日 時:2018年6月1日(金)19:00~21:45
場 所:国分寺市本多公民館
1.実験紹介「圧力の実験」
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今年度から昭島の科学センター指導員を引き受けることになったそうです。小学校低学年の子どもたちを対象に行った圧力の実験の紹介でした。実際の順序とは違うそうですが、準備のできたものから順に紹介がありました。
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図1 図2 図3 図4
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【図1】いわゆる連通管です。ペットボトルの底を切った容器から長い管が延びており、管の先をどこに置いても、水位は容器の中の水位と同じになります。建築の際、この現象を利用して水平を出す作業のことを“水盛り”というそうです。
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【図2】ペットボトルの上部を切った容器に水を入れ、ピンで上下2カ所に穴を開けると、水圧の関係で下の方が勢いよく水が飛び出してきます。
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【図3】水の入った容器を用意します。小さなペットボトルのキャップを外し、側面にピンで小さな穴を開けます。このペットボトルを容器の水の中に沈めると、水圧はいろんな方向に働くのでペットボトルの中に水が噴き出します。
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【図4】穴の空いたキャップを閉めたペットボトルを2本用意します。一つには、そのキャップと別の穴の開いたキャップを逆さにして接着してあります。そのキャップに、底を切ったペットボトルをねじ込みます。もう一つには、キャップの穴に管を差し込みます。管の方の水位を高くして双方のペットボトルの側面に小さな穴を開けると、管の方の水の方が勢いよく噴き出します。水圧の大きさは径の大きさではなく、高さ(深さ)で決まるからです。
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みなさんが「おもしろい!」と感心したのは【図3】の実験でした。
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子どもたちは海の深いところで物がつぶされることを知っているとのことで、“水圧”という言葉を用いて実験したそうです。このような現象の理解は無理ですが、一つ一つの具体的な事実は楽しく確認できるし、将来中学や高校での学習の素地となるのではないかと思いました。
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2.フィールドワーク事前学習
「足尾煙害荒廃地における土壌動物の組成からみた植生回復の評価」
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大学のとき同じ研究室だった旦那さんの研究成果を、サークルのフィールドワークの事前学習として報告していただきました。
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足尾の山は、精錬所の燃料や坑木のための森林伐採、精錬に伴う亜硫酸ガスによる煙害、山火事、台風などによる洪水などによって荒廃していました。1956年から緑化事業が開始されましたが、植樹によって裸地だった場所の森林が本当に回復しているのかを、土壌生物の調査から明らかにしようというのが目的だったそうです。
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利根川の支流である渡良瀬川の最上流部には、西側から仁田元(にたもと)沢(川)、松木沢(川)、久蔵(くぞう)沢(川)と3本の支流があり、この三川合流地点に足尾砂防堰堤(えんてい)があります。3本のうち、久蔵沢の10地区を調査対象にしたとのことです。
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10地区はすべて煙害激害地内にあり、木本・草本植物が生存し得ない裸地状の地域でした。精錬所に近い下流側の2地区は人の手を加えずほったらかしの状態、残りの8地区は何らかの樹木が植樹された場所だそうです。
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土壌サンプリングは、つぎのような3つの方法を合わせて行われたそうです。100mLの採土缶と呼ばれるステンレス缶を1調査地区につき任意の10カ所に打ち込んで土壌を採取する《打ち込み法》、それらを一つのポリ袋に入れてかき混ぜ、混合サンプルをつくる《かき混ぜサンプリング法》、さらに1調査地区につき約1000mL、なるべく多くの種類の落葉、落枝、コケなどを拾い取る《拾い取り法》です。
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こうして集められた1調査地区あたり約2000mLのサンプルを2等分し、半分は手で選り分けるハンドソーティング法で、もう半分はツルグレン法で土壌動物を抽出し、分析しました。そして、関東地方南部を調査した「土壌動物による自然の豊かさ評価の事例」(青木 淳一・原田 洋/横浜国立大学環境科学研究センター土壌環境生物学研究室/1996年)で使われた“大型土壌動物による自然の豊かさ評価法”を使って評点を算出していったそうです。この評価法は、大型土壌動物をA(5点)、B(3点)、C(1点)の3つのグループに分け、それぞれのグループの土壌動物が何種類見られたかの積(点数×種数)の合計(A+B+C)で表すそうです。
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結果は、2カ所の未植栽区のうち一つは礫の移動があると見られ、植生が形成されていないため、わずか12点でした。もう一つは礫の移動があまりないようで、自然回復が進んでいて29点でした。そのほかの調査地区は26点~45点でした。他地域では評点が通常60点以上であることや、樹種も少ないなど、全調査地区が自然林ほど回復していないとのことでした。
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このほかにも土壌環境の調査として、pHやEC(電気伝導度)などの化学性分析、含水率や粒径組成などの物理性分析を行い、さらには植生調査、光環境調査も行ったそうです。貴重な話が聞けました。
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阿久津:(環境的に)強そうな植物を植えたのか?
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小宮澤:そのようだが、混合林より単層林にする植樹をしたがるようだ。
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中 山:“自然の豊かさ評価法”の基準が曖昧ではないか?
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小宮澤:青木さんの評価法には「主観が入っていいのか」という声もある。賛否両論あるが、これが一番しっくりしていて信頼されている。
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鈴 木:“土壌三層構造”とは?
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小宮澤:感覚的には土を触ったときにふっくらしているとか、固いとか。固い土の粒子に、水や空気がどのくらい含まれているかの割合を示している。《※固相(土壌粒)、液相(土壌水)、気相(土壌空気)の容積割合を三相分布という。植物が育つ理想的な割合は、固:液:気=4:3:3》
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中 山:広葉樹などいろいろ混ぜるといいと思うが、営林署はどのように考えているのか。
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小宮澤:単層で植えたがる。植えたら植えっぱなしで、調査をしていない。今はやっているかもしれないが…。5年ごととか10年ごととかに調査をして、検証する必要があると思う。
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中 山:裸地だったところに、最初営林署はヘリコプターで種をまいたが、流されてしまい、うまくいかなかった。その後、土をつくって埋め込み、低木を植えた。そのときは、「復活には100年かかる」と言っていた。
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小宮澤:本当にうっそうとした森林になるには、300年とか400年かかるのではないか。
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小 川:ニセアカシアは、繁殖力は強いが害の方が大きいのではないか?
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小宮澤:ひょっとしたらあるかも。河原にいっぱい生えているように、劣悪な環境でも育つが、根は浅く、風などで倒れやすい。10mを超えると倒木のリスクが高まる。
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小 川:いまウェブ検索をしたところ、やはりセイタカアワダチソウ同様に、アレロパシー活性《ある植物が他の植物の生長を抑える物質(アレロケミカル)を放出したり、あるいは動物や微生物を防いだり、あるいは引き寄せたりする効果の総称》があるようだ。
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小宮澤:土壌化学性の分析は、機材の関係で十分ではなかったかもしれない。
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鷹 取:煙害を出した古河鉱業は、回復事業に1円も出していない。国が出した。環境省は「50%まで回復した」というが、残りの再生のために誰が金を支払うのか。私たちは何をすればいいのか?
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小宮澤:本当は地元の大学が研究を引き受けてくれるといいが、財政上動けないのかも。緑化事業を根本的に考えていかないといけない。
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3.『理科教室』を読んで「『理科教室』5月号」
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特集全体を通じて、「“有利”“不利”という言葉に違和感を覚えた」そうです。確かに、生命誕生以来無性生殖は存在し、有性生殖もまた長い間絶えることなく続いています。どちらを選択しても課題はあるものの、厳しい環境の変化を経てきた存在です。この「“有利”“不利”という言葉は科学的でない」との指摘についての議論はできませんでした。〔主張〕には「雄がたまたま出てきてしまったので、不利だけれども仕方なく雄を使って有性生殖が行われている」という新しい仮説が紹介されています。生物学の世界でも、まだまだこの問題は解明の途上にあるのかもしれません。
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「高校の『生物』では、有性生殖の本質を教えたい」(鈴木 恵子さん)の紙テープやパスタを使った授業が、白黒写真のせいか、よくわからないということで小宮澤さんが黒板に模式図を描いて説明しました。ただし、小宮澤さんも「配偶子が1種類なのはなぜ?」と首をかしげていました。
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「昆虫を育てよう」(鈴木 まき子さん)の図に先月「間違いがある」と鈴木さんが語っていましたが、それがどこかという質問がありました。鈴木さんに寄れば、「図と本文は別に送っていて、本文中の図を入れる場所にどんな図であるかの言葉を入れた。その言葉がそのまま図中に残ってしまった」とのことでした。
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4.科学工作「音をつくろう!」
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今回は、“ブーブー風船”に絞って紹介しました。ブーブー風船自体はずいぶん前(20数年前?)に紹介しましたが、材料を現在手に入りやすいもの(弁当のしきりに使うバラン)にしたことと、リードのついたストローに風船を取りつける方法を改善(風船の口を少し切ってストローに巻き付け、ビニルテープで留める)したものです。
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一通り説明すると、みなさんすぐに作り終え、あちこちからブ~~~ブ~~~~!以前のタイプを科教協全国大会の科学お楽しみ広場で紹介した経験のある鈴木さんも、「これは簡単でいい。小学校3年生はもちろん、2年生でもできる」と話していました。
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