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第20回  「習熟度別授業」で学力は向上するのか? ()

E「習熟度別授業」は、格差を広げ、学力を低下させる

 「習熟度別授業」が学力向上に本当に有効なのか、その具体的データが日本にあるわけではありません。しかし、「習熟度別」の先進国のアメリカやイギリスでは綿密な調査がおこなわれ、その問題点が明らかになっています。

 たとえば、「習熟度(能力)別指導」についての研究者、カリフォルニア大学のジェニー・オークスは、「習熟度(能力)別指導」が「上位」グループの一部の生徒のみ有効に機能するが、「上位」の多くの生徒と「中位」の生徒にとって無益であり、「下位」の生徒にとっては有害であること、また「中位」「下位」グループの学習を低次元に押し留め、生徒間の学力格差を拡大して学校全体の学力を抑制してしまうことを膨大なデータをもとに明らかにしました。そして、この結論は学校のなかで、私たちの目の前で日々「習熟度別授業」が生み出している実態とみごとに一致しているのではないでしょうか。



 この研究を紹介した東大大学院の佐藤学教授は、「習熟度(能力)別指導」を含むトラッキング(trackning能力別指導・進路別指導)が、排除と差別の機能を果たすことは欧米の教育において常識になっており、オークス以後、膨大な研究がおこなわれてきたが、今日まで「習熟度(能力)別指導」の有効性を実証しようとした試みはことごとく失敗したと述べています。(『習熟度別授業の何が問題か』佐藤学 岩波ブックレット612より)


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