[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]


ARCH 35

                   駿河昌樹詩葉・2001年3月



そうして / 野を まわるひと




比較するひとを離れて水のほうへ歩んでいた。
葦、あれは、睡蓮? あめんぼうの
ああ、いそがしいこと。

すこしでも野をゆけば、なんだか子ども、わたし。
それとも、死後、でもあるかしら、水、
つんつんと、
トンボたちもいそがしくってねえ、
流れ、音、木漏れの、ひかり
(点を打つの、忘れちゃって、……でも、いいかしら、
(打たなくっても、ね、……

はげしい感情があってヒマワリを見つめていた。
モウ書クノハヤメヨウ、ミンナ、ミニクイノダカラ………………
そう思って、ヒマワリを見つめていた。
(ここは野だ、スコシデモ野ヲユケバ、ののち、です

ああ、わたしでも苦しい
みんなが間違っていると つよく思う
みんなが
それが苦しい
そう思うのが苦しい
思うだけで

逃げるエビ メダカ
魚はすてきだ ひとよりすてき

ヒマワリからも離れて
わたし 街へ また近づく
うるさいオートバイだ
うるさい音楽の店だ
わたし そういうの いやだ
ほんとに いやだ
ほんとなんだ

なんにも発しないで表わさないで
過ぎ去ろう 街は
歴史が街の歴史であるあいだは

きれいな水の流れが
濁った大きな流れに混ざっていくところを見ていた

わたし とにかく いやだ
そういうの いやだ
空がふとい柱のように或る日下りて来て濁った流れを洗ってしまうようにと
あそこの
小さな祠でもお祈りしよう
わたし そういうひと 
お祈りして
小さな祠をまわるひと
それだけのひと
そうして

野をまわる
ひと







[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]