上咽頭擦過療法EAT(Bスポット療法)の有効例

当院で経験した上咽頭擦過療法の有効例を呈示します。
 
平成30年8月および9月の、第6回日本病巣疾患研究会および第31回日本口腔咽頭科学会で発表した内容を載せます。
この内容は平成31年3月31日発行の日本口腔・咽頭科学会雑誌に掲載されました(第32巻1号p33-39)。
 

治療前後に、症状のアンケートを施行した73例を対象としました(アンケートにご協力頂いた患者さんに感謝いたします)。
男性18例、女性55例、平均年齢は42.9歳でした。
主訴(いちばん主な症状)は、後鼻漏が30例、咽喉頭違和感が13例、咽頭痛が6例で、他には嗄声(声がれ)、頭痛、痰、疲労感、関節痛、微熱などでした。
10回のEATを行った後、症状及び内視鏡所見の改善について検討しました。
その結果、
主訴の改善率は 79.5%内視鏡所見の改善率は87.7%でした。

治療前後における主訴および各自各症状スコアの改善率と統計学的検討を載せます。
下のデータは学会等で発表したスライドです。
Nは治療前後に症状のアンケートで1以上の症状のあった症例数です。
p値とは、統計学的に算出された値ですが、この値が0.05未満だと有意差があると判定します。
今回の検討では、耳鳴だけが有意差を認めませんでしたが、他の主訴を含む各症状で、統計学上有意な改善が認められました。
 
症例を呈示します。
48歳女性で、関節痛を主訴に来院されました。
治療前後の内視鏡所見ですが、EAT10回施行後には通常光で上咽頭粘膜の発赤、腫脹が改善しています。NBIでは、うっ血といわれる血が粘膜下にたまっている部分が黒点として見られますが、治療後には改善しています。
治療前後のアンケートを示します。
治療後には全ての症状が消失しています。直接訴えのなかっためまいが改善しており、また治療後にはご本人がお書きになっただるさが0になっており、治療前にはだるさを感じられていたものと思われます。
 
 

H27.9の院長日記で紹介した、第3回病巣疾患研究会で呈示した症例の一部を載せます。

 
60歳女性(典型例)
病歴:4年前に感冒後、鼻汁、左鼻奥の違和感、後鼻漏を自覚。
副鼻腔炎として治療受けたが改善なかった。
複数件の耳鼻科受診を経て当院を受診した。
上咽頭炎と診断し、治療の結果自覚的に症状は9割方改善した。
<上咽頭所見の経過>
初診時(H26.10.29)
処置10回後(H26.12.11)
処置30回後(H27.5.20)
経過とともに、上咽頭粘膜の発赤、腫脹、唾液様の後鼻漏付着が改善しているのがわかります。
 

66歳女性(掌蹠膿疱症)合併例
慢性的な咽頭痛・後鼻漏・痰の張りつき感があり、近医からの副鼻腔炎に対する漢方薬服用により鼻汁は減少したものの、これらの症状が改善しないため受診した。約2年前から掌蹠膿疱症で治療を受けていた。中学2年の時に口蓋扁桃摘出術を受けている。初診時、レントゲンによる副鼻腔炎はごく軽度であった。
上咽頭炎を認めたため、上咽頭処置を行った結果、後鼻漏や頭痛は改善し、首や肩のこりも楽になった。
掌蹠膿疱症も軽快した。現在も10日おきぐらいで上咽頭処置を継続している。

<上咽頭所見の経過(下段は少し下方の視野>
初診時(H27.2.16)
処置10回後(H27.3.23)
処置27回後(H27.7.13)
前の症例と同様に、上咽頭粘膜の発赤、腫脹が改善している。
下段では後鼻漏の改善していることがわかる。