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きみって どうしようもなくさびしい



戦争がやってきて花子にヒナゲシを贈った
太郎には複雑骨折を

遠くもなく近くもなく
意味は故郷
終わりきらないペンが増えて困って
いかん、鰻の寝床から垂れる
体温のほのかさ
いかん、食べていない種類のオレンジが
箱詰めで大安売りの占領地

人生はただただ遠いもの
たどり着いたかね、諸行くん
入相の鐘のさびしいボン、ボン、
刺殺される寸前の
だ、だれの体だったっけかな、忘れて、
ボム、ボム、と柱時計へ
もの皆変わりゆく歴史の終末
いや、週末
終わらせたくても終わらない、なかなか
週は終わってもまた来る次週
歴史だっていつも週末

さびしい少年がさびしい落書きをしておりました
宇宙からそれをていねいに監視している者がいて
わざわざていねいに記録していたということじゃ
記録された落書きはただちに神様の頭に転送され
どこかの星の運命の工程表に記されていくしくみ

さびしい少年がさびしい時代に
さびしい落書きをしながら歳をとっていくから
きみもみんなもほんとはこんなにさびしい
もう隠すのはおやめよ
きみって
どうしようもなくさびしい
ヒナゲシを贈ってくれるような戦争も
来ないさびしさ
故郷も意味も喪って
永遠に若いというのに
そろそろ死に際のことなど思っている
さびしさ





「ぽ」128 2006年8月

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