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2013年11月へ

日 時:2014年1月17日(金)19:00~22:00

場 所:国分寺市本多公民館

参加者:阿久津・五十嵐・小川・熊谷・児玉・鈴木ま・鷹取・津田・町田・吉村・堀(記録)


 今月は、熊谷和美さんが初参加。東京農工大から3人目の学生さんです。若い人の参加が続き、頼もしいですね。これからもよろしくお願いします。


1.実験「放射線量の測定」&「霧箱で放射線の観察」………阿久津 嘉孝

  1.  レポーターが遅れての到着ということなので、はじめに実験をやりました。だいたいどこの高校にもあるという「原子燃料鉱物標本」の人形石(人形峠の石)、ウラノフェン、閃ウラン鉱などを線源としました。

  2.  まずは町田さんと阿久津さんの持ってきた線量計で線量を測定してみたのですが、2つの数値が桁違いに違っていて、どちらが正しいのかわかりませんでした。

  3.  つぎに阿久津さんがプラスチックの保存容器を利用した霧箱を組み立て、線源から出る放射線の飛跡を観察しました。ドライアイスを、容器との接触面積を増やすために細かく砕き、この上に容器を置きました。容器下には観察しやすい様に黒い紙を敷き、ドライアイスの上に置きました。容器の内側上部の縁に貼りつけられたスポンジにたっぷりとアルコールをしみこませ、容器中央に線源を置いて、ラップでふたをしました。

  4.  部屋の明かりを消して、ペンライトで照らすと、ときどきスッと飛跡が見えました。カメラで撮影する人もいました。はっきり捉えるのは難しいですが、何とか確認できる映像にはなったようです。

  5. 例会の最後に、吉村さんの持ってきた人形石を測定したところ、最初の人形石よりも反応が大きかったです。霧箱の実験を吉村さんの持ってきた石を線源としてやれば、もっとはっきりと放射線の飛跡が観測できたかもしれません。

  6. 五十嵐さんが「日本科学未来館で見たが、磁気を使うと放射線の種類によって飛跡が違っていた」と話されました。α線はプラス、β線はマイナスの電気的性質を持った粒子線だということで、磁気に反応するのだそうです。そこで黒板の磁石を使って実験してみましたが、はっきりした結果は出ませんでした。磁力が弱かったようです。阿久津さんが「ネオジム磁石を持ってくれば・・・」と話していましたが、後から見えた吉村さんがネオジム磁石で隕鉄を区別するのを見せてくれたときには、みんな「あ~~あ」。残念!


2.授業プラン「仕事とエネルギー」……………………………津田  弘毅

  1.  教科書を見ても、「生徒に興味を持ってもらうという点ではなかなか難しい」と考え、<物体が力の作用を受けて変位することで、その物体の持つエネルギーに変化があることを理解する>ことを大きな目標に掲げてのプランです。

  2. まず町田さんから「2時間目の課題①はいいかなと思うが、②は『0.5m持ち上げるためには、何m引けばいいでしょうか』とすれば結構盛り上がる」との意見がありました。続いて鷹取さんから、やはり2時間目のところで、「『仕事で楽をすることはできない』とあるが、普通には持ち上がらないものを、ジャッキを使って楽に持ち上げるのではないか」との疑問が出され、町田さんからは「『仕事を得することはできない』の方がいいのではないか」と意見が出されました。

  3. 阿久津さんから吉村さんに「中学校で動滑車は出てくると思うが」との質問。吉村さんからは「出てくる。ここでは“どんな道具を使っても”というのだから、動滑車だけでなく、斜面とかてこを入れるといいのではないか。昔は輪軸も扱った」との意見がありました。阿久津さんからは「6時間扱いなので、あまり欲張らない方がいいのではないか」と意見がありました。

  4. また町田さんからは2時間目の課題の図で、「黒丸の部分は説明しないで、バネばかりで計るといい」との指摘がありました。

  5. 鷹取さんからの「1時間目は半分くらいの時間で終わるのではないか」との指摘に、津田さんは「導入でかなり時間を取ると思う」とのことでした。

  6. 力×距離について町田さんから、「この距離は、“力を加えた向きに進む距離”であるということが大事。時給と出来高制という説明はおもしろい」とのことでした。

  7. 3時間目にある「1cal=4.2J」について、鷹取さんから「熱についての学習はゼロ。比熱もやっていない。生徒にはわからないのではないか」との指摘がありました。津田さんは、「強引に持ってきた。一応、エネルギーとはどういうものか、伝えたかった」とのことでした。阿久津さんからは「もしかしたら、家庭科でやっているかもしれない」と出されましたが、鷹取さんからは「もう少し工夫をしてほしい」と注文がつきました。

  8. 6時間目の実験について阿久津さんから、「映像より、実際にやってあげた方がいい。配線を隠すレールでできるので」と意見が出されました。町田さんはこの部分、ふりこでやっているそうです。阿久津さんは両方でやっているそうで、「ふりこが先の方がいいと思う。ただ6時間しかないので、両方は難しいだろう」とのことでした。


3.授業プラン「火山の学習(中1)」……………………………吉村  成公

  1.  昨年秋の東京支部研究集会地学分科会で報告された内容を中心にした提案でした。町田さんからは、「何時間扱いか」と「以前の提案ではテルミット反応をやっていたが、今回ないのはどうしてか」の、2つの質問がありました。「地球の歴史が1時間、火山が6~7時間」「学習の土台があればいいが、酸化・還元反応の学習ができていないので」との吉村さんの答えでした。

  2.  鷹取さんからは“マグマの性質”という言葉について、「“サラサラ”“ネバネバ”という言葉は使わない方がいいのではないか。これは地表面に出てからのことで、“マグマの性質”ではない。“噴出した溶岩の性質”といった方がいいのではないか」との意見がありました。

  3.  つぎにミネラルショーで手に入れたという貴重な隕石を見せていただきました。鉄が多く含まれている隕石にネオジム磁石を近づけると、ピタッとくっつきます。この鉄を多く含む隕石と、そうでない隕石の違いについて阿久津さんが質問したところ、鉄を多く含む隕石は惑星の中でできたのだそうです。そのあたりを、後日吉村さんに詳しく説明していただいたところ、つぎのような返事でした。


=吉村さんの説明=


磁石によくくっついたのは鉄質隕石(隕鉄)で、鉄主体のニッケルとの合金ですが、100万年に数度ずつ冷えたために鉄とニッケルの濃度差による結晶構造(ウィドマンシュテッテン構造)が出来ています。

1月例会に持って行ったのは、1947年ナミビアで発見されたギベオン隕石(隕鉄/写真1:ギベオン隕石・オクタヘドライト・ナミビア)のスライスで、表面を酸で腐食させ、結晶構造が見えるようにしたものです。このようにゆっくりとした冷却が起こるのは、小惑星や原始惑星の核のような所しか考えられず、それ以前の微惑星の衝突による融解(マグマオーシャンが出来た)と密度差による層構造の形成(核・マントル・地殻・原始大気などに分化)が原始惑星で起こったと考えられています。

従って、磁石によくくっついたギベオン隕石は分化した隕石であり、一度出来た原始惑星同士が衝突し、内部の固体核が飛び出してきたものと考えられています。

私達は地球の核を直接見ることが出来ませんが、このような隕鉄でそれを垣間見ることが出来ます。

 また、同様によくくっついて茶色のカンラン石と金属鉄が互いに入り乱れて見えていたのは、1967年、ロシア東部で発見されたセイムチャン隕石(写真2:Seymchan(セイムチャン)隕石・石鉄隕石(パラサイト)・ロシア東部・1967年発見・左右66mm)で、石鉄隕石(パラサイト)に分類されます。これも始原的な隕石から分化した小惑星や原始惑星が母天体で、核・マントルの境界部分、あるいは母天体の内部で溶融して分化する前の状態と考えられています。

一方、弱々しく付いたのは未分化の石質隕石で、長石やカンラン石を含む丸い石(球粒・コンドリュール)と共に、金属鉄が含まれています。丸い石、球粒は無重力の宇宙空間で凝縮し固化したためと考えられます。

この密度が小さく酸化的環境で生成したケイ酸塩物質(石質成分)と、密度が大きく還元的環境で生成した金属鉄が一緒に有るのも、これらの物質が宇宙空間で共に凝縮したためと考えられます。

このような隕石は、石質成分(ケイ酸塩)が多く球粒を含むので、球粒隕石(コンドライト)と呼ばれ、未分化の隕石、始原的な隕石として知られています。

1月例会で見てもらったのは、1969年にメキシコのアエンデ付近に落下したアエンデ隕石(写真3:アエンデ隕石・左右32mm)で、炭素や水なども含むもので、この隕石の生成年代はウラン-鉛法により、45.66億年前という数値が得られています。この値から、太陽系の誕生、つまり地球の誕生は約46億年前とされています。

また、スライスして大きな板状に見えていたのは、アルゼンチン・パタゴニアで2004年に発見されたセロメサ隕石で、一般的な球粒隕石(コンドライト)です。

つまりこのような始原的な物質である炭素質コンドライトや一般的なコンドライトが集積し、融解・分化して出来たのが小惑星や原始惑星というわけです。