDと読み物で構成されており、姉妹版に「太陽の神秘DVDBOOK」も発売されています。

 (4)<山の自然学誌上講義 第4回 カタクリ・生きるための戦略>

  (小泉武栄・東京学芸大学教授/『大人の遠足』2006年春号

/JTBパブリッシング)………堀 雅敏

 生物サークル11月例会で話題になったこともあり、紹介しました。「誰も不思議だと思わないけれども、東京、千葉、神奈川あたりにカタクリが見られるのは、実はたいへん不思議なこと」だといいます。カタクリは首都圏では高い山や北側の斜面で見られますが、これは氷河期の生き残りだからだそうです。

 (5)<東北地方太平洋沖地震 自然科学教育のあり方を考え、教材をつくる(3)>

                        ………………鷹取 健

 1月例会で報告されるということで、資料のみ紹介されました。

1.「宮城県沿岸部津波被災地の記録DVD紹介」……………………堀 雅敏

 「東日本大震災 宮城・石巻地方沿岸部の記録」(31分・ビデオプラザ神奈川・2,800円)と「東日本大震災の記録~3・11宮城~」(143分・東北放送・1,890円)という2本のDVDを紹介しました。

 前者は幼稚園の卒園行事の最中に起きた強い地震動から始まり、北上川が流れ込む追波湾南隣の名振湾に面した名振集落にある「地震があったなら津波に用心」の石碑まで、石巻沿岸部各地の住民による津波映像、インタビューによる証言、スタッフによる被災地の様子が収録されています。

 家々を破壊し押し寄せる津波、川を遡上する津波、すごい速さで引いていく津波、津波の去ったあとの破壊された町、地盤沈下で水に浸ったままのようす、そうした映像と証言が生々しく迫ってきます。多くの児童が犠牲になった大川小学校のことも、助かった男の子の祖父の証言と大川小近くの新北上大橋を襲う津波の映像を挿入し、要領よくまとめられています。

 後者は宮城県沿岸部の市や町を北から南の順に、視聴者提供の映像と東北放送のカメラマン撮影の映像で構成されたもので、一つの場所を長い時間追っています。場所によっては地震動から津波襲来、その後の被災状況まで収められており、まるで自分がその現場に立ち会っているようです。

最後まで防災庁舎で避難放送をしていた女性職員の声や、津波を乗り越える海上保安庁巡視船からの映像も入っています。そのほか、地震発生直後の東北放送のニュース番組、研究者の解説なども収められています。

NHKなどの放送を録画できなかった方は、これらのDVDは貴重な教材映像となるのではないでしょうか。


2.「ニオイスミレの閉鎖花」…………………………………… 鈴木 まき子

 庭にある閉鎖花をつけるスミレは、保育社の『原色野草観察検索図鑑』などで調べた結果、ニオイスミレだとわかったそうで、その閉鎖花の観察記録写真による報告でした。

 10月4日から25日まで、1cmほどの閉鎖花が下向きの果実(2cmほど)をつけ、種子が熟して直立し、果実が熟して三裂するまでをていねいに追っています。さらに、11月3日に咲いた閉鎖花を分解して調べた写真(下)も紹介されました。めしべにおしべがぴったりとついていたということです。11月に咲いているのは珍しいとか。


4月の時はふつうに咲いて実をつけたそうですが、その同じ株が生き残っていて閉鎖花をつけたのだそうです。鈴木さんが調べた結果では「夏から秋にかけて閉鎖花を盛んにつくり、蕾の姿のまま同化受粉をして果実となる」そうです。小川さんから「“同化受粉”というのは聞いたことがないけれども、それはどういうことか」と質問がありましたが、どうやら“自家受粉”と同義語のようでした。

 今後も観察を続けるそうで、楽しみです。


3.実践報告「惑星と恒星」………………………………………久保田 智子

 「理科ネットワーク」というサイトを利用して行った授業だそうです。教室に無線通信機能のあるPCを持ち込み、液晶テレビとつないでサイト内の、金星が公転したときの位置と地球から見た形がわかるページに接続して参照しながら、生徒には配布したプリントに金星の太陽光が当たっている部分は黄色に、陰になる部分には紫色に色鉛筆で塗らせていったそうです(図)。


 「みんな半月みたいだって言わない?」との質問には「そうですね」との答え。

 その後「理科ネットワーク」の図は、公転している金星の任意の位置の図をクリックすると、地球からの見え方が表示されるので、それを参考に右図のように軌道の外側にその位置の金星の形を描いていきます。

 「テレビ画面を見ないで描ける子はどのくらいいる?」との質問には「数人はいる」との答え。「やはりわかりにくいので、立体で観察させないとダメ。半分黒くぬったスチロール球などを使うと納得してくれる」とのことでした。

 「金星の見え方の後で月に入っているが、月から金星の流れの方がいいのではないか。月は実際に目で見える。また、月は地球のまわりを回っているのでそう極端に大きさは変わらないが、金星はかなり変わる」と鷹取さんから意見がありました。これについては「教科書の流れでやっているが、教科書も金星から月となっている」との返事でしたが、この夏新教科書を検討した小川さんから、「新しい教科書では月が先に来ている」と話がありました。

 鷹取さんからは「体の正面に月、カキの実、ボールがあるとき、みんな同じところが光り、かげができる。こうしたことを見せれば、太陽の光で起きたことがわかる」「勤務校が写っている月の写真はぜひ使いたい」と提案がありました。

 小川さんからは月の形について「自分の視点、どこから見た図であるかわかるように、中心にある地球の中心と形を考える位置にある月の中心とを結ぶ補助線を引くといい」と意見がだされ、町田さんからは「半分黒く塗ったスチロール球を月として使い、“自分の視点”ということで地球の図に小型カメラを置いて“月”を撮影するといいのではないか」とアイデアが出されました。

 ここで町田さんから、以前サークル例会で吉村さんが紹介した「地球時計」のCD版(下の写真)が紹介されました。これはレーベル面に北極を中心とした北半球の図を描いたCDをケースに入れたものです。CDを利用しているので地球が自転するように回転させることができます。ケースの透明なふたには時刻が書かれているので、ふたを閉めればその時点での任意の場所の時刻を知ることができます。また、方位を描いた別のCDと取り替えれば、任意の地点での方位を知ることができます。


 なかなかいいと評判でしたが、CDとケースを使うので、生徒一人一人に用意するのは高くついてしまいそうです。小川さんは吉村さんが紹介した紙の「地球時計」の完成品を持ってきていました。生徒一人一人には紙の「地球時計」をつくらせ、提示するにはCD版がいいかもしれない、と話し合われました。

 ところで、時刻表示は「0」がいいのか「24」がいいのか少し話題となりましたが、「0」の方がいいかもしれないと話されました。

 そして、前述のように小川さん紹介の「ハッブル望遠鏡でのぞく宇宙の神秘」の一部をみんなで見ました。きれいな映像で、イギリスのテレビ番組なので英語の学習にもなりそう(日本語訳も表示される)です。

 久保田さんの図で金星が太陽と地球の間にあるとき「見えない」となっているけれども、鷹取さんから「黒くシルエットとして見える」と指摘があり、来年の「金星の太陽面通過」が話題になりました。次回観測できるのは、2117年(105年後!)だそうです。