2)ハイリゲンブルート/オーストリア

日本では殆ど名の知られていない所と思うが、私の記憶では冬の間、ORF(オーストリア放送協会)の朝の番組で国内スキー場の情報を流しているのだが、その記憶が頭の片隅に残っていた。オーストリア最高峰(3798m)に惹かれたが、ハイリゲンブルート(聖なる血)の名も異教徒ながら何となく心に残るものだった。ハイリゲンブルートはケルンテン州であるが、リエンツ/東チロル 注)からバスで1時間程の距離にある。

注)

第一次大戦で敗戦したオーストリアがチロル州の一部(南チロル)をイタリアに割譲したため、この地域が飛び石状態で残り、東チロルと呼ばれている。イタリア北部にイタリア語,ドイツ語2つの地名を持つ地区があるのもこの歴史と関係があり、元オーストリア領だった名残り。

【リフト地図】

スキー場はロープウェイを1本登ったロスバッハからシャレック方面と地下のケーブルで、尾根を越えた反対側に広がるフライスアルム方面の2つに別れる。

a)シャレック(フィーヴューエル)

ロスバッハから長いロープウェイ1本でこのシャレック(2604m)に達する。表紙の写真もこの山頂駅からのもので、グロースグロックナーが望める。フィーヴューエル方面に下るコースの一つが、このスキー場唯一の黒(難)コースだが、距離は短い。フィービューエルへはTバーリフト。頂上は最もグロースグロックナーに近いのだが、尾根を背にしており見えない。帰りは一回り小さいが、バノラマバーンというロープウェイでシャレックに戻る。

シャレックからロスバッハに下るコースがこのスキー場のメインルートで、ロープウェイの両側にある。ロスバッハを越えて、更にハイリゲンブルートに下るコースもある。

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ロスバッハ中間駅 シャレック

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グロースグロックナー
/シャレックより
フィーヴューエル・Tバーリフト

b)フライスアルム

ロスバッハから地下のケーブルカー(トンネルバーン)に乗り尾根の反対側フライスアルムからが、もう一つの領域。リフト2本を乗り継いだホーホアルム(2902m)がこのスキー場随一の標高で、遠いながら高度が高いため、グロースグロックナーが一番映える場所だ。
このトンネルバーンが少々珍しい。大部分が地下で、5人乗り11両編成2組がローブで結ばれ、交互に上下するつるべ方式で、レールは上部、吊り下げ式である。傾斜が変わると個々の箱は高さが変わるのだが、それに対応する連結器が面白かった。
こちらのスキーコースも前者に劣らず長く、景色もすばらしく、リフトの両側にコースがある。

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地下ケーブル 同左連結部 フライスリフト谷駅

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グロースグロックナー眺望 (1) グロースグロックナー眺望 (2)
ホーホフライスより

宿泊したホテル”ポスト”はローブウェイ谷駅の目の前で、スキーアクセスには便利だったが、ハイリゲンブルートの街は高低差がかなりある。川の方までは降りなかったが、途中にある教会は観光ガイドにも写真が載っていた如くひときは目立つ。−ハイリゲンブルート(聖なる血)を運んできた旅人がここで行き倒れになった−という言い伝えがある。肩越しに小さいが遠くに輝くグロスグロッナーの尖った頂は美しかった。なおグロスグロッナー周辺はホーエ・タウエルン国立公園。

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ロープウェイ谷駅 宿泊ホテル”ポスト”

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リフトから 街の教会から
グロースグロックナー

前章、旅行経路図に点線で示したが、ハイリゲンブルートの先、夏場はフランツヨーゼフヘーエを越えて、2002年訪れたカプルン−ツェルアムゼー方面に繋がる観光山岳道路として名高く、氷河、高山動植物が見られるそうだ。滞在中1日休養を兼ねて麓の街、リエンツを往復したが、後の章でまとめて触れる。