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第10回  『改悪教育基本法』のねらい


 私は、ついに失われてしまった教育基本法の小冊子を作って、新しく教師になる人、若い母親、父親が、胸ポケットに入れておく、そのようにして、それを記憶し、それを頼りにもすることを、提案します。


 まさに「作品」と呼ぶにあたいする文体を備えた教育基本法には、大きい戦争を経て、誰もが犠牲をはらい、貧困を共有して、先の見通しは難しい窮境にいながら、近い未来への期待を子供らに語りかける声が聞こえます。

朝日新聞061219日              

大江健三郎「心に『教育基本法』を」より   


◆        ◆


 『作品』にかわって登場した『改悪教育基本法』。愛国心教育やらに関心が行きがちです。しかし、私は改悪の眼目はむしろ次の二つにあるとみています。その一つは、日本国憲法との密接な関連を断ち切ることです。これは「前文」を読み比べれば一目瞭然です。何しろ憲法26条との矛盾は目をおおうばかりなのですから。二つ目は、国が教育内容を支配・コントロールし、新自由主義「教育改革」をはじめとする教育施策を徹底できる仕組み(17条などをつくったことです。

 「教育振興」の名のもとに、政府が計画をつくり、施策を総合的・計画的に推進する、これが17条です。教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものであり、教育行政は、必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならないとした『47教育基本法』とのちがいは鮮明です


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