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第22回  教科の道徳化・道徳の教科化

■ 「詰め込み教育」の本当のねらいは

これまで見てきたように、新しい学習指導要領の一番のねらいは、子どもを早くから選り分けて、「上位」の子と「下位」の子向けのコースをはっきりさせる複線化教育・エリート教育に踏み出すことです。今の学習指導要領の元をつくった教育課程審議会の責任者だった三浦朱門氏は、「ゆとり教育」の本当の目的はエリート教育だと言いましたが、新学習指導要領の「詰め込み教育」のねらいもまたエリート教育にちがいないのです。

■ 国語の教材に「神話」が登場

しかし、子どもを早くから差別・選別する教育は、エリートコースから外れた子どもを大量につくり出します。こうした社会から排除され、行き場を失った子らをどう繋ぎ束ねるか?新しい学習指導要領は、道徳教育を徹底的に推し進めることで子どもを束ねようとします。すべての教科で「道徳教育の目標に基づき、道徳の時間などの関連を考慮しながら、○○科の特質に応じて適切な指導をすること」という文言を新学習指導要領は加えました。すべての授業で道徳教育をしっかりやれということです。

来年度から小学校で使われる教科書が発表されました。たとえば国語では、多くの教科書が「神話」を読み物教材にとりあげました。戦前・戦中の「修身科」の教科書以来の復活です。こうした《教科の道徳化》は、新学習指導要領が「道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じておこなう道徳教育」とわざわざ付け加えたように、やがて《道徳の教科化》へ突き進むことは明らかです。かつて「修身科」が子どもの心を軍国主義で染め上げて束ねたように。




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