羽村はただの郊外都市か?
東京都羽村市。東京の西の外れに位置するこの街は、人口56000、なんの特徴もないベッドタウン。だけどホントにそれだけなんだろうか?そこで本誌は大胆にも羽村に潜入、そのヒミツに迫っちゃいました。
玉川(以下T) おはようございます。なんか、微妙ににぎわってないとこですねえ。
中里(以下N) のっけから失礼だなあ。ここが全人類憩いの地、羽村のその駅前だぞ。
T ふーん。そこのオリジン弁当、昔はコンビニ入ってて、駅前一等地なのにつぶれたって評判ですよ。
N いらんこと知ってるな。それはホレ、ファミマができたから。
T そこの大型チェーン百貨店、全国でもトップクラスの売り上げの悪さを誇るそうですよ。
N …といったマイナスイメージを払拭しようというのが、今回の主旨だ。
T そうなんですか?
N いやどうだろう。とにかくせっかく来たんだし、あれこれおもしろいものを探してみようぜ。今日は歩くって言っといたけど、靴の準備は大丈夫か?
T え!歩くんですか!聞いてないですよ!わたし今日ヒールある靴なのに!あんまり歩くとお化粧も落ちちゃうし!
N はいはい、自業自得。さっさと来なさい。
T ひーん。
N さあ着いた。まずはここ、まいまいず井戸だ。
T あれ、あっと言う間でしたね。
N 駅からすぐだからな。羽村に来たら、まずはここだ。
T 井戸ですか。何がまいまいなんですか?
N よくぞ聞いてくれた。昔はまだ地面を垂直に深く掘る技術が発達していなくてね、水のある地盤まで井戸を掘るのも一苦労だったんだ。そこで人々は、地面をぐるぐると少しずつ掘る方法を思いついた。このかたちがまるでマイマイのようで。
T 長くなりそうな話ですね。
N そうでもない。これで終わり。ちなみに、いつ掘られたのかとかははっきりとはわかっていない。都の指定史跡となってるよ。
T ふーん。これ、下りられるんですか?
N 下りられるよ。行ってみようか。
T 足場悪いですねえ、ころびそう…。うわー、なんだかぐるぐる回ってて、へんな感じになってくる。
N 約2周ってとこかな。で、一番下に、ほら。
T おー、ちゃんと井戸がある。でももう使えないようになってるんですね。
N そりゃまあね。昭和30年代に、水道が通ってからは、史跡として生き続けてるんだ。
T なんかおまいりのひとつもしたくなる雰囲気ですね。ぱんぱん。
N 何をお願いしたんだ?
T え、中里さんに振り回されませんように、と。
N うん、無理。
T ひどい…
N ああ忘れてた、まいまいず井戸の向かいに、もう一つ見所があるんだ。
T 向かいですか?
N ほら、あれ。
T 煙草の自動販売機?
N うん、いまやただの自動販売機の群れだが、あそこには昔、おもちゃのまいまいずというおもちゃ屋があったんだ。そんなに広い店じゃなかったけど、プラモとかブロックとか置いてあって…。
T ブロック?微妙に最近ですね。
N 10数年くらい前にはまだあったんだが、ある日突然シャッターが閉まってて、今日は休業かとおもったら、その日どころか今後ずっと休業です、みたいな。
T 個人営業の店にはよくあることですね。
N これが羽村の名所のひとつ、消えたまいまいずだ。
◆まいまいず井戸(都指定史跡)
JR青梅線羽村駅東口下車徒歩1分。変わらぬたたずまいが、時間を超えて目の前に現れます。見物料無料。まいまいの部分には、立ち入りにくいですが誰でも入ることができます。おもちゃのまいまいず跡地は井戸の南側。
T こ、今度こそがっつり歩きますね。
N まいまいずからひたすら東へ。と言ったって、まだ10分も歩いてないぞ?
T ヒールで坂はきついですよ!次の場所はまだですか!
N うーん、このあたりだと思うんだけど…
T 確認してないんですね。
N いや、最近できたばっかりのところで、俺も来るのは初めてなんだが… あ、あれかな?
T わー、お花屋さん。へえ、中里さんもこういうところがお好きなんですねえ。
N いやいや、そっちじゃない。その向かい。
T 向かい…? わ、なんかステキな感じ!
N 最近できたばかりのイタリアンレストラン、ZONAVOCEだ。
T おおお。向かいの花屋さんがいい風景になってますね!
N うん。ちなみにお値段もそこそこする、なかなかの本格派だ。
T 羽村にもこんなお店があるんですねえ。
N 確かに。こういう感じの店は、羽村で初めてではないだろうか。
T わー、いいですねえ。わたしイタリア料理大好きなんです!
N そうなんだ?
T そうですよー!じゃあ、ちょっと軽くランチでも食べて行きましょっか。わたし、パスタと、デザートにアッフォガードと。
N 何言ってるのさ。
T え?
N ここは見学で終わり。次のところに行くぞ。
T え、ちょっと中里さん、そんな殺生な!寄りましょうよ!
N いやあ、まあ、ちょっと事情があって。
T 事情?
N あんまり金がない。
T ぶっちゃけすぎです!
◆RISTORANTE ZONAVOCE
(11:30〜23:00、年中無休。ラストオーダー22:00)
JR青梅線羽村駅東口下車徒歩10分。煉瓦造りのがっしりした店。花屋に面した側は全面窓張りになっており景色がすばらしい。「スローフードのゾーン」が楽しめます。ちなみに資料によると、アッフォガードは扱ってない様子。
[メニュー抜粋]
本日の鮮魚のカルパッチョ 1300円
ボルチーニ茸のリゾット 1400円
手長海老の炭火焼 2300円
和牛頬肉の赤ワイン煮 2000円
ハウスワイングラス 400円
エスプレッソ 350円
他
電話での予約も受け付けているそうです。
東京都羽村市五ノ神2-3-2 Tel 042-570-0744
mail: info@zonavoce.com
T ちえー。イタリア料理、食べたかったなあ。
N まだ言ってるのかお前。昼飯は食べてないのか?
T 中里さんがステキなお店紹介してくれると思って、ちょっとしか食べてきてないんですよー!
N なんだ、そりゃ悪いことをした。じゃあ、ここでなにか食べ物を買っていこうか。
T …なんですか、ここ。
N なんですかとは失礼だな。ここはマミーショッピングセンター。まあ、昭和の時代には全国にたくさんあった商店街のひとつだ。近隣住民には今も変わらず愛されつづけているよ。
T …っていうわりには、なんだか閉店のお店が多いみたいですけど。
N 何を言ってるんだ、気のせいだよ。
T だいたいわたし、こういうところって初めて来るんですけど。
N 若い人ぶってるなあ。
T わたしはもともと若いですよ!
N 商店街には、いろんな人が訪れる。肉屋に魚屋、本屋に駄菓子屋、和菓子屋、飲み屋、八百屋、酒屋、いろんな店がこの商店街には入っている。小さい子供は駄菓子屋で懐かしい菓子をほおばり、主婦は肉屋や魚屋で夕食の買い物を済ませ、仕事上がりのサラリーマンは飲み屋で一杯飲み交わし、店主と他愛もない話にくだをまく。ここは人々の交流の地であり、まだ同時に…
T あの、力説してるところ申し訳ないんですけど。
N ん?
T いろんな人が訪れるそうですけど、全然人がいませんよ。ほら、お店にもさっぱり。
N …うん、まあ、そういうこともある。
T お昼時だからいないんですかね?
N …うん、まあ、そういうことだよ。
T そういうもんかしら?
N 店員はいるんだから、いいじゃんか。
T あ、こういう感じのお菓子屋さん、なんだか懐かしいですね。
N 和菓子の秋月堂だな。なんだかものすごく七五三をプッシュしてるのが気になるが。
T うわー、うまい棒。これはコーラ味のラムネ、それはイカのおかし…
N けど、いまやどれもコンビニで手に入ってしまうのがさみしいな。
T ああ、そうですねえ。こういうところでお菓子を買い食いするのって、楽しそうですよね。
N キミはほんとにそういう経験がないんだな。
T そうですよー。中里さんは?
N よくやったよ。駄菓子屋のおばちゃんとのせめぎあい。お互いにほとばしる緊張感の中、スッと手にしたうまい棒、懐にスススと…
T 中里さん、それ、万引きです。
N まあそれはともかく、このマミーショッピングセンターは、良くも悪くも昭和の空気がそのまま残されてるといえる。ほら、あそこのおもちゃ屋を見てごらん。
T おもちゃ屋さん?ああ、プラモが置いてありますね。
N よく見ろ。ガンダムはどうでもいい。その隣り。「サンバルカン」のプラモだ。
T ??
N わかんないか。昭和56年の戦隊モノなんだよ。今から22年前の品物だね。
T 22年前!わたし、まだお母さんのおなかの中ですよ。
N またまた。
T ホントですってば!
N 他にも、細い通りにポツンとおかれ、もう動かないこのゲーム。
T なんですかこれ… 一回20円!?
N いつの相場だ、という話だよなあ。
T 昭和の空気ですね、本当に。
N 寂れているといえばそれまでだけど、できればこの空気は守っていってほしいね。
◆マミーショッピングセンター
JR青梅線羽村駅東口下車徒歩15分。羽村団地の近くなので、駅前からバスに乗っても行けます。懐かしい空気と、レアなおもちゃが楽しめるかも。昼時ならば魚屋で扱っているどんぶりメニューがおいしそう。駄菓子屋で懐かしいお菓子を買って、向かいの公園で一息と洒落こんでみては?
N さて、そろそろ休もうか。
T ああ!ついに!わたしもうくたくたですよ!
N まったく、まだ今日一日で30分も歩いてないじゃないか。大丈夫、このマミーショッピングセンターからすぐ近くに、いいお店があるんだ。
T って言って、またおかしなところに連れて行くんじゃないんですか?昭和の空気が残る家具屋とか。電気店とか。12インチのタッチチャンネル型テレビが置いてあったり。
N すっかり信用されてるな、俺。
T おかげさまで。
N ま、安心しなよ。今度こそ、本当にいいところだから。マミーから大通りに出て、羽村街道を渡って、セブンイレブンを通過したらすぐ。ほら、あそこ。
T へ、いきなり雑木林が広がってるんですが?
N ふっふっふ。この中にいいところがあるんだよ。
T この中にって… え、なんか看板がある!「じゅじゅ」?
N そう。羽村に来たらまあ寄っとけ的喫茶店ランキングをはじめとして、様々なランキングで第一位に輝く喫茶店樹樹!
T どこかの化粧品のCMみたいなこと言ってないでくださいよ。
N まあ入ろう。コーヒーは飲めたっけ?
T 飲めますよ。紅茶も好きですけど。
N ま、紅茶も扱ってるけどね。ここのブレンドはけっこうこだわりがあるらしいよ。最高級の豆、ゴールデンキャメルを使用!だそうだ。その他ストレートコーヒーのメニューもそこそこ充実。ウィンナコーヒーも飲める、最近あまり見ないタイプの喫茶店だね。
T あー、おなかすきましたねー。食べ物はあるのかな。
N うん、フードメニューも充実してるよ。日替わりのランチメニューもあるしね。えーと俺、カニピラフ。
T そんなのまであるんですか!
N あと、おすすめはシーザーサラダかな。量も多くておいしいよ。
T うーん、窓からの景色、すてきですねえ。
N すぐそばが大通りだとは思えないよね。雑木林に囲まれてるから、森の中にいるみたいでしょう。
T そういえば、さっきから店内のBGM、ずっとビートルズですね。
N ああ、この店、BGMは全部ビートルズなんだよ。イエローサブマリンとか、レットイットビーとか…。ビートルズの住まう喫茶店、と言ったら言い過ぎかもしれないけど。 T それもあるし、お店のたたずまいというか、内装もすごくいい雰囲気ですよね。。
N そうだねー。落ち着いた照明、木目を生かした内装、座りやすいソファ。ゆっくりするにはうってつけ。デートにもいいんじゃない?
T ですねー。はあ、ゆったり、たっぷり、のんびり。
N めちゃめちゃ満喫してるなあ。
T ここ、デートにも使えそうですね。
N あー、そうだね。相手がいればの話だけど。
T うるさい!うーん、すてきな喫茶店じゃないですか!さすが中里さん!
N さっきまでさんざん文句言ってたくせに。ゲンキンだなあ。
T えへへ。チョコレートパフェがおいしいからいいんです!
◆喫茶店樹樹
(年中無休)
JR青梅線羽村駅東口下車徒歩15分。羽村街道沿なので車での来店も簡単です。ブレンドコーヒーは一杯450円くらい。二杯目からはドリンク半額です。ピザ、サラダ、カレー、サンドイッチ、ハンバーグなど、「軽食」の枠を越えたボリューム満点の料理がたくさん。窓から差し込むやわらかい日差しと店内の雰囲気が包み込んでくれます。西向き(駅方面)の席がおすすめ。パーティーなどの予約も受け付けているそうです。
東京都羽村市神明台3-7-2 Tel 042-555-1377
T はー、おなかいっぱい!次はどこに行きましょうか!
N 元気いっぱいだね。
T いやいやー。
N よし、じゃあちょっと動物園でも行こうか。
T 動物園?あるんですか?
N あるよ。昔、羽村がまだ羽村町だった頃は珍しい存在だったんだ。町営の動物園っていうのは日本でもなかなかなくてね。けど、平成三年に羽村市になって市営になったから、今はまあ…
T そういうちょっとした話題、得意ですねえ。
N 動くトリビアと呼びなさい。はい、そんな話をしてるうちに到着だよ。ここが羽村市動物公園!
T えーと、なんて言うか…古き良き動物園ですね?
N うむ、うまく言ったな。まあ仕方ない。羽村動物公園の創立は昭和53年。もう25年も前なんだ。
T ずいぶん長いですね。うーん、楽しめるのかな。
N なかなか個性的な動物もいて、楽しめるとは思うよ。入ろうか。入園料は300円。
T はーい。かわいい動物、います?
N うん、いるいる。うさぎと一緒に遊べるコーナーがあったと思うよ。まあ見ていこうか。
N まず最初に出迎えるのは、見た目も派手なインコたち。
T ハデハデ。わあ、鳴き声がすごい。
N これはベニコンゴウインコだね。他にもコンゴウインコとルリコンゴウインコがいる。
T なんだか、手が届きそうなくらい近いんですけど。
N まあ、この動物園の魅力のひとつだね。動物との距離がけっこう近いんだ。
T ほーらほら、よしよし。かわいいなあ。
N ああ、あんまり手を近づけるとくちばしで突っつかれるから、気をつけろよ。
T さ、先に言ってくださいよ…!あぶないなあ。
N お前、子供じゃないんだから…。
N これはシンリンオオカミ。黒いのと白いのとで二頭いる。
T 白いほうが奥さんですかね?
N そうかもね。黒いほうはさっきからずっとうろうろしてるなあ。
T 俺の妻をじろじろ見るんじゃねえ!って言ってるんじゃないですか?
N こういう、ちょっと獰猛な動物もちらほらいたりする。
T ライオンとかいます?
N さすがにそれはいないけど。ハイエナとか、トラとかね。
T なんだか、ぽつーんとたたずんでますよ?
N インドタテガミヤマアラシだ。…なんか、さびしそうだな。
T おーい、ヤマアラシー。
N 興奮してないから、背中のトゲも落ち着いたまんまだね。
T うーん、残念。あったかくなったらもっと元気になるのかな?
N アフリカの動物だから、そうかもしれないな。冬は弱いのかも。まあ、玉川と同じだ。
T 毎年こたつで冬眠してますから!
T け、けだるそう…。これはなんですか?
N ご存知、トナカイだよ。
T えー!トナカイって、もっとこう、ソリ引いてさっそうと…
N もっと寒くならないとダメなんじゃないか?
T うーん。こらトナカイ、あと1ヶ月したらお前の出番なんだぞ!
N クリスマスには大忙しだな。
T ところで、トナカイって鼻赤くないんですね。
N うん、何か間違ってるぞ、それは。
T ところで、さっき入口のところに、サバンナ園がどうのって書いてありませんでした?
N うん、まあ、あったね。最近オープンしたんだ。サバンナで生活する動物たちを観察できるようになってる。混合飼育してるのがウリなんだ。
T へええ。どんな動物がいるんですか?
N えーと、キリンと。
T わあ、キリンがいるんだ!見たいです!
N シマウマ、ラクダ、ダチョウ、ペリカン、オリックスと、なかなかおもしろい動物が揃ってる。
T 行きましょう行きましょう!
N …んだけどね。いや、サバンナで生活してるだけあって、寒さには弱くてさ。
T えっ?
N 秋冬はとくに、引っ込むのが早いんだよ。サバンナ園の動物。
T あー、キリンもラクダもいない。
N シマウマはずいぶん奥の方にいて見えないな。ああ、モモイロペリカンなら。
T うう。キリンが見たかった…。
N そういえば、うさぎと一緒に遊べるって言ってましたよね?
T ああ、そうそう。まあ普通子供が遊ぶところなんだけど…
N 遊びたいです!
T わかったわかった。ええとね、ここだよ。ふれあいひろばといって、うさぎだけじゃなく、ひよこ、ねずみ、モルモット、リクガメなどと一緒に遊ぶことが…
N レッツ、うさぎタイム!
T 聞けって。あ、ちょっと待て。何か書いてある。
N え?
T 「ふれあいタイムは午後1時30分から2時30分まで」。今何時だ?
N 2時45分。ええー!?
T うん。まあ、あれだ。残念でしたということで。
N そ、そんなあ!
T そうだなあ…ふれあい関係ないけど、ミシシッピーアカウミガメでよければ。ほら。
N …なんか、ものすごいですね。威風漂うというか、なんというか…
T なんでこんな広いスペースに、こいつ一匹だけいるんだろう?
T もー、全然見れないじゃないですか!
N まあ、そう怒るな。平日だし、昼過ぎだし、仕方ないっちゃ仕方ない。
T 祝日とかならいいんですか?
N そうだなあ。土日祝日はやっぱり家族連れが多い。今日なんて、子供がほとんどいないだろ?やっぱり動物園をにぎわすのは子供だよ。 T 子供っていうか、大人もあんまりいませんけど。
N 平日昼過ぎだからな。
T うーん。ねえ中里さん、もう少し見所はないんですか?ああ、かわいい動物がいるって言ってたじゃないですか!それを見ましょうよ!
N よし来た。実はわざと今までかわいい動物はスルーしてきたんだ。
T なんでですかー!
N お楽しみは後にとっておく、ってな。
T さ、策士だ!
N それでは登場願いましょう、当動物園のアイドル、ミーアキャット!
T か、か、かわいー!!
N ご存知ミーアキャットは食肉目ジャコウネコ科。太陽を浴びるように立ち上がる特徴的なポーズは、周囲に天敵がいないかどうかを確認する、身を守るための本能的行動であり…
T ああ、そんなのどうでもいいです!やっほー!ミーアキャットー!
N やれやれ。すっかりご機嫌のようで。
T こういうのを初めから紹介してくださいよー!他にもいるんですか?
N いるよ。まあミーアキャットのとなりにはプレイリードッグもいるんだけど、それはさておき…そうだなあ、じゃあ次はこっちだ。
T ラスカルー!
N はい、ラスカルでおなじみの、アライグマでございまーす。
T うわあ、かわいい!なんだかきょとんとした目でこっちを見てますよ!
N 珍しいのかな?玉川さんが。
T それってどういう意味ですか!
N いやいや。水場もあるから、食べ物があれば洗うところも見られるんだろうけど… 給餌の時間っていつだろうなあ。
T うーん、一日中居座っていたいですね。
N 続きまして、当動物園のアイドルグループ、フンボルトペンギンの登場です!
T わ、ペンギン!いっぱいいますね!
N えーと、確か32匹って言ったかな。とにかくわんさかいるんだよ。
T あの、なんだかみんな同じ方を向いてますけど。
N そういう習性なのかな?
T エサ待ちですかね。
N そうかもね。それと、ここは水場も広いから、ペンギンも悠々と泳げるんだよ。ほら。
T おー。するりと泳ぎますね。
N それに、ものすごい近くで見られるだろ?フンボルトペンギンは、この動物園最大のウリと言っても過言じゃないよ。
T ううう、かわいい。うわーぺちぺち歩いてますね。
N …ん?
T あれ、飼育係の人が出てきた。
N ああ、午後3時か。ちょうど給餌の時間だ!
T え!見れるんですか!
飼育係の方 これから、10kgの鯵をあげまーす。それー(手づかみで鯵を水場に放り投げる)
T 10kgですって!そんなに食べるんだ。
N そうだね。まるで…
T 中里さん、何か言いたそうですが。
N いや、気のせいでしょ。
T まったく。うわー、なんだかものすごい勢いで食べてますね。
N さっきまでのゆっくりした泳ぎはどこにいったんだ。
T ねえねえ、あのペンギン、飼育係の人のそばに寄ってますよ。足元でエサを待ってるみたい。
N あはは、ずるいなあ。
T わたしはそんなことしませんよ!
N 今度はホントに何も言ってないって!
T あれ?あのう、なんだか関係ない鳥が来てるんですけど。
N ホントだ。鯵を狙って飛んできたのかな?
T うーん、ずるい。
飼育係の方 はい、10kg、全部食べきりましたー!
T わー、すごいすごい!拍手拍手!
N ちなみに少し真面目な話をすると、今フンボルトペンギンは、その数の減少が心配されているんだ。繁殖地の環境悪化とか、油、皮の利用のための捕獲とかが原因だね。現在推定数は9000羽以下と言われている。実はこうしてフンボルトペンギンを見られる動物園っていうのは、日本でもそんなに多いわけじゃないんだよ。
T そうなんだあ。おーい、元気で暮らしてくれよー!
T やー、満足満足。楽しかったですね!
N よかったよかった、一時はどうなることかと。
T 中里さんがそういうとこばっかり見せるからいけないんですよ。
N まあ、そう言うなって。
T 動物園の見所はこんなところですかね?
N まあ、だいたいは案内したかな。昔はポニーに乗れるコーナーがあったんだけど…なくなったかな?
T あ、なんか一面芝生が広がってますね、ここ。
N うん、最後は広場になってて、お客さんがのんびり休めるようになってるんだ。なぜかSLとかもあるよ。
T あ、売店がある。何かあるかしら?
N ここでフリスビーとかゴムボールとか買って、広場で遊ぶってのが王道パターンだね。
T ああ、なるほど。こういうところで売ってるおもちゃって、すごく惹かれますよね。
N 羽村動物公園、どうよ?イマイチ?
T とんでもない!楽しかったです!
◆羽村市動物公園
開園時間
3月〜10月 9:00〜16:30
11月〜2月 9:00〜16:00
休園日
毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は営業。その翌日が休園)
12月29日〜1月1日
入園料
大人(高校生以上) 300円
子供(4才以上、中学生以下) 50円
団体割引30人以上2割引
ファミリーパス(家族6名) 1年間2500円
回数券(11枚つづり) 大人3000円/子供500円
(毎年5/5の子供の日は、子供の入園料が無料になります)
JR青梅線羽村駅東口下車徒歩20分。無料駐車場あり。市営らしく広さはそこそこですが、そこが逆にラクかもしれません。動物地震予知観測所、猿山、動物型置物などもあり、マスコミもしばしば訪れます。時々新しく生まれた子供の名前を募集したり、イベントを行ったりと、なかなか賑やかです。デートスポットとは行きませんが、のんびりしたい方はぜひどうぞ。
東京都羽村市羽4122 Tel 042-579-4041
http://www.gws.ne.jp/tama-city/ham-zoo/
http://www.t-net.ne.jp/~hamura-z/ (なんかサイトふたつあります)
そんなわけで、動物園からタクシーを拾い、羽村駅へ向かう二人。ところが中里さん、突然「川へ行こう」と言い出した。驚く玉川さんをよそに、たどり着いたのは多摩川。
N 到着!はい、目の前に広がるのは多摩川ね。
T なんでこんなところに来たんですか?
N こんなところとは失礼な。羽村には堰があるんだよ。
T あ、そうなんですか。
N そう。その名もずばり羽村の堰。羽村随一の桜の名所でね。毎年春には屋台も出て、花見で盛り上がるんだ。
T へええ。でも春って、まだまだ先ですねえ。
N まあね。だから今日は、この時間の見所になるものを紹介しようと思ってね。
T 見所?
N まあ、とりあえず川辺に行こう。
T うわあ、すごい夕焼け!
N ちょうどいい時間だからね。きれいでしょ?
T きれいですねえ。
N で、あっちに見えるのが羽村の堰。ちょっと日が暮れてるからわかりづらいけど、見える?
T 点々と明かりがついてるやつですか?
N そうそう。
T なるほどなるほど。それで、これが見所なんですか?
N まあ、一応ね。もう少し時間いいかい?
T え?そりゃ構わないですけど。
N 少し時間がかかるからね。その間に今日の感想でも聞こうか。どうだった、羽村は?
T わ、アバウトな質問ですねえ。いや、はじめはほんとどうなるかと思いましたよ。典型的なベッドタウンだなあ、って。駅前も微妙でしたしね。
N まあ、そこはつっこまないでくれ。なんか今、ビジネスホテル建設中だって言うし。
T お店作ればいいのに…。
N 昔ダイエーがあったりもしたんだが、閉店の憂き目にあってるからな。ああほら、ちょうど今オリジン弁当があるあたり。
T あれ、オリジン弁当の前は、コンビニが潰れたんですよね?
N うん、まあ。
T なんか呪われた一角だったりしません?
N たぶん気のせいだ。まあ、それはともかく。
T なんかね、はじめは強引な紹介だなあとも思ってたんですけど、なかなかどうして。畑があるかと思えば、とたんにオシャレなレストランが出てきたり。不思議な街ですよね。
N そうだなあ。まあ、暮らしやすさを最重視してるというのは間違いないよ。それこそ、ベッドタウンだからね。
T けど、友達が遊びに来たときに、一日ぐるりと案内できるくらいには、おもしろいところがたくさんあると思いましたよ。ショッピングセンターもおもしろかったし。
N 今回はこれでも羽村の一部しか紹介してないんだ。双葉町方面とかにはちっとも行ってないし、西口もこの多摩川だけ。まだまだおもしろいところはたくさんあるよ。
T じゃあ、それは次号でってことですかね?
N 次号なんてあるのか。そのときにはまた、引きずってでも連れて行くぞ?
T うーん、あのレストランでランチをおごってくれるなら考えますよ。
N まったく。 …と、そんな話をしてたら、すっかり暗くなってきたな。
T ですねえ。あのー、そろそろ寒くなってきたし、帰りません?
N ふふ。暗くなってきてからがいいんだよ。ほら、見てみ?
T え?…うわあ!
N 名所の名前は伊達じゃないってね。羽村の堰は、夜もオススメだよ。
T すごい…。キレイですねー。
N そういうこと。さ、風邪引かないうちに早く帰ろうか。
T えー。夕食、どこか食べるところないんですか?
N うーん、じゃあ駅前の松屋で。
T ちょっと、中里さーん!もう、イタリア料理が食べたーい!
◆多摩川/羽村の堰
JR青梅線羽村駅西口下車徒歩10分。奥多摩街道から入ってください。桜の名所で、花見の季節には屋台も出て賑わいます。写真の羽村の堰の風景は、駐車場の奥から行けます。散歩やランニングなどにも最適。
■さて、長々とお届けしました羽村紹介、いかがでしたでしょうか。日ごろあちこちでネタにされるこの羽村市(「え、羽村って、村なんでしょ?」「何もない街の代名詞だよね」「駅前のコンビニが潰れるなんて!」「だいたい羽村ドームって何」)、私も日ごろはネタにする側の人間なのですが(羽村ドームはほんとなんとかならんものか)、あるときふと、本気で羽村の良さを紹介したらどうなるんだろう、と思いついて、このようなかたちになりました。
■とは言っても、作中で述べたように、全部を紹介したとは到底言い切れませんで。いつかそれらを紹介する日も来るんでしょうか。(うーん、そのときはまた大変だろうなあ)
■テーマとしては、「羽村を旅する」。羽村を知らない人には「ふーん、何か機会があって、そっちの方まで行くことがあったら、紹介されてたところに行ってみようかな」、羽村を知ってる人には「へえ、そんなところもあったんだ。一度行ってみるか」と思っていただければ、これ以上の喜びはありません。
■ちなみに、実は使っていない写真がもう少しあるので、それをざっと紹介しまして、ウェブ文化祭出展作品「地元紹介誌ハムル」、これにて終了とさせていただきます。長々とお付き合いありがとうございました。
ぷれはぶ・えふ管理人 PAT(東京都羽村市在住)
というわけで、これがウワサの羽村ドーム。羽村駅東口下車徒歩1分。このバツグンの立地に何ができたかと思えば、バッティングセンターでした、みたいな。もう、羽村市は何がしたいのかさっぱり。(とほほ)
こちらは樹樹の近くの松原公園。撮影した時間がちょうど昼食時で、近くの会社で働くおっちゃんたちが、昼飯片手にわさわさと集まってきました。そんな光景を撮ってみた一枚。
羽村市動物公園の、作中にもでてきたふれあいコーナー。マジで2時半まででして、あと少し早ければ!と悔やみました。でもこの日子供をほとんどみなかったから、間に合ったとしてもやってたかどうかは謎。
同じく動物公園より、アライグマをもう一枚。これもなかなかよく撮れたんですが、先に出したアライグマの写真があまりにもよく撮れたので使えませんでした。かわいいよね。アライグマ。
もうひとつ動物公園ネタ。アメリカビーバー(アメリカンビーバーではないらしい)の撮影に成功しました!というのは、こいつ、生活時間帯が夜らしくて、お目にかかることすら難しいのです。いっつも奥に引っ込んで寝てやがる。というか、羽村市動物公園はなぜこいつらを飼っているのかイマイチ謎。
これも動物公園。広場に置いてあるSLです。C58395という機関車。昭和21年に作られ、神奈川→千葉→北海道とあちこちを走って、昭和50年に引退。同年、動物公園に寄贈された…そうなんですけど、動物公園って53年からなんですよね。この空白の3年間はなんなんだろう。
羽村市ホームページ http://www.city.hamura.tokyo.jp/
なお、作中に登場した店・施設などは、PATが独自に紹介したものであり、対象の許可、認可などは取っておりません。いや、そんなの必要ないんでしょうけど、間違っても樹樹とかZONAVOCEに「ぷれはぶ・えふで見たんですけどー」など言わないようにしてください。あなたが恥かきます。
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